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#22 家族
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翼のように両手を広げ、スカートの裾をなびかせて、鈴は飛翔した。
空を飛ぶことは、黒い羊の本来の力を取り戻した鈴にとっては、造作もないことだった。
飛翔に疲れると、時々地上に降りて、人間の脳を捕食した。
一番効率がよかったのは、疾走する新幹線の窓をぶち割って中に踊り込み、身動きできずにいる乗客たちの脳を貪るように吸った時だった。
そんなふうに行く先々で死体の山を築きながら、鈴がふとある家の庭に舞い降りたのは、その家を目にしたとたん、潜在意識の底からもうひとつの人格が浮上してきたからだった。
家の中では、ひどくやつれた中年の女と6歳ぐらいの幼女がテーブルを間に向かい合って夕食を摂っていた。
「鈴、あなた・・・」
いきなり上がり込んできた鈴を見るなり、中年女があんぐりと口を開けた。
「今までどこに行ってたの? ママはてっきり、通り魔に殺されたとばかり・・・」
「わあっ、りんちゃんだ!」
スプーンを放り出し、幼女が腰に抱きついてきた。
「パパは?」
真帆の頭を撫でながら、鈴は部屋の中を見回した。
だが、父親らしき姿はどこにもない。
「知らなかったのかい? 死んじゃったよ。あなたがいなくなった日、家の中で血塗れになって」
「やっぱり」
鈴の顔がかすかに歪んだ。
あの時、父は、私を助けるために犠牲になって・・・。
「仇、取るよ」
妹を抱き上げ、母に渡すと、感情を押し殺した声で鈴は言った。
「これからパパの仇を取ってくる」
空を飛ぶことは、黒い羊の本来の力を取り戻した鈴にとっては、造作もないことだった。
飛翔に疲れると、時々地上に降りて、人間の脳を捕食した。
一番効率がよかったのは、疾走する新幹線の窓をぶち割って中に踊り込み、身動きできずにいる乗客たちの脳を貪るように吸った時だった。
そんなふうに行く先々で死体の山を築きながら、鈴がふとある家の庭に舞い降りたのは、その家を目にしたとたん、潜在意識の底からもうひとつの人格が浮上してきたからだった。
家の中では、ひどくやつれた中年の女と6歳ぐらいの幼女がテーブルを間に向かい合って夕食を摂っていた。
「鈴、あなた・・・」
いきなり上がり込んできた鈴を見るなり、中年女があんぐりと口を開けた。
「今までどこに行ってたの? ママはてっきり、通り魔に殺されたとばかり・・・」
「わあっ、りんちゃんだ!」
スプーンを放り出し、幼女が腰に抱きついてきた。
「パパは?」
真帆の頭を撫でながら、鈴は部屋の中を見回した。
だが、父親らしき姿はどこにもない。
「知らなかったのかい? 死んじゃったよ。あなたがいなくなった日、家の中で血塗れになって」
「やっぱり」
鈴の顔がかすかに歪んだ。
あの時、父は、私を助けるために犠牲になって・・・。
「仇、取るよ」
妹を抱き上げ、母に渡すと、感情を押し殺した声で鈴は言った。
「これからパパの仇を取ってくる」
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