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第5部 ヒバナ、インモラルナイト!
#27 ヒバナ、入浴する
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「いい? 大浴場では、タオルを湯船に入れないこと。お湯につかる前に体をしっかり洗うこと。それから、出るときは、脱衣場に上がる前に必ず体をよく拭くこと。2人とも、わかった?」
2階の大浴場の『女湯』の暖簾をくぐったところで緋美子のレクチャーを受け、いよいよ入浴である。
「合点承知の助だい!」
さすが小学生だけあって、玉子は何の屈託もなくたちまちのうちに丸裸になると、弾丸のように浴場に飛び込んでいった。
が、ヒバナはそうはいかない。
バスタオルで体を隠しながら苦労して服と下着を脱ぐと、小さなタオルで股間を、左腕で胸を隠して内股で浴場の中にそろそろと入る。
緋美子ときたら堂々としたもので、何一つ隠さず、タオルを首にかけたまま、大股で先をずんずん歩いていく。
引き締まった臀部、ほどよく筋肉のついた長い脚が、思わず見とれてしまうほどかっこいい。
大浴場の中は、真ん中が楕円形の大きな湯船で、それを取り囲むように洗い場が並んでいた。
何箇所かにガラス戸があり、岩盤浴やサウナ、ジャグジーバス、薬湯への出入り口になっている。
逃げるわけにも行かず、しかたなく緋美子の隣に座って、まず軽く体を洗うことにした。
大方の客が帰省したあとなのか、浴場内は空いていて、湯気のベールの中を行き来する人影はまばらだった。
どこへ行ったのか、玉子の姿は影も形も見えない。
隣に温水プールがあるので、そっちに遊びに行っているのかもしれなかった。
外見こそ小学校低学年だが、玉子は海の神の娘である。
放っておいても、おぼれる心配はまずないといってよかった。
タオルにボディシャンプーをつけていると、
「さ、ヒバナ、背中こっちに向けて」
緋美子が声をかけてきた。
「あ、う、うん」
緋美子がスポンジで背中をゆっくり洗い始めた。
緊張で固くなるヒバナ。
恥ずかしさで、顔がほてってくる。
懸命に胸を隠していると、わきの下から強引に緋美子の両手が割り込んできた。
ヒバナの手を払いのけ、2つの胸の丘を掌ですっぽり包み込む。
「ほら、きのうのお返し」
肩に顎を乗せてきて、耳元でささやいた。
ヒバナはぎくりとした。
「ナミ、なの?」
思わず、警戒するような口調になる。
緋美子の中に巣くっている死天王の生き残り、乾ナミ。
そのナミが、蘇ったかと思ったのだ。
ヒバナをもてあそび、隙を見て殺すために。
「ちがうよ」
緋美子が小声で言う。
「心配しないで。私は正真正銘の私」
うしろから、そっとヒバナを抱きしめる。
背中に緋美子の豊かな乳房が当たるのがわかった。
「ヒバナって、着やせするたちなんだ。意外に大きくって、すっごく、やわらかい」
緋美子の掌に少し力がこもる。
ナミ、じゃない?
じゃ、これは。
これは、どういう、こと?
ヒバナは混乱した。
もしかして、私・・・。
期待して、いいの・・・?
多幸感がじわじわと全身に広がっていく。
「あ、あの、ひみちゃん、ちょっと、わたし・・・」
ヒバナは目をつぶって、体の変化に耐えた。
力が抜けていく。
体の中心が、熱く潤い始める。
今なら・・・。
ふと、思った。
今なら、言えるかもしれない。
「ひみちゃん、ほんとは・・・わたし、ずっと前から、あの・・・」
目を閉じたまま、熱に浮かされたように、言った。
もう少しだ。
もう少しで、伝えられる。
胸に詰まった、この思いを・・・。
だが、それを緋美子が、遮った。
「その先は言わないで。まだ、なにも終わっていない。そうでしょ?」
そうだ。
そうなんだ・・・。
ヒバナはうなだれた。
ひずみに申し訳ない。
今頃、きっと大変な思いをしているに違いない、ひずみ。
そのひずみを放っておいて、わたしはいったい何をしているのだろう?
