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第6章 アンアン魔界行
#97 アンアンとアンダーバベルの恐怖⑪
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出会ったばかりの頃、アンアンに引き出された僕の特殊能力。
これまで何度か説明したと思うけど、それは”短時間逆行性タイムリープ能力”だ。
5秒だけ時間を巻き戻せるその力で、僕は今までに数度、アンアンと一ノ瀬の命を救ったことがある。
5秒だけのタイムリープなんて屁みたいなもので、ほとんどの場合は役立たずなのだが、時と場合によってはピンポイントでうまくいく場合があるのだ。
僕が今回同行を申し出たのは、いざとなったら、またその力でアンアンを救えるかもしれないと思ったからだった。
アンアンが命を落としても、5秒以内ならやり直せる。
ただしその場合、僕がアンアンに触れられるポジションに居る必要がある。
とまあ、そういうわけだ。
もちろん、時間旅行者の端くれとして、僕とて根源的なパラドックスに気づいていないわけではない。
僕がこの力で他人の命を救うたび、歴史が書き換えられていく。
そのひずみが積もり積もって最終的にどうなるかは、それこそ、神のみぞ知る、なのである。
「そうだな。ありがとう」
断られるかと思いきや、アンアンは意外に素直だった。
僕の襟首をつまんで持ち上げると、ひょいと首のうしろに乗せてくれた。
20メートル上空から見下ろす絶景は、まずは突き出た見事なアンアンのロケットおっぱいである。
先っちょしか布に覆われていないため、ものすごく悩ましい。
「しっかりつかまってろ。何があっても離すんじゃない」
うなじの辺りにしがみついた僕に向かって、アンアンが声のトーンを落として忠告した。
「大丈夫。アンアンひとりじゃ逝かせないよ」
足元で阿修羅が叫んだかと思うと、スルスルとセーラー服ごと大きくなった。
そうだ。
阿修羅も巨大化できるのを忘れていた。
これはひょっとして楽勝かも。
「おおおおおおっ!」
一ノ瀬が鼻を押さえて転倒したのは、たぶん真下から巨大阿修羅のスカートの中をガン見したからに違いない。
押さえた手の指の間から噴水のように鼻血が吹き上がっている様子から、遠目にもそれとわかった。
「じゃあ、玉は地上から迎撃できるよう、核ミサイルの準備しておきますね」
「それはいいけど、わたしがゴーサイン出すまでは、絶対に撃たないで」
地面に四つん這いになった玉に向かって、あわてた口調で阿修羅が言った。
「できればそれはなしで済ませたいからね」
まあ、そりゃそうだろう。
唯一の被爆国の住人たる僕としても、核の使用はたとえ相手が何であれ、おいそれと認められるものではない。
「じゃ、本当にバトルでいいんですね? 後で後悔したって知りませんよ!」
なんだか楽しそうにナイアルラホテップが叫び、軽やかに後ろに飛びのいた。
と。
地響きとともに、クトゥルフの巨体が動き出した。
全身から生えた触手が、ぐわっと一斉に立ち上がる。
しゅるしゅるとすごい速さで伸びてくる蛇のような触手の群れ。
その奥で光るサーチライトのような不気味な眼。
「こんなもの!」
阿修羅が腰だめの位置から、右腕を旋回させ、スカートを翻して、素早く鞭を振るった。
千切れ飛ぶ触手たち。
「今だよ、アンアン!」
「任せろ」
アンアンが動き、僕は振り落とされじと必死で首根っこにしがみついた。
ナックルを嵌めたこぶしが持ち上がり、唸りを上げて怪物の目玉めがけて振り下ろされる。
が。
そこまでだった。
怪物の顔面にめり込む寸前、カンっと乾いた音がして、アンアンの一撃がいともたやすく跳ね返された。
一瞬、こぶしが命中したあたりに、透明な格子模様が浮かび上がり、すぐに消えたのだ。
