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#23 接近
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テレビ画面には、凄まじい光景が映し出されていた。
舗道に流れる血の川。
脱線して防護壁に突っ込み、炎上する新幹線。
そしてなぜか、その新幹線の窓という窓にも内側から鮮血が飛び散っているー。
画面が変わって、地図が大写しになった。
地図上を蛇行する赤い線が、血の糸のように見える。
赤い線は、間違いなくここへ向かっていた。
また画面が切り替わり、車道を埋めるパトカーと救急車の群れが映った。
警官隊や機動隊が走り回っている。
何かを探しているようだ。
野次馬がスマホで写真を撮っている。
次に殺されるのは自分かもしれないのに、馬鹿なやつらだ。
人間はことごとく頭が悪い。
群れなくては生きていけないし、危機管理能力はゼロ。
これでは、全人類がエレナたち黒い羊の餌食になる日も近いに違いない。
照明を落とした部屋の中。
イヤホンをはずすと、エレナは機敏に背後を振り向いた。
引き戸を開けると、案の定、廊下に祖母がうずくまっていた。
「なんだ、トイレか」
肩を貸して、立たせてやる。
祖母はこの1か月ほどで、著しく足腰が弱ってきている。
「心配で、眠れないんだよ」
エレナの胸にすがって、祖母が言った。
「エレナがまたどこかへ行っちゃいそうで、怖くて怖くてねえ・・・」
このところ、エレナは目立たぬ生活を送っている。
学校と家の行き帰りだけが、生活圏になっている。
学校で不良たちに挑発されても相手にせぬよう、つねにひとりで行動している。
祖母が心配だったこともあるし、あの時逃したもうひとりの黒い羊の動向を探るためでもある。
下手に外を歩き回るより、今の世の中、ネットの情報を漁るほうが確実に獲物に接近できるのだ。
負傷した同類を連れ去った男の顔には、見覚えがあった。
その顔を手掛かりにして、少しずつ記憶が戻ってきた。
私は長い間、研究所みたいな所に幽閉されていた。
おそらく、この世に生まれ落ちてから、ずっとー。
ネットサーフィンの結果、1か月ほど前に隣県で国の研究施設が火事で全焼したという情報を見つけた。
そして、その機能が近くの別の施設に移されたことも。
ネットで面白おかしく語られていたのは、その施設で人体実験が行われていたという都市伝説だった。
間違いないと思った。
私は以前、そこにいた。
そして今は同類が私の代わりにそこに収容され、人間たちに保護されているのだ。
となれば、瑕が回復し次第施設を脱走して、いずれ私を追ってくるだろう。
そう、今度は私を捕食するためにー。
「どこにも行かないさ」
エレナはやせ衰えた老婆の身体を抱きしめた。
「だから、ばあちゃんは、安心して寝てな。決着は、ちゃんとここでつけるから」
舗道に流れる血の川。
脱線して防護壁に突っ込み、炎上する新幹線。
そしてなぜか、その新幹線の窓という窓にも内側から鮮血が飛び散っているー。
画面が変わって、地図が大写しになった。
地図上を蛇行する赤い線が、血の糸のように見える。
赤い線は、間違いなくここへ向かっていた。
また画面が切り替わり、車道を埋めるパトカーと救急車の群れが映った。
警官隊や機動隊が走り回っている。
何かを探しているようだ。
野次馬がスマホで写真を撮っている。
次に殺されるのは自分かもしれないのに、馬鹿なやつらだ。
人間はことごとく頭が悪い。
群れなくては生きていけないし、危機管理能力はゼロ。
これでは、全人類がエレナたち黒い羊の餌食になる日も近いに違いない。
照明を落とした部屋の中。
イヤホンをはずすと、エレナは機敏に背後を振り向いた。
引き戸を開けると、案の定、廊下に祖母がうずくまっていた。
「なんだ、トイレか」
肩を貸して、立たせてやる。
祖母はこの1か月ほどで、著しく足腰が弱ってきている。
「心配で、眠れないんだよ」
エレナの胸にすがって、祖母が言った。
「エレナがまたどこかへ行っちゃいそうで、怖くて怖くてねえ・・・」
このところ、エレナは目立たぬ生活を送っている。
学校と家の行き帰りだけが、生活圏になっている。
学校で不良たちに挑発されても相手にせぬよう、つねにひとりで行動している。
祖母が心配だったこともあるし、あの時逃したもうひとりの黒い羊の動向を探るためでもある。
下手に外を歩き回るより、今の世の中、ネットの情報を漁るほうが確実に獲物に接近できるのだ。
負傷した同類を連れ去った男の顔には、見覚えがあった。
その顔を手掛かりにして、少しずつ記憶が戻ってきた。
私は長い間、研究所みたいな所に幽閉されていた。
おそらく、この世に生まれ落ちてから、ずっとー。
ネットサーフィンの結果、1か月ほど前に隣県で国の研究施設が火事で全焼したという情報を見つけた。
そして、その機能が近くの別の施設に移されたことも。
ネットで面白おかしく語られていたのは、その施設で人体実験が行われていたという都市伝説だった。
間違いないと思った。
私は以前、そこにいた。
そして今は同類が私の代わりにそこに収容され、人間たちに保護されているのだ。
となれば、瑕が回復し次第施設を脱走して、いずれ私を追ってくるだろう。
そう、今度は私を捕食するためにー。
「どこにも行かないさ」
エレナはやせ衰えた老婆の身体を抱きしめた。
「だから、ばあちゃんは、安心して寝てな。決着は、ちゃんとここでつけるから」
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