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第6章 アンアン魔界行
#129 アンアン、無間地獄に堕ちる⑤
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砂埃を蹴立てて大群が接近してくるにつれ、その細部が見えてきた。
構成人員は、玉の指摘通り、全員鬼である。
赤いのもいれば、青いのも黒いのもいる。
角も1本だけの者や、2本生えている者もいる。
共通点は、誰もが毛皮の腰布をまとい、右手にこん棒みたいな武器を持っていることだ。
いや、こん棒というより、獣の太腿の骨みたいである。
あるいは人間の骨なのか。
まあ、どっちでもいいけど、優に1000匹はいると見た。
うちの高校で、全校生徒が体育館に集合した時よりも多いから、およそそのくらいが妥当な線だろう。
しかし、いくら相手が原始的な武器しか持っていないとはいえ、1000匹対6人である。
普通のいくさなら、とても勝ち目はないと撤退するところだろうけど、うちのパーティの面々の頭には、その選択肢はなさそうだった。
敵の軍勢が前方50メートルほどまで迫ると、まず阿修羅が飛び出した。
「でえええええええっ!」
走りながら鞭を一閃しただけで、先頭集団の首が一気に跳ね飛んだ。
これで10匹は逝ったと思う。
阿修羅が飛びのくと、第2集団めがけて玉がサブマシンガンの弾丸を打ち込んだ。
雨あられと降る弾丸の嵐に、血まみれになって更に10匹が絶命した。
「次は私が」
すっくと敵の前に立ったのは、タキシード姿もさっそうとしたナイアルラトホテップだ。
何をするのかと見ていると、ささっと杖を動かし、空中に魔法陣を描いた。
そして、魔法陣の裏側から、大きく息を吐き出した。
仰天したのは。その魔法陣から、突然炎が噴き出したことである。
邪神の吐息が、魔法陣によって紅蓮の炎に変換されたのだ。
予期せぬ火炎放射器の出現で、また数十人の鬼どもが丸焦げになった。
「元気、あたしらも行くぞ」
「あ、ああ」
アンアンに手を取られて、前線に出る。
スパイ傘を構える僕の横で、襲い来る鬼たちをアンアンが得意の回し蹴りとパンチで粉砕する。
この状況で肉弾戦は不利かと思ったけど、ことアンアンに限ってはそんなことはない。
リーチが長く動きが速いので、疾風の如くアンアンが駆けぬけた後は死骸の山だ。
負けてはいられないと、僕もトリガーを引き、弾丸を撒き散らす。
あ、言い忘れたけど、一ノ瀬は僕の背中にしがみついて、出来の悪いクッションの役目を果たしてくれているところだ。
そんなわけだから、僕らはめちゃくちゃ強かった。
阿修羅の鞭。
ナイアルラトホテップの火炎放射。
アンアンの体術。
僕と玉のサブマシンガン。
まさに無敵である。
開幕10分もしないうちに敵の数は半分以下に減り、30分も経つ頃には、とうとう城壁を守る最終防衛ラインの一団しか残っていなかった。
「ひと息に突っ込みますか!」
玉が意気揚々と叫んだ時、
「待て」
アンアンが腕を伸ばして僕らを制した。
「門の中から、何か出てくるぞ」
影が動いた。
本当だ。
僕はぽかんと口を開けた。
雑魚どもと違って、今度のは、かなり大きいぞ。
「あれはおそらく、四天王の最後のひとり」
アンアンの隣で息を弾ませ、阿修羅が言った。
「最後のひとり?」
玉が復唱した。
「そう、4人目の四天王、その名も、酒呑童女」
「ん?」
一瞬、聞き間違えたのかと思った。
「それ、酒呑童子の間違いじゃないのか?」
聞き返すと、重々しい口調で阿修羅が答えた。
