超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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#433話 バレンタインデー【後編】

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 翌日の授業後、僕は一緒に帰ろうという友人たちの誘いを断り、旧体育館に向かった。
 旧体育館は新しい体育館の裏にあり、取り壊しが決まっているため、周囲を柵で囲まれている。
 でも、あちこちに隙間があるから、中に入ろうと思えば、簡単だった。
 建物に沿って、更に裏側に回った時である。
「こんな所で、何してるの?」
 鋭い𠮟責の声に、僕はすくみあがった。
 振り向くと、カーキ色のジャージ姿の、太った女の人が立っていた。
 まったくくびれのない腰に両のこぶしを当て、ふんぞり返るような格好で僕を睨みつけている。
「せ、先生…」
 顏から血の気が引いていくのがわかった。
 担任の阿田岡先生だ。
 阿田岡先生は、ふやけた鬼瓦のような顔をしていて、厳しい指導で有名だ。
 ママたちの話によると、もともときつい性格らしく、50歳超えているのに独身らしい。
「タケル君、ここ、立ち入り禁止だってこと、知ってるよね?」
 じりっ、じりっと近づきながら、阿田岡先生が言う。
 異様に黒目の小さい三白眼が、僕をじっと睨んでいる。
「ご、ごめんなさい…。す、すぐ、出ます」
 つかまらないうちにと、踵を返しかけた、その瞬間だった。
「なあんて、ウソよ」
 背後から両肩をつかまれ、僕は動けなくなった。
「来てくれたのね。さと子、うれしい!」
 さと子というのは、阿田岡先生の名前である。
 嫌な予感がした。
 とてつもなく、嫌な予感だった。
 最悪だ。
 僕は唇をかみしめた。
 まさかあのチョコレートの送り主が、担任の教師だったとは。
 それも、学校中で一番怖い、阿田岡先生だったなんて…。
「最初あなたを見た時から、ときめいてたのよ。初恋、ってやつかしら」
 さっきまでとは打って変わった猫撫で声を出しながら、先生の手が、僕の服を脱がしていく。
 でも僕は、恐怖が勝って、金縛りに遭ったように指一本、動かせない。
「さ、こっちを向いて」
 全裸にされて無理やり振り向かされると、真っ赤な口紅を塗った般若の顔が、目の前いっぱいに広がった。
 

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