超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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#441話 妖怪探偵局⑦

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 メリーさん?
 あたしは首をかしげた。
 何だ?
 何者だ?
 あの巨大ちんぽみたいな八尺様を倒せば、それで終わりじゃないのか?
 この一家の呪いは、まだ続いているというわけか?
「なんだ? メリーさんってのは? どうしてこんなところに外人が?」
 振り向こうとした時である。
「だめ! 振り向いちゃ!」
 ふいに一平が叫んだ。
「メリーさんも都市伝説の妖怪のひとつだよ。振り向いたら死ぬ。そういう系のやつなんだ」
「振り向いたら、死ぬ?」 
 あたしは曲げかけた首を慌てて元に戻した。
 やっかいな妖怪もいたものだ。
 見たら石になるってか?
 まさか、西洋の伝説に出てくるメデューサではあるまいな。
「だけど、そういう一平には見えてるわけなんだろ? おまえ、あたしの後ろにいるわけなんだから」
 疑問点を口にしてみた。
 ならばなぜ一平は死なないのだ?
「後ろから見る分には、きっと大丈夫なんだと思うよ。俺、この通り、ぴんぴんしてるからさ」
「なら、言ってみろ。そいつの正体は、いったいなんなんだ? ドレスを着た外人の女の幽霊か?」
「そ、それは、言えない」
 一平が珍しく気弱な声を出した。
「なんでだよ?」
 むっとするあたし。
 悪役令嬢の命令に逆らうとは。
 バイトのくせに、何たる反逆。
「いいから言えよ。でないと、バイト代払わねえぞ」
「そうなったら、労働基準監督所に赴くまでさ」
「おまえの塾に、チクってもいいのか? バイクに乗ってる時、どさくさに紛れてあたしの乳、揉んだこと」
「そ、それは、困る」
「セクハラ小学生だって、学校に訴え出てやってもいい」
「や、やめろよ」
「じゃ、言うんだな」
「言ったら、俺、殺される」
「なんでだよ?」
「きっと、こいつ、怒るから」
「そんときはそんときだろ? あたしがなんとかしてやるよ」
「絶対だな」
「ああ、絶対だ。悪役令嬢に、二言はない」
「わかった。じゃ、教えてやる」
 一平はようやく決意を固めたようだ。
 大きく息を吸い込む音が舌かと思うと、大声でこう言った。
「わかるだろ? メリーさんってさ、外人の名前じゃなかったら、もうアレしかないじゃん」
「だからアレじゃわかんないって言ってんだよ!」
「羊だよ!」
 一平がやけくそのように怒鳴った。
「メリーさんっていえば、ヒツジに決まってるじゃんか!」

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