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第6章 アンアン魔界行
#90 アンアンとアンダーバベルの恐怖④
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崖の上にのぼると、何本もの尖塔に囲まれた教会の正面扉は開いていて、中からこんな声が聞こえてきた。
ーふんぐるい、むぐるうなふ、くとぅるう、るるいえ、うがふなぐる、ふたぐんー
「何だ? なんて言ってるんだ? 何語なんだ? お経にしては変だぞ」
一ノ瀬が、気味悪そうに頬を引きつらせた。
「教会でお経はないだろうけど」
岩陰から様子をうかがいながら、阿修羅が解説する。
「訳せば、こんなところかな。『死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり』。まあ、まずナイアルラトホテップを呼び出して、次にそのナイアルラトホテップにクトゥルフを召喚させようと、こういう段取りじゃない?」
「クトゥルフが出てくる前に、なんとかカタをつけたいもんだな」
右手のナックルのトゲを出したり引っ込めたりして、アンアンが言う。
「そだね。とにかくまず、宝石の奪取が先決だね」
岩陰に沿って、教会の内部が見える位置まで移動した。
おそるおそる首を突き出してみると、異様な光景が視界に飛び込んできた。
教会の中は、先の尖った三角形のフードをかぶり、身体全体をローブで覆った人影で埋め尽くされている。
まるでひと昔前のKKK団の集会みたいな感じである。
フードもローブも黒だから、まるで闇がうごめいているように見える。
そのうごめく闇のなかから、さっきから聞こえているあの呪文が沸き起こっているのだ。
信者たちは100人もいるだろうか。
そしてその眼が一斉に見つめているのは、祭壇に掲げられた巨大な首のない十字架だった。
十字架のTの字の中心に漆黒のダイヤモンドみたいなものがはまっているけど、あれがおそらくなんとかヘドロンなるパワーストーンなのだろう。
「戦法は?」
玉が短く阿修羅に訊いた。
「まず、あたしが突っ込んで戦端を開く。玉と元気君は、サブマシンガンで掩護して。信者たちをあたしたちが追い出している隙に、アンアンが宝石を奪う。以上」
「えーと、俺は?」
おどどと一ノ瀬がたずねた。
「蚊トンボ君は、ここで待ってて。木枯らしが吹いてるから、風邪ひかないように、傘差してていいからね」
「それだけ?」
「うん。とりあえず、今はそれだけ。また活躍してもらう時が来るかもしれないから、それまで英気を養っててほしいんだ」
さすが八方美人の阿修羅。
ものは言いようである。
「予備弾倉、装着完了」
制服の袖からサブマシンガンの銃口をのぞかせて、玉が言った。
仕方なく、僕も傘を開き、トリガーに人差し指をかけた。
「行くよ!」
ミニスカを翻し、飛び出す阿修羅。
「玉、元気君、レディ・ゴー!」
玉に遅れじと、 僕も走り出した。
冷たい木枯らしが頬をたたく。
教会の入口が近づいてきた。
鞭を振り回し、阿修羅が飛び込んでいく。
玉が左サイドに、僕が右サイドに展開し、サブマシンガンを撃ちまくる。
悲鳴を上げ、逃げまどう信者たち。
その頭上を、軽々とアンアンが飛び越えた。
アンアンの手が、漆黒の宝石に届こうとしたその時である。
突然、宝石が爆発して、白熱光が闇を吹き飛ばした。
「うわっ!」
爆風で飛ばされるアンアン。
光が薄れると、その後に長身の黒い影が現れた。
タキシードを身にまとった、鋭い眼をしたイケメン男子である。
目の周りを隠す、小さな仮面をつけている。
「私に何か用かな?」
含み笑いとともに、男ーナイアルラトホテップが、異様によく通る声でそう言った。
ーふんぐるい、むぐるうなふ、くとぅるう、るるいえ、うがふなぐる、ふたぐんー
「何だ? なんて言ってるんだ? 何語なんだ? お経にしては変だぞ」
一ノ瀬が、気味悪そうに頬を引きつらせた。
「教会でお経はないだろうけど」
岩陰から様子をうかがいながら、阿修羅が解説する。
「訳せば、こんなところかな。『死せるクトゥルー、ルルイエの館にて、夢見るままに待ちいたり』。まあ、まずナイアルラトホテップを呼び出して、次にそのナイアルラトホテップにクトゥルフを召喚させようと、こういう段取りじゃない?」
「クトゥルフが出てくる前に、なんとかカタをつけたいもんだな」
右手のナックルのトゲを出したり引っ込めたりして、アンアンが言う。
「そだね。とにかくまず、宝石の奪取が先決だね」
岩陰に沿って、教会の内部が見える位置まで移動した。
おそるおそる首を突き出してみると、異様な光景が視界に飛び込んできた。
教会の中は、先の尖った三角形のフードをかぶり、身体全体をローブで覆った人影で埋め尽くされている。
まるでひと昔前のKKK団の集会みたいな感じである。
フードもローブも黒だから、まるで闇がうごめいているように見える。
そのうごめく闇のなかから、さっきから聞こえているあの呪文が沸き起こっているのだ。
信者たちは100人もいるだろうか。
そしてその眼が一斉に見つめているのは、祭壇に掲げられた巨大な首のない十字架だった。
十字架のTの字の中心に漆黒のダイヤモンドみたいなものがはまっているけど、あれがおそらくなんとかヘドロンなるパワーストーンなのだろう。
「戦法は?」
玉が短く阿修羅に訊いた。
「まず、あたしが突っ込んで戦端を開く。玉と元気君は、サブマシンガンで掩護して。信者たちをあたしたちが追い出している隙に、アンアンが宝石を奪う。以上」
「えーと、俺は?」
おどどと一ノ瀬がたずねた。
「蚊トンボ君は、ここで待ってて。木枯らしが吹いてるから、風邪ひかないように、傘差してていいからね」
「それだけ?」
「うん。とりあえず、今はそれだけ。また活躍してもらう時が来るかもしれないから、それまで英気を養っててほしいんだ」
さすが八方美人の阿修羅。
ものは言いようである。
「予備弾倉、装着完了」
制服の袖からサブマシンガンの銃口をのぞかせて、玉が言った。
仕方なく、僕も傘を開き、トリガーに人差し指をかけた。
「行くよ!」
ミニスカを翻し、飛び出す阿修羅。
「玉、元気君、レディ・ゴー!」
玉に遅れじと、 僕も走り出した。
冷たい木枯らしが頬をたたく。
教会の入口が近づいてきた。
鞭を振り回し、阿修羅が飛び込んでいく。
玉が左サイドに、僕が右サイドに展開し、サブマシンガンを撃ちまくる。
悲鳴を上げ、逃げまどう信者たち。
その頭上を、軽々とアンアンが飛び越えた。
アンアンの手が、漆黒の宝石に届こうとしたその時である。
突然、宝石が爆発して、白熱光が闇を吹き飛ばした。
「うわっ!」
爆風で飛ばされるアンアン。
光が薄れると、その後に長身の黒い影が現れた。
タキシードを身にまとった、鋭い眼をしたイケメン男子である。
目の周りを隠す、小さな仮面をつけている。
「私に何か用かな?」
含み笑いとともに、男ーナイアルラトホテップが、異様によく通る声でそう言った。
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