「落ち込まないの。さ、こっち向いて」
緋美子が言って、ヒバナをくるりと振り向かせた。
吸い込まれそうなくらい深い瞳が、すぐそこにあった。
胸と胸をくっつけるように、一瞬強く抱きしめられた。
緋美子の顔が急接近する。
ヒバナの唇に濡れた緋美子の唇が合わさった。
あっと思ったときには、すべてが終わっていた。
「さ、湯船に入ろう。天然温泉だから、きっと気持ちいいよ!」
立ち上がって、緋美子が言った。
湯気の中に立つ女神の像のようなその見事な肢体を見上げ、ヒバナにはもう、うなずくことしかできなかった。
大浴場から戻ると、もう夕食の時間だった。
風呂上りの浴衣姿のままで、最上階のレストランに行く。
窓際の席だったので、夜景が奇麗だった。
遠くで花火が上がっているのが見えた。
音もなく打ちあげられる花火を見るともなく眺めていると、目の奥がじーんと熱くなってきた。
何の悩みもない状態で、緋美子やひずみとこんな光景を見ることができたら・・・。
ヒバナは、心の底からそう願わないではいられなかった。
いや。
そういう幸せな日々を迎えるために、わたしは戦うんだ。
そう、思い直す。
地球のため。
人類のため。
日本のため。
よりも、その前に。
わたしは自分のささやかな平和を守るために、戦いたい。
それが、何の取り得もないわたしの、たったひとつの存在意義なのだから・・・。
部屋に戻り、3人そろって、新しい戦闘服に着替えた。
3人とも、上はノースリーブの白いセーラー服。
左胸にオレンジ色の亀のマークの刺繍がある。
翼が生えてきても大丈夫なように、背中が大きく開いている。
下はヒバナが白のマイクロショートパンツ。
緋美子は白いマイクロミニ、玉子は青いフレアスカートである。
3人とも額に青い宝石を埋め込んでいる。
「少女戦隊ヤットレンジャー!」
玉子がポーズを決めて、叫んだ。
「またそれ?」
ヒバナがあきれ言う。
「なんかやる気なさそうなネーミング」
「『岬ヒバナとゆかいな仲間たち』のほうが、いいと思うけど」
緋美子も譲らない。
「名前、なげーよ」
玉子が不平を漏らす。
「ちょっと疑問に思ったんだけどね」
ヒバナが人差し指を頬に当てて、言った。
「少女戦隊、戦闘少女ってアニメやラノベにはよく出てくるけど、『少女』って、何歳ぐらいまでを指すのかな」
「うーん、難しい質問ね」
緋美子が眉を寄せ、宙を見据える。
「ヒバゴンは少女失格でないの。19歳ってもうおばさんだろ? 7歳のあたいは筋金入りの少女だけどさ」
玉子がずけずけと言う。
「あんた、本当は1万歳超えてるくせに」
ヒバナがすかさずやり返す。
「見た目が若けりゃそれでいいんだよ」
玉子はめげない。
「十代ならOKってことにしようよ」
緋美子が、そう結論づけた。
「よし、あと半年はいけるな」
にやりと笑うヒバナ。
「さ、行こうか。外のバスの駐車場、あそこで変身しましょう」
緋美子が先に立ち、部屋を出る。
ロビーでは、3人は注目の的だった。
ーなにあれ?-
-コスプレ大会?-
ーあの先頭の子、むちゃかわいくて色っぽいス!-
-おれは2番目の子が地味に好きなタイプだけどなー
ーいやいやいや、やっぱ、あのチビちゃんでしょー
外は、満点の星。
駐車場の隅。
観光バスの陰で、束の間稲妻が走り、3頭の神獣が誕生した。
2階の大浴場の『女湯』の暖簾をくぐったところで緋美子のレクチャーを受け、いよいよ入浴である。
「合点承知の助だい!」
さすが小学生だけあって、玉子は何の屈託もなくたちまちのうちに丸裸になると、弾丸のように浴場に飛び込んでいった。
が、ヒバナはそうはいかない。
バスタオルで体を隠しながら苦労して服と下着を脱ぐと、小さなタオルで股間を、左腕で胸を隠して内股で浴場の中にそろそろと入る。
緋美子ときたら堂々としたもので、何一つ隠さず、タオルを首にかけたまま、大股で先をずんずん歩いていく。
引き締まった臀部、ほどよく筋肉のついた長い脚が、思わず見とれてしまうほどかっこいい。
大浴場の中は、真ん中が楕円形の大きな湯船で、それを取り囲むように洗い場が並んでいた。
何箇所かにガラス戸があり、岩盤浴やサウナ、ジャグジーバス、薬湯への出入り口になっている。
逃げるわけにも行かず、しかたなく緋美子の隣に座って、まず軽く体を洗うことにした。
大方の客が帰省したあとなのか、浴場内は空いていて、湯気のベールの中を行き来する人影はまばらだった。
どこへ行ったのか、玉子の姿は影も形も見えない。
隣に温水プールがあるので、そっちに遊びに行っているのかもしれなかった。
外見こそ小学校低学年だが、玉子は海の神の娘である。
放っておいても、おぼれる心配はまずないといってよかった。
タオルにボディシャンプーをつけていると、
「さ、ヒバナ、背中こっちに向けて」
緋美子が声をかけてきた。
「あ、う、うん」
緋美子がスポンジで背中をゆっくり洗い始めた。
緊張で固くなるヒバナ。
恥ずかしさで、顔がほてってくる。
懸命に胸を隠していると、わきの下から強引に緋美子の両手が割り込んできた。
ヒバナの手を払いのけ、2つの胸の丘を掌ですっぽり包み込む。
「ほら、きのうのお返し」
肩に顎を乗せてきて、耳元でささやいた。
ヒバナはぎくりとした。
「ナミ、なの?」
思わず、警戒するような口調になる。
緋美子の中に巣くっている死天王の生き残り、乾ナミ。
そのナミが、蘇ったかと思ったのだ。
ヒバナをもてあそび、隙を見て殺すために。
「ちがうよ」
緋美子が小声で言う。
「心配しないで。私は正真正銘の私」
うしろから、そっとヒバナを抱きしめる。
背中に緋美子の豊かな乳房が当たるのがわかった。
「ヒバナって、着やせするたちなんだ。意外に大きくって、すっごく、やわらかい」
緋美子の掌に少し力がこもる。
ナミ、じゃない?
