27 / 32
#21 捕食
しおりを挟む
血の海と化したベッドの上に、生白い若い女の裸体が浮かんでいる。
余分なぜい肉のないスレンダーな肢体はそれなりに美しいが、背中に開いた穴がそれを台無しにしていた。
返り血を浴びた鈴は、右手で女の頭部を鷲掴みにすると、180度ひねって無造作に骨ごとねじ切った。
千切れた首を膝の上に据え、縫い目に沿って頭蓋を開きにかかる。
頭皮と毛髪をつけたまま二つに割れた頭蓋骨の中には、白っぽい豆腐のようなものがみっしりと詰まっている。
湯気とともに漂い出たその臭気に胃の腑を刺激され、急速に空腹を覚えた鈴は、脳組織の中に2本の駆動体を突き立てた。
駆動体は武器であると同時にさまざまな器官を代用している。
中が空洞のチューブ状になっているため、獲物の脳を吸うには口よりこちらのほうが適している。
半分ほど吸って、
ーこれじゃないー
と思った。
真の獲物の脳味噌はこんなにスカスカでまずくはない。
早く”あれ”を見つけなければ。
それでも、詩織の脳を捕食した分、鈴の能力は飛躍的に高まったようだった。
この建物にいる下等動物どもの脳をみんな食い尽くせば、”あれ”をしのぐ力を手に入れることも可能だろう。
部屋につくりつけのユニットバスでシャワーを浴び、返り血を洗った。
衣装ボックスから新しい下着を、クローゼットから同じく真新しいセーラー服とスカートを取り出して身に着ける。
身支度が整うと、駆動体をハンマーのように振り回し、壁を砕いた。
エアロック状の二重扉を壊すより、壁を破るほうが簡単だと判断したためだった。
壁に開いた穴から抜け出ると、隣は倉庫のような空き部屋で、思った通り、ドアも二重になっていなかった。
駆動体の一撃で蝶番ごとドアを吹っ飛ばし、通路に出ると、音に気づいた警備員たちが駆けつけてくるところだった。
「動くな!」
拳銃を構えて、ひとりが叫んだ。
鈴は大人しく歩みを止めたが、不可視の駆動体は別だった。
前列のふたりの首のつけ根に、鈴の放った見えない触手が突き刺さる。
その先端は喉から小脳の下部に入りこみ、そこからポンプのごとく内容物を吸い始めた。
頭の中を空にされ、無言で床に崩れる警備員たち。
「な、なんだ? どうしたってんだ?」
残りのふたりが浮き足立った時には、すでに鈴はふたりの背後に回っていた。
両手で同時にふたりの首根っこを掴むと、ひとひねりで頸椎をへし折った。
立たせたまま、耳の穴から駆動体を挿入し、音を立てて脳を吸う。
身体じゅうに力がみなぎるのがわかった。
もっと早くこうすればよかったと思う。
エレベーターに乗り込み、階上に向かう。
コントロールルームへの途上で、更に3人の職員を殺して脳を吸収した。
目当ての場所にたどり着いた時には、警報器のサイレンが耳を聾せんばかりに、建物中に鳴り響いていた。
芽生えた念動力でドアを吹き飛ばし、コントロールルームに足を踏み入れた。
悲鳴を上げて逃げようとした女性オペレーターを、背中から駆動体で串刺しにして絶命させる。
「離れろ! そいつの武器は、半径2メートルまでしか届かない。距離を取れば安全だ」
見覚えのある男が叫んだ。
確か、矢崎といった。
鈴をここに連れてきたあの男だ。
「柚月君をどうした? まさか、おまえが・・・」
助けてもらった礼として見逃してやってもよかったが、ひとりだけ生かしておくのも面倒だった。
それに、今の鈴の駆動体の攻撃範囲は、半径2メートルどころではない。
多くの脳を滋養にしたおかげで、念動力も発動したし、駆動体自体の長さも自由に調節できるのだ。
「おまえまで、人類を裏切るのか!」
矢崎が再び口を開いた時が、彼の最期だった。
次の瞬間、鈴の駆動体は、確実に彼の脳下垂体をぶち抜いていた。