「くっ!」
大きく飛び退って、アンアンがうめいた。
「バリアだ。こいつ、バリアを張ってやがる!」
これまで何度か説明したと思うけど、それは”短時間逆行性タイムリープ能力”だ。
5秒だけ時間を巻き戻せるその力で、僕は今までに数度、アンアンと一ノ瀬の命を救ったことがある。
5秒だけのタイムリープなんて屁みたいなもので、ほとんどの場合は役立たずなのだが、時と場合によってはピンポイントでうまくいく場合があるのだ。
僕が今回同行を申し出たのは、いざとなったら、またその力でアンアンを救えるかもしれないと思ったからだった。
アンアンが命を落としても、5秒以内ならやり直せる。
ただしその場合、僕がアンアンに触れられるポジションに居る必要がある。
とまあ、そういうわけだ。
もちろん、時間旅行者の端くれとして、僕とて根源的なパラドックスに気づいていないわけではない。
僕がこの力で他人の命を救うたび、歴史が書き換えられていく。
そのひずみが積もり積もって最終的にどうなるかは、それこそ、神のみぞ知る、なのである。
「そうだな。ありがとう」
断られるかと思いきや、アンアンは意外に素直だった。
僕の襟首をつまんで持ち上げると、ひょいと首のうしろに乗せてくれた。
20メートル上空から見下ろす絶景は、まずは突き出た見事なアンアンのロケットおっぱいである。
先っちょしか布に覆われていないため、ものすごく悩ましい。
「しっかりつかまってろ。何があっても離すんじゃない」
うなじの辺りにしがみついた僕に向かって、アンアンが声のトーンを落として忠告した。
「大丈夫。アンアンひとりじゃ逝かせないよ」
足元で阿修羅が叫んだかと思うと、スルスルとセーラー服ごと大きくなった。
そうだ。
阿修羅も巨大化できるのを忘れていた。
これはひょっとして楽勝かも。
「おおおおおおっ!」
一ノ瀬が鼻を押さえて転倒したのは、たぶん真下から巨大阿修羅のスカートの中をガン見したからに違いない。
押さえた手の指の間から噴水のように鼻血が吹き上がっている様子から、遠目にもそれとわかった。
「じゃあ、玉は地上から迎撃できるよう、核ミサイルの準備しておきますね」
「それはいいけど、わたしがゴーサイン出すまでは、絶対に撃たないで」
地面に四つん這いになった玉に向かって、あわてた口調で阿修羅が言った。
「できればそれはなしで済ませたいからね」
まあ、そりゃそうだろう。
唯一の被爆国の住人たる僕としても、核の使用はたとえ相手が何であれ、おいそれと認められるものではない。
「じゃ、本当にバトルでいいんですね? 後で後悔したって知りませんよ!」
なんだか楽しそうにナイアルラホテップが叫び、軽やかに後ろに飛びのいた。
と。
地響きとともに、クトゥルフの巨体が動き出した。
全身から生えた触手が、ぐわっと一斉に立ち上がる。
しゅるしゅるとすごい速さで伸びてくる蛇のような触手の群れ。
その奥で光るサーチライトのような不気味な眼。
「こんなもの!」
阿修羅が腰だめの位置から、右腕を旋回させ、スカートを翻して、素早く鞭を振るった。
千切れ飛ぶ触手たち。
「今だよ、アンアン!」
「任せろ」
アンアンが動き、僕は振り落とされじと必死で首根っこにしがみついた。
ナックルを嵌めたこぶしが持ち上がり、唸りを上げて怪物の目玉めがけて振り下ろされる。
が。
そこまでだった。
怪物の顔面にめり込む寸前、カンっと乾いた音がして、アンアンの一撃がいともたやすく跳ね返された。
一瞬、こぶしが命中したあたりに、透明な格子模様が浮かび上がり、すぐに消えたのだ。
「くっ!」
大きく飛び退って、アンアンがうめいた。
「バリアだ。こいつ、バリアを張ってやがる!」
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