じゃ、これは。
これは、どういう、こと?
ヒバナは混乱した。
もしかして、私・・・。
期待して、いいの・・・?
多幸感がじわじわと全身に広がっていく。
「あ、あの、ひみちゃん、ちょっと、わたし・・・」
ヒバナは目をつぶって、体の変化に耐えた。
力が抜けていく。
体の中心が、熱く潤い始める。
今なら・・・。
ふと、思った。
今なら、言えるかもしれない。
「ひみちゃん、ほんとは・・・わたし、ずっと前から、あの・・・」
目を閉じたまま、熱に浮かされたように、言った。
もう少しだ。
もう少しで、伝えられる。
胸に詰まった、この思いを・・・。
だが、それを緋美子が、遮った。
「その先は言わないで。まだ、なにも終わっていない。そうでしょ?」
そうだ。
そうなんだ・・・。
ヒバナはうなだれた。
ひずみに申し訳ない。
今頃、きっと大変な思いをしているに違いない、ひずみ。
そのひずみを放っておいて、わたしはいったい何をしているのだろう?
「落ち込まないの。さ、こっち向いて」
緋美子が言って、ヒバナをくるりと振り向かせた。
吸い込まれそうなくらい深い瞳が、すぐそこにあった。
胸と胸をくっつけるように、一瞬強く抱きしめられた。
緋美子の顔が急接近する。
ヒバナの唇に濡れた緋美子の唇が合わさった。
あっと思ったときには、すべてが終わっていた。
「さ、湯船に入ろう。天然温泉だから、きっと気持ちいいよ!」
立ち上がって、緋美子が言った。
湯気の中に立つ女神の像のようなその見事な肢体を見上げ、ヒバナにはもう、うなずくことしかできなかった。
大浴場から戻ると、もう夕食の時間だった。
風呂上りの浴衣姿のままで、最上階のレストランに行く。
窓際の席だったので、夜景が奇麗だった。
遠くで花火が上がっているのが見えた。
音もなく打ちあげられる花火を見るともなく眺めていると、目の奥がじーんと熱くなってきた。
何の悩みもない状態で、緋美子やひずみとこんな光景を見ることができたら・・・。
ヒバナは、心の底からそう願わないではいられなかった。
いや。
そういう幸せな日々を迎えるために、わたしは戦うんだ。
そう、思い直す。
地球のため。
人類のため。
日本のため。
よりも、その前に。
わたしは自分のささやかな平和を守るために、戦いたい。
それが、何の取り得もないわたしの、たったひとつの存在意義なのだから・・・。
部屋に戻り、3人そろって、新しい戦闘服に着替えた。
3人とも、上はノースリーブの白いセーラー服。
左胸にオレンジ色の亀のマークの刺繍がある。
翼が生えてきても大丈夫なように、背中が大きく開いている。
下はヒバナが白のマイクロショートパンツ。
緋美子は白いマイクロミニ、玉子は青いフレアスカートである。
3人とも額に青い宝石を埋め込んでいる。
「少女戦隊ヤットレンジャー!」
玉子がポーズを決めて、叫んだ。
「またそれ?」
ヒバナがあきれ言う。
「なんかやる気なさそうなネーミング」
「『岬ヒバナとゆかいな仲間たち』のほうが、いいと思うけど」
緋美子も譲らない。
「名前、なげーよ」
玉子が不平を漏らす。
「ちょっと疑問に思ったんだけどね」
ヒバナが人差し指を頬に当てて、言った。
「少女戦隊、戦闘少女ってアニメやラノベにはよく出てくるけど、『少女』って、何歳ぐらいまでを指すのかな」
「うーん、難しい質問ね」
緋美子が眉を寄せ、宙を見据える。
「ヒバゴンは少女失格でないの。19歳ってもうおばさんだろ? 7歳のあたいは筋金入りの少女だけどさ」
玉子がずけずけと言う。
「あんた、本当は1万歳超えてるくせに」
ヒバナがすかさずやり返す。
「見た目が若けりゃそれでいいんだよ」
玉子はめげない。
「十代ならOKってことにしようよ」
緋美子が、そう結論づけた。
「よし、あと半年はいけるな」
にやりと笑うヒバナ。
「さ、行こうか。外のバスの駐車場、あそこで変身しましょう」
緋美子が先に立ち、部屋を出る。
ロビーでは、3人は注目の的だった。
ーなにあれ?-
-コスプレ大会?-
ーあの先頭の子、むちゃかわいくて色っぽいス!-
-おれは2番目の子が地味に好きなタイプだけどなー
ーいやいやいや、やっぱ、あのチビちゃんでしょー
外は、満点の星。
駐車場の隅。
観光バスの陰で、束の間稲妻が走り、3頭の神獣が誕生した。
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