余分なぜい肉のないスレンダーな肢体はそれなりに美しいが、背中に開いた穴がそれを台無しにしていた。
返り血を浴びた鈴は、右手で女の頭部を鷲掴みにすると、180度ひねって無造作に骨ごとねじ切った。
千切れた首を膝の上に据え、縫い目に沿って頭蓋を開きにかかる。
頭皮と毛髪をつけたまま二つに割れた頭蓋骨の中には、白っぽい豆腐のようなものがみっしりと詰まっている。
湯気とともに漂い出たその臭気に胃の腑を刺激され、急速に空腹を覚えた鈴は、脳組織の中に2本の駆動体を突き立てた。
駆動体は武器であると同時にさまざまな器官を代用している。
中が空洞のチューブ状になっているため、獲物の脳を吸うには口よりこちらのほうが適している。
半分ほど吸って、
ーこれじゃないー
と思った。
真の獲物の脳味噌はこんなにスカスカでまずくはない。
早く”あれ”を見つけなければ。
それでも、詩織の脳を捕食した分、鈴の能力は飛躍的に高まったようだった。
この建物にいる下等動物どもの脳をみんな食い尽くせば、”あれ”をしのぐ力を手に入れることも可能だろう。
部屋につくりつけのユニットバスでシャワーを浴び、返り血を洗った。
衣装ボックスから新しい下着を、クローゼットから同じく真新しいセーラー服とスカートを取り出して身に着ける。
身支度が整うと、駆動体をハンマーのように振り回し、壁を砕いた。
エアロック状の二重扉を壊すより、壁を破るほうが簡単だと判断したためだった。
壁に開いた穴から抜け出ると、隣は倉庫のような空き部屋で、思った通り、ドアも二重になっていなかった。
駆動体の一撃で蝶番ごとドアを吹っ飛ばし、通路に出ると、音に気づいた警備員たちが駆けつけてくるところだった。
「動くな!」
拳銃を構えて、ひとりが叫んだ。
鈴は大人しく歩みを止めたが、不可視の駆動体は別だった。
前列のふたりの首のつけ根に、鈴の放った見えない触手が突き刺さる。
その先端は喉から小脳の下部に入りこみ、そこからポンプのごとく内容物を吸い始めた。
頭の中を空にされ、無言で床に崩れる警備員たち。
「な、なんだ? どうしたってんだ?」
残りのふたりが浮き足立った時には、すでに鈴はふたりの背後に回っていた。
両手で同時にふたりの首根っこを掴むと、ひとひねりで頸椎をへし折った。
立たせたまま、耳の穴から駆動体を挿入し、音を立てて脳を吸う。
身体じゅうに力がみなぎるのがわかった。
もっと早くこうすればよかったと思う。
エレベーターに乗り込み、階上に向かう。
コントロールルームへの途上で、更に3人の職員を殺して脳を吸収した。
目当ての場所にたどり着いた時には、警報器のサイレンが耳を聾せんばかりに、建物中に鳴り響いていた。
芽生えた念動力でドアを吹き飛ばし、コントロールルームに足を踏み入れた。
悲鳴を上げて逃げようとした女性オペレーターを、背中から駆動体で串刺しにして絶命させる。
「離れろ! そいつの武器は、半径2メートルまでしか届かない。距離を取れば安全だ」
見覚えのある男が叫んだ。
確か、矢崎といった。
鈴をここに連れてきたあの男だ。
「柚月君をどうした? まさか、おまえが・・・」
助けてもらった礼として見逃してやってもよかったが、ひとりだけ生かしておくのも面倒だった。
それに、今の鈴の駆動体の攻撃範囲は、半径2メートルどころではない。
多くの脳を滋養にしたおかげで、念動力も発動したし、駆動体自体の長さも自由に調節できるのだ。
「おまえまで、人類を裏切るのか!」
矢崎が再び口を開いた時が、彼の最期だった。
次の瞬間、鈴の駆動体は、確実に彼の脳下垂体をぶち抜いていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる