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第6章 アンアン魔界行
#86 アンアン、地底軍艦に乗る⑱
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やっとついた…。長かった…。
僕は、2体の巨大な石像を両側に配した両開きの大扉を見上げて、ほっと安堵の息をついた。
「開けるよ」
阿修羅が石像の太腿あたりに手をかざすと、重い軋みを上げて、扉が向こう側へと開き始めた。
メデューサの血を浴びたせいで、すでに玉も一ノ瀬も元に戻っている。
怪物の血液が石化を解除する解毒剤だったなんて、考えてみれば皮肉な話である。
阿修羅も知ってるなら先に言っといてくれればいいものを、と一瞬思ったけれど、どの道、怪物を倒さなければ血は手に入らないのだから、結果としては同じことだったろう。
そう思い直すことにした。
扉をくぐると、そこは無限に続いていそうならせん階段のてっぺんだった。
「ふえええ、ここを降りるのかい? エレベーターぐらいあっても、バチは当たらないと思うけど」
はるか下方に伸びる階段の行方に目を凝らし、一ノ瀬がぼやいた。
「軟弱なこと言わないの。蚊トンボ君は、2体もモンスターを倒したヒーローでしょ? ヒーローがエレベーターごときに頼ってどうするの?」
理屈に合わない気がするが、美少女阿修羅にヒーローと呼ばれて、一ノ瀬がとたんに相好を崩し、元気になった。
「そっか。そう言われてみれば、そうだよね。スー〇ーマンもウル〇ラマンも、エレベーターなんか、使わないもんね」
おい、比べる対象が違いすぎるだろうが。
「よっしゃあ、行くぞぉ!」
現金なもので、一ノ瀬はすっかりその気になり、真っ先に階段を駆け下りていく。
「あ、待ってくださあーい」
玉があとに続き、次が阿修羅、僕、そしてしんがりがアンアンだった。
それにしても、らせん階段を100回も回るのは、相当強烈な経験である。
まさに苦行としか言いようがない。
鬼監督率いるアメフト部の猛特訓レベルとでもいうべきか。
10回で膝が震え出し、50回で顎が出、下に着いた時には立っているのがやっとというありさまだった。
「到着!」
阿修羅の弾むような声にふと我に返ると、そこは工場の内部みたいな殺風景な空間だった。
真ん中でアームに支えられ、下向きに直立しているのが、どうやら噂の轟天号らしい。
先端がドリルになった宇宙船のような恰好をしている。
よくもまあ、ここまでパクったものだ。
東宝チャンピオン祭りの復刻版ポスターで見たアレに、瓜二つである。
「さ、入って入って」
船体に取り付けられた鉄梯子で、中に入った。
幸いコクピットはまだ水平になっていて、シートに座るのに苦労はしなかった。
阿修羅とアンアンが操縦席と副操縦席に座り、僕ら3人がその後ろに腰を落ちつけた。
「計器類異常なーし。みんな、シートベルト、締めてね」
阿修羅の指示を合図に、コクピットが前に回転し始めた。
ちょうど90度動いたところで止まったから、僕らは全員地面のほうを向くかたちになっている。
「さあ、いよいよ地獄界へ乗り込むよ! みんな、覚悟はいいかな? それじゃ、出発、進行!」
阿修羅がレバーを引いた。
機体がドスンと揺れ、スクリーン越しに地面が迫ってくるのが見えた。
ドリルが高速で回転し、その表面にずぶずぶとめり込んでいく。
こうして僕らは、ついに最終決戦の地、地獄界に突入するはずだったのだが…。
ところが、何を隠そう。
その前に、災難は、まだまだ続いたのである。
僕は、2体の巨大な石像を両側に配した両開きの大扉を見上げて、ほっと安堵の息をついた。
「開けるよ」
阿修羅が石像の太腿あたりに手をかざすと、重い軋みを上げて、扉が向こう側へと開き始めた。
メデューサの血を浴びたせいで、すでに玉も一ノ瀬も元に戻っている。
怪物の血液が石化を解除する解毒剤だったなんて、考えてみれば皮肉な話である。
阿修羅も知ってるなら先に言っといてくれればいいものを、と一瞬思ったけれど、どの道、怪物を倒さなければ血は手に入らないのだから、結果としては同じことだったろう。
そう思い直すことにした。
扉をくぐると、そこは無限に続いていそうならせん階段のてっぺんだった。
「ふえええ、ここを降りるのかい? エレベーターぐらいあっても、バチは当たらないと思うけど」
はるか下方に伸びる階段の行方に目を凝らし、一ノ瀬がぼやいた。
「軟弱なこと言わないの。蚊トンボ君は、2体もモンスターを倒したヒーローでしょ? ヒーローがエレベーターごときに頼ってどうするの?」
理屈に合わない気がするが、美少女阿修羅にヒーローと呼ばれて、一ノ瀬がとたんに相好を崩し、元気になった。
「そっか。そう言われてみれば、そうだよね。スー〇ーマンもウル〇ラマンも、エレベーターなんか、使わないもんね」
おい、比べる対象が違いすぎるだろうが。
「よっしゃあ、行くぞぉ!」
現金なもので、一ノ瀬はすっかりその気になり、真っ先に階段を駆け下りていく。
「あ、待ってくださあーい」
玉があとに続き、次が阿修羅、僕、そしてしんがりがアンアンだった。
それにしても、らせん階段を100回も回るのは、相当強烈な経験である。
まさに苦行としか言いようがない。
鬼監督率いるアメフト部の猛特訓レベルとでもいうべきか。
10回で膝が震え出し、50回で顎が出、下に着いた時には立っているのがやっとというありさまだった。
「到着!」
阿修羅の弾むような声にふと我に返ると、そこは工場の内部みたいな殺風景な空間だった。
真ん中でアームに支えられ、下向きに直立しているのが、どうやら噂の轟天号らしい。
先端がドリルになった宇宙船のような恰好をしている。
よくもまあ、ここまでパクったものだ。
東宝チャンピオン祭りの復刻版ポスターで見たアレに、瓜二つである。
「さ、入って入って」
船体に取り付けられた鉄梯子で、中に入った。
幸いコクピットはまだ水平になっていて、シートに座るのに苦労はしなかった。
阿修羅とアンアンが操縦席と副操縦席に座り、僕ら3人がその後ろに腰を落ちつけた。
「計器類異常なーし。みんな、シートベルト、締めてね」
阿修羅の指示を合図に、コクピットが前に回転し始めた。
ちょうど90度動いたところで止まったから、僕らは全員地面のほうを向くかたちになっている。
「さあ、いよいよ地獄界へ乗り込むよ! みんな、覚悟はいいかな? それじゃ、出発、進行!」
阿修羅がレバーを引いた。
機体がドスンと揺れ、スクリーン越しに地面が迫ってくるのが見えた。
ドリルが高速で回転し、その表面にずぶずぶとめり込んでいく。
こうして僕らは、ついに最終決戦の地、地獄界に突入するはずだったのだが…。
ところが、何を隠そう。
その前に、災難は、まだまだ続いたのである。
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