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第2部 ヒバナ、フィーバードリーム!
#16 一騎打ち
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脱衣場を出ると、ヒバナは待合室を通り抜け、外に向かった。
出入口には番台があり、跳ね戸の向こうにしなびた梅干しみたいな老人が座っていた。
「こちらがこのお風呂屋さんのご主人、源三さんだよ」
ヒバナの手を引いていたひずみが、立ち止まって番台を指さした。
「いつもひずみちゃんが「お世話になっています。それにこのたびは助けていただいて、本当にありがとうございました」
ヒバナは、白のセーラー服の上着に似たコスチュームと、へそが見えるほど浅いショートパンツを身に着けている。
そのコスプレまがいの格好に、老人が目を瞬いた。
「おお、ヒバナちゃんだったかのう。すっかり元気になったようで、よかったよかった」
「じゃ、私、戦いがありますから、お話はまた後で」
風呂場を出ると、すぐに外かと思いきや、そこは延々と続く長い廊下だった。
左手には、ガラス戸越しに枯山水をあしらった気品のある庭が広がっているのが見える。
「ここ、ただの銭湯じゃないみたいね」
びっくりして、ヒバナは言った。
「うん。昔は料亭とか、色々やってたみたい。勇者様限定の、会員制の休憩所だったんだよ」
「織田信長とか?」
「そう、もちろん、秀吉も家康も。かれら、この地方の出身だし」
「うほほ、だね。私、三英傑の入ったお風呂につかってたわけだ」
「まあ、そうだね。その分きっと、パワーアップしてるんじゃない?」
「うん、そう思う。だから試してみたいことがあるんだ」
「試してみたいこと?」
ヒバナは左手をひずみの前に掲げて見せた。
「この腕輪の新しい使い方」
長い廊下を抜け、京都の町家ふうの玄関口にたどり着くと、ふたりは今度こそ外界に出ることができた。
背後に古墳を控えた、何もない草原である。
「ここなら結界の中だから、一般人には見られないよ」
ひずみが耳打ちした。
「そうなんだ」
なるほど。
よく見ると、草原は靄みたいなものに囲まれていて、その外は見えなくなっている。
「おせえぞ、こらあ」
ドラ声が降ってきて、振り向くと右手に武藤塊が突っ立っていた。
肩にマスコットみたいに小さなフクロウを乗せている。
「俺が勝ったら、あのトカゲ野郎の命はもらうからな」
太い首をグリグリ回して、塊が言った。
「どうぞ遠慮なく」
少し足を開いて立つヒバナ。
「なんか、走れメロスみたいだね」
ひずみがいかにも中学生らしい感想を述べる。
「ひずみちゃんとミミは下がってて」
腕輪に手を置いて、ヒバナは言った。
「行くよ」
ひずみの安全を確認して、リングを回す。
これまで動かなかった、内側から二番目の輪だ。
かちりと澄んだ音がした。
「やった」
ヒバナは瞳を輝かせた。
「回ったよ。新しい竜の文様が、できた!」
その瞬間、身体中がかっと熱くなり、変身が始まった。
出入口には番台があり、跳ね戸の向こうにしなびた梅干しみたいな老人が座っていた。
「こちらがこのお風呂屋さんのご主人、源三さんだよ」
ヒバナの手を引いていたひずみが、立ち止まって番台を指さした。
「いつもひずみちゃんが「お世話になっています。それにこのたびは助けていただいて、本当にありがとうございました」
ヒバナは、白のセーラー服の上着に似たコスチュームと、へそが見えるほど浅いショートパンツを身に着けている。
そのコスプレまがいの格好に、老人が目を瞬いた。
「おお、ヒバナちゃんだったかのう。すっかり元気になったようで、よかったよかった」
「じゃ、私、戦いがありますから、お話はまた後で」
風呂場を出ると、すぐに外かと思いきや、そこは延々と続く長い廊下だった。
左手には、ガラス戸越しに枯山水をあしらった気品のある庭が広がっているのが見える。
「ここ、ただの銭湯じゃないみたいね」
びっくりして、ヒバナは言った。
「うん。昔は料亭とか、色々やってたみたい。勇者様限定の、会員制の休憩所だったんだよ」
「織田信長とか?」
「そう、もちろん、秀吉も家康も。かれら、この地方の出身だし」
「うほほ、だね。私、三英傑の入ったお風呂につかってたわけだ」
「まあ、そうだね。その分きっと、パワーアップしてるんじゃない?」
「うん、そう思う。だから試してみたいことがあるんだ」
「試してみたいこと?」
ヒバナは左手をひずみの前に掲げて見せた。
「この腕輪の新しい使い方」
長い廊下を抜け、京都の町家ふうの玄関口にたどり着くと、ふたりは今度こそ外界に出ることができた。
背後に古墳を控えた、何もない草原である。
「ここなら結界の中だから、一般人には見られないよ」
ひずみが耳打ちした。
「そうなんだ」
なるほど。
よく見ると、草原は靄みたいなものに囲まれていて、その外は見えなくなっている。
「おせえぞ、こらあ」
ドラ声が降ってきて、振り向くと右手に武藤塊が突っ立っていた。
肩にマスコットみたいに小さなフクロウを乗せている。
「俺が勝ったら、あのトカゲ野郎の命はもらうからな」
太い首をグリグリ回して、塊が言った。
「どうぞ遠慮なく」
少し足を開いて立つヒバナ。
「なんか、走れメロスみたいだね」
ひずみがいかにも中学生らしい感想を述べる。
「ひずみちゃんとミミは下がってて」
腕輪に手を置いて、ヒバナは言った。
「行くよ」
ひずみの安全を確認して、リングを回す。
これまで動かなかった、内側から二番目の輪だ。
かちりと澄んだ音がした。
「やった」
ヒバナは瞳を輝かせた。
「回ったよ。新しい竜の文様が、できた!」
その瞬間、身体中がかっと熱くなり、変身が始まった。
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