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プロローグA-①
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どこといって特徴のない、平凡な家族団らんの風景である。
テーブルを囲んで、両親とふたりの子どもが向かい合っている。
子どものひとりはまだ幼く、始終にこにこ笑って愛くるしい。
が、その隣に座る年かさの娘の横顔は、心なしか、かすかに引きつっているようだ。
髪の長い、どことなく哀しげな表情の少女である。
あどけない顔立ちからして、年の頃は14、5歳くらいだろうか。
大柄ではないものの、体つきはすでに女性特有の丸みを帯び、年頃に比べてひどく肉感的な印象だ。
その少女の前に、蝋燭を立てたバースディ・ケーキが置かれている。
「鈴(りん)、誕生日、おめでとう」
ワインの入ったグラスを掲げて、父親が言った。
細面の、知的な風貌の中年男性である。
顔つきは優しげだが、なぜか眼鏡の奥の細い眼には不穏な光が宿っている。
「これで鈴も14歳か」
満足げにつぶやくと、赤い舌を突き出してグラスの縁をペロリと舐めた。
「14歳になれば、もう大丈夫だな」
そう言って、ちらと母親を見る。
母親は、妙に疲れた感じのする中年女性である。
瞳に光がなく、心をどこかに置き忘れてきたような雰囲気だ。
「そうね。本人の同意があれば」
投げやりな口調で、ぼそりと言った。
その言葉に、鈴と呼ばれた娘がびくりと身体を震わせる。
「ねえ、ケーキ食べ終わったら、鈴ちゃんと遊んでもいい?」
母親が紙皿によそおったケーキをスプーンで口に運びながら、幼女が訊く。
「今夜はだめ」
気だるそうに母親がかぶりを振った。
「真帆も知ってるでしょ? 金曜日の夜は、儀式の時間なの」
「えー、つまんない。儀式って、何するの?」
「鈴とパパは、仲良しなんだ」
柔和な笑みを口元に浮かべて、父親が横から口を出す。
「だから、週末はいつも愛を確かめ合うんだよ」
「ふ~ん」
「真帆はママとおふろに入って、一緒におねんねよ」
「え~、まだ8時なのに?」
「絵本読んであげるから」
「はあい、わかった」
食器を洗うために、シンクの前に立つと、父親が鈴のデニムのミニスカートの下からやにわに太腿を撫でてきた。
「洗い物はママに任せておきなさい。それより鈴は早くシャワーを浴びて、2階の寝室に。服は、そうだな、きょうは水着にするか」
「でも…」
「それとも久しぶりに、パパと一緒にお風呂に入るか? 14歳になった記念に」
「い、いいです」
声がうわずった。
-そんなの、おかしいよー
親友の美咲の声が、耳の奥によみがえる。
-中学生にもなってパパとお風呂に入るだなんて、あり得ないー
きのうまで、なんとも思ってなかったのに。
これがそんなに、悪いことだったなんて…。
-それに、娘にそんなことさせるなんて、それ、犯罪だよ! 13歳以下の子どもに同意なしで性行為しちゃ、だめなんだよ! まして実の父親がさ!-
やめて。
鈴は両手で耳を覆って、ぎゅっと目を閉じた。
そんな…あれが、性行為だっていうの・・・?
