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#23 リベンジポルノ②
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三度目の訪問も笑顔で迎えられた。
よほどいいことがあったのか、今日は昆布茶だけでなく、メロンまでついている。
「どうですか? あれから邦彦くんは?」
社交辞令代わりに訊いてやると、教授と佐和さんの顔が同時にほころんだ。
「いやあ、さすが美咲ちゃんだね。邦彦のやつ、自分で部屋の掃除をしたり、ゴミを出しに行くようになってね。この調子なら、引きこもり卒業も近いって、今もちょうど佐和さんと話してたところだったんだよ」
「てことは、邦彦の引きこもり、治ったってことですか?」
すわ10万円!と意気込んで身を乗り出したけど、現実はそこまで甘くなかった。
「それがね、よくわからないんだが…。『引きこもりは、やめようと思えばやめられなくないんだけど、ここでやめたら楽しみが減るから』なんて、わけのわからない理屈をこねてね、ゴミ捨て以外では相変わらず部屋から出てこないんだよ。『楽しみが減る』って、どういうことかわかるかい?」
「さあ」
あいまいに笑ってごまかしたけど、私の中では怒りの炎が再燃していた。
あの野郎、人をおもちゃ扱いしやがって!
足音も荒く階段を上がり、ドアを思いきりキックすると、
「開いてるよ。入ってきて」
のんびりした邦彦の声が返ってきた。
荒々しく乗り込むと、邦彦はきれいに片づいた部屋の真ん中に胡坐をかいて、何かつくっているところだった。
「てめえ、引きこもり治ってんじゃねえかよ。なんで大人しく部屋から出てこないんだよ!」
腰に手を当て、上からにらみおろすと、
「美咲ちゃん、パンツ見えてるよ」
振り向きもせず邦彦が言った。
「な、なにい?」
見ると、邦彦の手元には手鏡が握られていて、そこにばっちり私のスカートの中身が映っていた。
「この変態!ったく、油断も隙もありゃしない!」
「だって、美咲ちゃんは僕を興奮させたいんだろ? 興奮させて、いかせなきゃ勝負に勝ったことにならないんだろ? だからきょうは、できるだけ協力してあげようと思ってさ。引きこもりのことだってそうだよ。ここで僕が社会復帰しちゃったら、美咲ちゃんにはもうここへ来る理由がなくなっちゃう。つまり、君は永遠に僕に勝てないことになる。君の性格からして、そんなの耐えられないんじゃないかと思ってね。そういう意味で、君が僕に勝てるまで社会復帰は先延ばしにすることにした」
「むうう」
邦彦の言葉にも、一理ある。
邦彦が引きこもりをやめれば、めでたく私は任務完了で報酬の10万円ゲットである。
でも、それでは負けたままなのだ。
ここでいったん縁が切れてしまえば、恋人でも友人でもない私は、この部屋を訪れる理由を失ってしまうのだ。
「わかったよ。勝ちゃいいんだろ。勝ちゃあ」
私は憮然として言った。
「ところでさ、あんたさっきから何してんの?」
「あ、これ」
邦彦が手元の何かを掲げて見せた。
「フィギュアだよ。美咲ちゃんそっくりなのをつくってみたんだ。アニメキャラのフィギュアをベースにしてね、手足を可動式にして、いろんなポーズを取らせて遊ぶんだ」
「やっぱ、おまえ、変態だわ」
私は邦彦の坊主頭を右足でふんづけた。
「さ、お人形さんごっこはそのへんにしといて、とっとと行くよ。第二回戦」
よほどいいことがあったのか、今日は昆布茶だけでなく、メロンまでついている。
「どうですか? あれから邦彦くんは?」
社交辞令代わりに訊いてやると、教授と佐和さんの顔が同時にほころんだ。
「いやあ、さすが美咲ちゃんだね。邦彦のやつ、自分で部屋の掃除をしたり、ゴミを出しに行くようになってね。この調子なら、引きこもり卒業も近いって、今もちょうど佐和さんと話してたところだったんだよ」
「てことは、邦彦の引きこもり、治ったってことですか?」
すわ10万円!と意気込んで身を乗り出したけど、現実はそこまで甘くなかった。
「それがね、よくわからないんだが…。『引きこもりは、やめようと思えばやめられなくないんだけど、ここでやめたら楽しみが減るから』なんて、わけのわからない理屈をこねてね、ゴミ捨て以外では相変わらず部屋から出てこないんだよ。『楽しみが減る』って、どういうことかわかるかい?」
「さあ」
あいまいに笑ってごまかしたけど、私の中では怒りの炎が再燃していた。
あの野郎、人をおもちゃ扱いしやがって!
足音も荒く階段を上がり、ドアを思いきりキックすると、
「開いてるよ。入ってきて」
のんびりした邦彦の声が返ってきた。
荒々しく乗り込むと、邦彦はきれいに片づいた部屋の真ん中に胡坐をかいて、何かつくっているところだった。
「てめえ、引きこもり治ってんじゃねえかよ。なんで大人しく部屋から出てこないんだよ!」
腰に手を当て、上からにらみおろすと、
「美咲ちゃん、パンツ見えてるよ」
振り向きもせず邦彦が言った。
「な、なにい?」
見ると、邦彦の手元には手鏡が握られていて、そこにばっちり私のスカートの中身が映っていた。
「この変態!ったく、油断も隙もありゃしない!」
「だって、美咲ちゃんは僕を興奮させたいんだろ? 興奮させて、いかせなきゃ勝負に勝ったことにならないんだろ? だからきょうは、できるだけ協力してあげようと思ってさ。引きこもりのことだってそうだよ。ここで僕が社会復帰しちゃったら、美咲ちゃんにはもうここへ来る理由がなくなっちゃう。つまり、君は永遠に僕に勝てないことになる。君の性格からして、そんなの耐えられないんじゃないかと思ってね。そういう意味で、君が僕に勝てるまで社会復帰は先延ばしにすることにした」
「むうう」
邦彦の言葉にも、一理ある。
邦彦が引きこもりをやめれば、めでたく私は任務完了で報酬の10万円ゲットである。
でも、それでは負けたままなのだ。
ここでいったん縁が切れてしまえば、恋人でも友人でもない私は、この部屋を訪れる理由を失ってしまうのだ。
「わかったよ。勝ちゃいいんだろ。勝ちゃあ」
私は憮然として言った。
「ところでさ、あんたさっきから何してんの?」
「あ、これ」
邦彦が手元の何かを掲げて見せた。
「フィギュアだよ。美咲ちゃんそっくりなのをつくってみたんだ。アニメキャラのフィギュアをベースにしてね、手足を可動式にして、いろんなポーズを取らせて遊ぶんだ」
「やっぱ、おまえ、変態だわ」
私は邦彦の坊主頭を右足でふんづけた。
「さ、お人形さんごっこはそのへんにしといて、とっとと行くよ。第二回戦」
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