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第517話 冥府の王(68)
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体格のいい剛が先頭に立ち、電車ごっこみたいに一列に並んで、危なっかしいつり橋を渡り終えた。
森に一歩足を踏み入れると、そこは木々が密生して薄暗く、道などあってないようなものだった。
地面は腐葉土でぶかぶかしていて、少し歩くと靴がめり込んだ。
「困ったわね。ろくに前が見えないわ」
剛に代わって先頭に立った由利亜が、懐中電灯で前を照らしながら、ため息混じりにつぶやいた。
「大丈夫だよ。地図があるもん。さっき渡したでしょ?」
と、パーカーのフードをかぶって、香澄が言った。
「あ、そういえば」
ポケットを探る由里亜。
「そうね、これでわかるかも」
懐中電灯を古びた紙片に向け、由利亜が目を細める。
「地図があったってことは、香澄ちゃんちは、けっこうな旧家なのかもしれないわね。ご先祖様は、ここにゆかりのある人ってことになるもの」
「そんな話は、聞いたことがないけど」
僕は首をひねった。
だが、家に何か秘密があるのは確かだという気がする。
あの部屋の入口のふすまに描かれていた絵も、屏風に描かれていた絵も、みんなハンザキに関するものだったからだ。
「そんな地図で、どこへいけばいいのかわかるのか?」
子どもが筆で落書きしたような地図を横からのぞき込んで、剛がたずねた。
「たぶんね。ほら、北のほうに赤い印があるでしょ。これがもがりの宮だと思う。ハンザキは、きっとここに潜んでいるはずよ」
「遠そうだな。つり橋まで、うまくおびき出せるといいけどな」
太い眉をしかめる剛。
「武器で牽制して、追い立てる。それしかない」
言いながら、由利亜が首からタリスマンを外した。
手首を軽く振ると、まばゆいばかりの光輝が出現した。
光は由利亜の手の中で弓の形をとると、元のようにすっと消えていった。
「みんなも準備して。ここから先は、何が出るかわからない。ハンザキに出会う前に、ほかの悪いものに憑りつかれたら、最期だからね」
「おおう、わかった」
気味悪そうに剛が言い、手のひらを開いて琥珀に目を落とす。
剛の琥珀が戦斧に形を変えるのにならい、僕と香澄も槍と短剣を準備した。
「こっち。みんな、はぐれないようについてきて」
木々のすき間を縫うようにして、由利亜が歩き出す。
ずいぶんと自信ありげな足取りだ。
「黄泉の国に入ったら、お父さんに会えるかな」
香澄が僕の手を握って、そんなことを言う。
「よせよ」
僕は首を横に振った。
「ここで死者の話をするんじゃない」
森に一歩足を踏み入れると、そこは木々が密生して薄暗く、道などあってないようなものだった。
地面は腐葉土でぶかぶかしていて、少し歩くと靴がめり込んだ。
「困ったわね。ろくに前が見えないわ」
剛に代わって先頭に立った由利亜が、懐中電灯で前を照らしながら、ため息混じりにつぶやいた。
「大丈夫だよ。地図があるもん。さっき渡したでしょ?」
と、パーカーのフードをかぶって、香澄が言った。
「あ、そういえば」
ポケットを探る由里亜。
「そうね、これでわかるかも」
懐中電灯を古びた紙片に向け、由利亜が目を細める。
「地図があったってことは、香澄ちゃんちは、けっこうな旧家なのかもしれないわね。ご先祖様は、ここにゆかりのある人ってことになるもの」
「そんな話は、聞いたことがないけど」
僕は首をひねった。
だが、家に何か秘密があるのは確かだという気がする。
あの部屋の入口のふすまに描かれていた絵も、屏風に描かれていた絵も、みんなハンザキに関するものだったからだ。
「そんな地図で、どこへいけばいいのかわかるのか?」
子どもが筆で落書きしたような地図を横からのぞき込んで、剛がたずねた。
「たぶんね。ほら、北のほうに赤い印があるでしょ。これがもがりの宮だと思う。ハンザキは、きっとここに潜んでいるはずよ」
「遠そうだな。つり橋まで、うまくおびき出せるといいけどな」
太い眉をしかめる剛。
「武器で牽制して、追い立てる。それしかない」
言いながら、由利亜が首からタリスマンを外した。
手首を軽く振ると、まばゆいばかりの光輝が出現した。
光は由利亜の手の中で弓の形をとると、元のようにすっと消えていった。
「みんなも準備して。ここから先は、何が出るかわからない。ハンザキに出会う前に、ほかの悪いものに憑りつかれたら、最期だからね」
「おおう、わかった」
気味悪そうに剛が言い、手のひらを開いて琥珀に目を落とす。
剛の琥珀が戦斧に形を変えるのにならい、僕と香澄も槍と短剣を準備した。
「こっち。みんな、はぐれないようについてきて」
木々のすき間を縫うようにして、由利亜が歩き出す。
ずいぶんと自信ありげな足取りだ。
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「よせよ」
僕は首を横に振った。
「ここで死者の話をするんじゃない」
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