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背徳病棟③
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うそ寒さを覚えて、目が覚めた。
薄目を開けると、蓮月は全裸で浴室の床に転がされていた。
何か紐のようなもので、両腕が後ろ手に縛られている。
剥き出しの乳房に当たるタイルが冷たいせいで、乳首が硬く勃起してしまっている。
どうして、こんな…?
やったのは、弓削氷見子に決まっている。
氷見子が睡眠薬のようなものを、蓮月に注射したのだ。
でも、と思う。
その理由がわからない。
まさか、彼女もユズハや大男たち、非日常の存在の仲間とでもいうのだろうか。
それとも、これは、一時的な気の迷いのようなものなのか…。
確かに、ここに来るまでの間、氷見子の様子はおかしかった。
出勤時に、ナースステーションで出会った時のいつものクールな副看護師長とは、別人のようだった。
妙に蓮月に色目を使い、躰に触れたがった。
そう、まるで、発情した娘のように…。
レズビアン?
そんな言葉が、脳裏に浮かぶ。
可能性としては、ゼロではない。
しかし、副看護師長にそんな性癖があるなんて、初耳である。
この女だらけの職場で、同性愛者であることをずっと隠し通してきた、ということなのだろうか。
そのターゲットが、あたしに?
肝心の氷見子の姿は、浴室内にはなかった。
どうやら脱衣所のほうにいるらしく、間を仕切ったすりガラスの向こうに、黒い影が動くのが透けて見える。
あたしにこんなことして、彼女は何をするつもりなのだろう?
これでは、蜘蛛の巣を使ってあたしを絡め取り、卵を産みつけようとしたユズハと変わらない。
いったい、この病院はどうなってしまったのだろう?
ここ数日、あり得ないことばかり続く。
慣れ親しんだ職場が、知らないうちに、邪悪な別世界に変貌してしまったかのように…。
「ううん」
蓮月は横倒しになった躰を動かし、脱衣所のほうに移動しようとした。
両手の自由は利かないが、足は自由である。
躰を腹這いにして、尺取虫みたいな恰好で、移動を開始しようとした時だった。
ガラリと硝子戸が開いて、弓削氷見子が顏を覗かせた。
「あら、目が覚めたのね?」
「ど、どういうことですか? これ…?」
尋ねかけた蓮月は、相手の手にあるものに気づいて、眉をひそめ、残りの言葉を呑み込んだ。
氷見子は右手に異様に太い注射器を握っている。
注射器には、針の代わりに、細いチューブが取りつけられている。
そして、シリンダーの後ろからは長いゴムの管が伸び、氷見子の足元に置かれた業務用電気掃除機みたいな器械に繋がっている。
「な、何をする気?」
蓮月は、かすれた声で、叫ぶように言った。
恐怖で喉が干上がり、舌が上顎の裏に貼りついたようになっている。
信じられない。
まさかー。
副委員長は、本気で、あれをこのあたしに使う気なのだろうか…。
薄目を開けると、蓮月は全裸で浴室の床に転がされていた。
何か紐のようなもので、両腕が後ろ手に縛られている。
剥き出しの乳房に当たるタイルが冷たいせいで、乳首が硬く勃起してしまっている。
どうして、こんな…?
やったのは、弓削氷見子に決まっている。
氷見子が睡眠薬のようなものを、蓮月に注射したのだ。
でも、と思う。
その理由がわからない。
まさか、彼女もユズハや大男たち、非日常の存在の仲間とでもいうのだろうか。
それとも、これは、一時的な気の迷いのようなものなのか…。
確かに、ここに来るまでの間、氷見子の様子はおかしかった。
出勤時に、ナースステーションで出会った時のいつものクールな副看護師長とは、別人のようだった。
妙に蓮月に色目を使い、躰に触れたがった。
そう、まるで、発情した娘のように…。
レズビアン?
そんな言葉が、脳裏に浮かぶ。
可能性としては、ゼロではない。
しかし、副看護師長にそんな性癖があるなんて、初耳である。
この女だらけの職場で、同性愛者であることをずっと隠し通してきた、ということなのだろうか。
そのターゲットが、あたしに?
肝心の氷見子の姿は、浴室内にはなかった。
どうやら脱衣所のほうにいるらしく、間を仕切ったすりガラスの向こうに、黒い影が動くのが透けて見える。
あたしにこんなことして、彼女は何をするつもりなのだろう?
これでは、蜘蛛の巣を使ってあたしを絡め取り、卵を産みつけようとしたユズハと変わらない。
いったい、この病院はどうなってしまったのだろう?
ここ数日、あり得ないことばかり続く。
慣れ親しんだ職場が、知らないうちに、邪悪な別世界に変貌してしまったかのように…。
「ううん」
蓮月は横倒しになった躰を動かし、脱衣所のほうに移動しようとした。
両手の自由は利かないが、足は自由である。
躰を腹這いにして、尺取虫みたいな恰好で、移動を開始しようとした時だった。
ガラリと硝子戸が開いて、弓削氷見子が顏を覗かせた。
「あら、目が覚めたのね?」
「ど、どういうことですか? これ…?」
尋ねかけた蓮月は、相手の手にあるものに気づいて、眉をひそめ、残りの言葉を呑み込んだ。
氷見子は右手に異様に太い注射器を握っている。
注射器には、針の代わりに、細いチューブが取りつけられている。
そして、シリンダーの後ろからは長いゴムの管が伸び、氷見子の足元に置かれた業務用電気掃除機みたいな器械に繋がっている。
「な、何をする気?」
蓮月は、かすれた声で、叫ぶように言った。
恐怖で喉が干上がり、舌が上顎の裏に貼りついたようになっている。
信じられない。
まさかー。
副委員長は、本気で、あれをこのあたしに使う気なのだろうか…。
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