真帆は母と一緒に1階の和室にいるのだろう。
家の中には、物音ひとつ聞こえない。
ひんやりした廊下を進み、突き当りのドアをノックする。
「入りなさい」
すぐに、父の声がした。
後ろ手にドアを閉め、鈴は反射的に両手で胸を隠した。
とたんに、押さえた手を、水着に包まれた丸い乳房が押し返す。
最近、胸がまた大きくなった気がする。
私、女に近づいてる・・・。
窮屈なスクール水着に押し込められた躰が、ふいに熱を持ったように熱くなる。
非常灯のオレンジ色の明かりの中に、ぼんやりと父の姿が浮かび上がる。
肋骨の浮き出た痩せた裸体の下のほうの黒い陰りから、鈴を威嚇するように肉の棒が斜めに突き出ている。
「そこに四つん這いになりなさい」
眼鏡の縁を光らせ、部屋の中央を指さして、有無を言わさぬ口調で父が命じた。
「お尻をこっちに向けて、高く上げるんだ。いつものように、盛りのついた犬みたいにな」
テーブルを囲んで、両親とふたりの子どもが向かい合っている。
子どものひとりはまだ幼く、始終にこにこ笑って愛くるしい。
が、その隣に座る年かさの娘の横顔は、心なしか、かすかに引きつっているようだ。
髪の長い、どことなく哀しげな表情の少女である。
あどけない顔立ちからして、年の頃は14、5歳くらいだろうか。
大柄ではないものの、体つきはすでに女性特有の丸みを帯び、年頃に比べてひどく肉感的な印象だ。
その少女の前に、蝋燭を立てたバースディ・ケーキが置かれている。
「鈴(りん)、誕生日、おめでとう」
ワインの入ったグラスを掲げて、父親が言った。
細面の、知的な風貌の中年男性である。
顔つきは優しげだが、なぜか眼鏡の奥の細い眼には不穏な光が宿っている。
「これで鈴も14歳か」
満足げにつぶやくと、赤い舌を突き出してグラスの縁をペロリと舐めた。
「14歳になれば、もう大丈夫だな」
そう言って、ちらと母親を見る。
母親は、妙に疲れた感じのする中年女性である。
瞳に光がなく、心をどこかに置き忘れてきたような雰囲気だ。
「そうね。本人の同意があれば」
投げやりな口調で、ぼそりと言った。
その言葉に、鈴と呼ばれた娘がびくりと身体を震わせる。
「ねえ、ケーキ食べ終わったら、鈴ちゃんと遊んでもいい?」
母親が紙皿によそおったケーキをスプーンで口に運びながら、幼女が訊く。
「今夜はだめ」
気だるそうに母親がかぶりを振った。
「真帆も知ってるでしょ? 金曜日の夜は、儀式の時間なの」
「えー、つまんない。儀式って、何するの?」
「鈴とパパは、仲良しなんだ」
柔和な笑みを口元に浮かべて、父親が横から口を出す。
「だから、週末はいつも愛を確かめ合うんだよ」
「ふ~ん」
「真帆はママとおふろに入って、一緒におねんねよ」
「え~、まだ8時なのに?」
「絵本読んであげるから」
「はあい、わかった」
食器を洗うために、シンクの前に立つと、父親が鈴のデニムのミニスカートの下からやにわに太腿を撫でてきた。
「洗い物はママに任せておきなさい。それより鈴は早くシャワーを浴びて、2階の寝室に。服は、そうだな、きょうは水着にするか」
「でも…」
「それとも久しぶりに、パパと一緒にお風呂に入るか? 14歳になった記念に」
「い、いいです」
声がうわずった。
-そんなの、おかしいよー
親友の美咲の声が、耳の奥によみがえる。
-中学生にもなってパパとお風呂に入るだなんて、あり得ないー
きのうまで、なんとも思ってなかったのに。
これがそんなに、悪いことだったなんて…。
-それに、娘にそんなことさせるなんて、それ、犯罪だよ! 13歳以下の子どもに同意なしで性行為しちゃ、だめなんだよ! まして実の父親がさ!-
やめて。
鈴は両手で耳を覆って、ぎゅっと目を閉じた。
そんな…あれが、性行為だっていうの・・・?
真帆は母と一緒に1階の和室にいるのだろう。
家の中には、物音ひとつ聞こえない。
ひんやりした廊下を進み、突き当りのドアをノックする。
「入りなさい」
すぐに、父の声がした。
後ろ手にドアを閉め、鈴は反射的に両手で胸を隠した。
とたんに、押さえた手を、水着に包まれた丸い乳房が押し返す。
最近、胸がまた大きくなった気がする。
私、女に近づいてる・・・。
窮屈なスクール水着に押し込められた躰が、ふいに熱を持ったように熱くなる。
非常灯のオレンジ色の明かりの中に、ぼんやりと父の姿が浮かび上がる。
肋骨の浮き出た痩せた裸体の下のほうの黒い陰りから、鈴を威嚇するように肉の棒が斜めに突き出ている。
「そこに四つん這いになりなさい」
眼鏡の縁を光らせ、部屋の中央を指さして、有無を言わさぬ口調で父が命じた。
「お尻をこっちに向けて、高く上げるんだ。いつものように、盛りのついた犬みたいにな」
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