「彼はもう引退してるわ。なんせ平安時代から現役だったんだもんね。酒呑童女は彼の娘。親父より気が短いって評判だから、みんなくれぐれも気をつけて」
構成人員は、玉の指摘通り、全員鬼である。
赤いのもいれば、青いのも黒いのもいる。
角も1本だけの者や、2本生えている者もいる。
共通点は、誰もが毛皮の腰布をまとい、右手にこん棒みたいな武器を持っていることだ。
いや、こん棒というより、獣の太腿の骨みたいである。
あるいは人間の骨なのか。
まあ、どっちでもいいけど、優に1000匹はいると見た。
うちの高校で、全校生徒が体育館に集合した時よりも多いから、およそそのくらいが妥当な線だろう。
しかし、いくら相手が原始的な武器しか持っていないとはいえ、1000匹対6人である。
普通のいくさなら、とても勝ち目はないと撤退するところだろうけど、うちのパーティの面々の頭には、その選択肢はなさそうだった。
敵の軍勢が前方50メートルほどまで迫ると、まず阿修羅が飛び出した。
「でえええええええっ!」
走りながら鞭を一閃しただけで、先頭集団の首が一気に跳ね飛んだ。
これで10匹は逝ったと思う。
阿修羅が飛びのくと、第2集団めがけて玉がサブマシンガンの弾丸を打ち込んだ。
雨あられと降る弾丸の嵐に、血まみれになって更に10匹が絶命した。
「次は私が」
すっくと敵の前に立ったのは、タキシード姿もさっそうとしたナイアルラトホテップだ。
何をするのかと見ていると、ささっと杖を動かし、空中に魔法陣を描いた。
そして、魔法陣の裏側から、大きく息を吐き出した。
仰天したのは。その魔法陣から、突然炎が噴き出したことである。
邪神の吐息が、魔法陣によって紅蓮の炎に変換されたのだ。
予期せぬ火炎放射器の出現で、また数十人の鬼どもが丸焦げになった。
「元気、あたしらも行くぞ」
「あ、ああ」
アンアンに手を取られて、前線に出る。
スパイ傘を構える僕の横で、襲い来る鬼たちをアンアンが得意の回し蹴りとパンチで粉砕する。
この状況で肉弾戦は不利かと思ったけど、ことアンアンに限ってはそんなことはない。
リーチが長く動きが速いので、疾風の如くアンアンが駆けぬけた後は死骸の山だ。
負けてはいられないと、僕もトリガーを引き、弾丸を撒き散らす。
あ、言い忘れたけど、一ノ瀬は僕の背中にしがみついて、出来の悪いクッションの役目を果たしてくれているところだ。
そんなわけだから、僕らはめちゃくちゃ強かった。
阿修羅の鞭。
ナイアルラトホテップの火炎放射。
アンアンの体術。
僕と玉のサブマシンガン。
まさに無敵である。
開幕10分もしないうちに敵の数は半分以下に減り、30分も経つ頃には、とうとう城壁を守る最終防衛ラインの一団しか残っていなかった。
「ひと息に突っ込みますか!」
玉が意気揚々と叫んだ時、
「待て」
アンアンが腕を伸ばして僕らを制した。
「門の中から、何か出てくるぞ」
影が動いた。
本当だ。
僕はぽかんと口を開けた。
雑魚どもと違って、今度のは、かなり大きいぞ。
「あれはおそらく、四天王の最後のひとり」
アンアンの隣で息を弾ませ、阿修羅が言った。
「最後のひとり?」
玉が復唱した。
「そう、4人目の四天王、その名も、酒呑童女」
「ん?」
一瞬、聞き間違えたのかと思った。
「それ、酒呑童子の間違いじゃないのか?」
聞き返すと、重々しい口調で阿修羅が答えた。
「彼はもう引退してるわ。なんせ平安時代から現役だったんだもんね。酒呑童女は彼の娘。親父より気が短いって評判だから、みんなくれぐれも気をつけて」
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