超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

文字の大きさ
541 / 617

第517話 冥府の王(68)

しおりを挟む
 体格のいい剛が先頭に立ち、電車ごっこみたいに一列に並んで、危なっかしいつり橋を渡り終えた。
 森に一歩足を踏み入れると、そこは木々が密生して薄暗く、道などあってないようなものだった。
 地面は腐葉土でぶかぶかしていて、少し歩くと靴がめり込んだ。
「困ったわね。ろくに前が見えないわ」
 剛に代わって先頭に立った由利亜が、懐中電灯で前を照らしながら、ため息混じりにつぶやいた。
「大丈夫だよ。地図があるもん。さっき渡したでしょ?」
 と、パーカーのフードをかぶって、香澄が言った。
「あ、そういえば」
 ポケットを探る由里亜。
「そうね、これでわかるかも」
 懐中電灯を古びた紙片に向け、由利亜が目を細める。
「地図があったってことは、香澄ちゃんちは、けっこうな旧家なのかもしれないわね。ご先祖様は、ここにゆかりのある人ってことになるもの」
「そんな話は、聞いたことがないけど」
 僕は首をひねった。
 だが、家に何か秘密があるのは確かだという気がする。
 あの部屋の入口のふすまに描かれていた絵も、屏風に描かれていた絵も、みんなハンザキに関するものだったからだ。
「そんな地図で、どこへいけばいいのかわかるのか?」
 子どもが筆で落書きしたような地図を横からのぞき込んで、剛がたずねた。
「たぶんね。ほら、北のほうに赤い印があるでしょ。これがもがりの宮だと思う。ハンザキは、きっとここに潜んでいるはずよ」
「遠そうだな。つり橋まで、うまくおびき出せるといいけどな」
 太い眉をしかめる剛。
「武器で牽制して、追い立てる。それしかない」
 言いながら、由利亜が首からタリスマンを外した。
 手首を軽く振ると、まばゆいばかりの光輝が出現した。
 光は由利亜の手の中で弓の形をとると、元のようにすっと消えていった。
「みんなも準備して。ここから先は、何が出るかわからない。ハンザキに出会う前に、ほかの悪いものに憑りつかれたら、最期だからね」
「おおう、わかった」
 気味悪そうに剛が言い、手のひらを開いて琥珀に目を落とす。
 剛の琥珀が戦斧に形を変えるのにならい、僕と香澄も槍と短剣を準備した。
「こっち。みんな、はぐれないようについてきて」
 木々のすき間を縫うようにして、由利亜が歩き出す。
 ずいぶんと自信ありげな足取りだ。
「黄泉の国に入ったら、お父さんに会えるかな」
 香澄が僕の手を握って、そんなことを言う。
「よせよ」
 僕は首を横に振った。
「ここで死者の話をするんじゃない」




しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...