16 / 249
第1章 カロン
#15 襲撃⑥
しおりを挟む
大食漢だとは思ってはいたけど、まさかこれほどとは…。
というのが、マックで食事を終えた直後の僕の感想だった。
テーブルの上は、山積みになったゴミ。
なんとアンアンは、メニューにある全種類のハンバーガーを注文し、ひとりで平らげてしまったのだ。
かかった時間は、5分ほど。
正直、早食い世界選手権でも優勝できるほどの記録だろう。
「まあまあだったな」
3杯目のコーラをがぶがぶ飲み、ゲップをひとつして、満足げにアンアンが言った。
「おまえさ、お金の使い方、間違ってると思う」
僕はやっとビッグマックをひとつ食べ終えたところだった。
「いくら大金が入ったからって、ふつうそれをマックで使うか?」
「悪いか」
アンアンは僕の非難もどこ吹く風で、おいしそうにポテトをかじっている。
「前から食べたかったんだから、しょうがない」
「だけど、この金額ならもっとおいしいものが他に…」
「うるさいな。焼肉だの生肉だのは正直魔界で食べ飽きてるんだ。ゆうべ元気がコンビニで買ってきてくれたゴミを食べた時、あたしは気づいたのさ。人間界のジャンクフードは天下一品だって」
「ゴミっていうな。カップ麺や菓子パンは俺の主食だぞ」
「そうだな。悪かった。今ではおまえがうらやましいよ。こんなうまいものを毎日食べられて」
「まあ、焼きゴキブリや生ナメクジよりはましだけど…」
でも、マックのハンバーガーって、そんなにいくつも食べられるほどうまいだろうか?
「アレはあれで珍味だと思うが」
「あのさ。アンアン、おまえ、きょうから台所に立つの禁止な。食事の支度はすべて俺がやるから」
おぞましい体験を思い出し、あわてて僕は言った。
「そうか、悪いな」
アンアンはまた可愛らしくゲップをすると、すっくと立ち上がった。
「よし。腹もくちくなったことだし、買い物に行こう。まずはあたしの服。それから、あれも買わなきゃな」
「あれって?」
「あたしが臨時の通路に利用したあの箱だよ。火山に捨ててきたやつ。なんて言ったっけ?」
「冷蔵庫のことか?」
「そうそれ。代金は全部あたしが持つから心配するな」
なるほど。確かに冷蔵庫がないのはこの先困る。
「ああ、それから、本当におれんちに住む気なら、インテリアとか小物もそろえた方がいいかもな。1階は使ってないから、廃屋みたいだし。少しは女の子らしい部屋に模様替えしたらどうだ?」
「女の子らしい部屋か」
アンアンが巨乳の下で腕を組み、眉根を寄せてしかめっ面をした。
「難しいことを言うな、何も考えつかないぞ」
「カーテンやカーペットの色を変えるとかさ、ぬいぐるみをそろえるとかさ」
「ぬいぐるみ? 剥製や木乃伊じゃだめか?」
「自分の部屋をお化け屋敷にしてどうする」
「そうか。それもそうだな。学校に通うとなると、あたしにも同性の友人ができるかもしれないし」
「学校? いつから?」
聞き捨てならぬひと言に、僕はぽかんと口を開けた。
「明日からに決まってるだろ。今頃はもう手続き済みだ。校長の頭の中にあたしのデータ、送っといたから」
「ど、どこの学校だよ」
嫌な予感がする。
そしてその予感は、次の瞬間、アンアンの爽快な笑顔に見事に裏打ちされてしまった。
ニカッと笑って、アンアンは軽く言ってのけたのだ。
「喜べ。県立若葉台高校だ。しかも、元気と同じ1年1組にしてもらう予定だぞ」
というのが、マックで食事を終えた直後の僕の感想だった。
テーブルの上は、山積みになったゴミ。
なんとアンアンは、メニューにある全種類のハンバーガーを注文し、ひとりで平らげてしまったのだ。
かかった時間は、5分ほど。
正直、早食い世界選手権でも優勝できるほどの記録だろう。
「まあまあだったな」
3杯目のコーラをがぶがぶ飲み、ゲップをひとつして、満足げにアンアンが言った。
「おまえさ、お金の使い方、間違ってると思う」
僕はやっとビッグマックをひとつ食べ終えたところだった。
「いくら大金が入ったからって、ふつうそれをマックで使うか?」
「悪いか」
アンアンは僕の非難もどこ吹く風で、おいしそうにポテトをかじっている。
「前から食べたかったんだから、しょうがない」
「だけど、この金額ならもっとおいしいものが他に…」
「うるさいな。焼肉だの生肉だのは正直魔界で食べ飽きてるんだ。ゆうべ元気がコンビニで買ってきてくれたゴミを食べた時、あたしは気づいたのさ。人間界のジャンクフードは天下一品だって」
「ゴミっていうな。カップ麺や菓子パンは俺の主食だぞ」
「そうだな。悪かった。今ではおまえがうらやましいよ。こんなうまいものを毎日食べられて」
「まあ、焼きゴキブリや生ナメクジよりはましだけど…」
でも、マックのハンバーガーって、そんなにいくつも食べられるほどうまいだろうか?
「アレはあれで珍味だと思うが」
「あのさ。アンアン、おまえ、きょうから台所に立つの禁止な。食事の支度はすべて俺がやるから」
おぞましい体験を思い出し、あわてて僕は言った。
「そうか、悪いな」
アンアンはまた可愛らしくゲップをすると、すっくと立ち上がった。
「よし。腹もくちくなったことだし、買い物に行こう。まずはあたしの服。それから、あれも買わなきゃな」
「あれって?」
「あたしが臨時の通路に利用したあの箱だよ。火山に捨ててきたやつ。なんて言ったっけ?」
「冷蔵庫のことか?」
「そうそれ。代金は全部あたしが持つから心配するな」
なるほど。確かに冷蔵庫がないのはこの先困る。
「ああ、それから、本当におれんちに住む気なら、インテリアとか小物もそろえた方がいいかもな。1階は使ってないから、廃屋みたいだし。少しは女の子らしい部屋に模様替えしたらどうだ?」
「女の子らしい部屋か」
アンアンが巨乳の下で腕を組み、眉根を寄せてしかめっ面をした。
「難しいことを言うな、何も考えつかないぞ」
「カーテンやカーペットの色を変えるとかさ、ぬいぐるみをそろえるとかさ」
「ぬいぐるみ? 剥製や木乃伊じゃだめか?」
「自分の部屋をお化け屋敷にしてどうする」
「そうか。それもそうだな。学校に通うとなると、あたしにも同性の友人ができるかもしれないし」
「学校? いつから?」
聞き捨てならぬひと言に、僕はぽかんと口を開けた。
「明日からに決まってるだろ。今頃はもう手続き済みだ。校長の頭の中にあたしのデータ、送っといたから」
「ど、どこの学校だよ」
嫌な予感がする。
そしてその予感は、次の瞬間、アンアンの爽快な笑顔に見事に裏打ちされてしまった。
ニカッと笑って、アンアンは軽く言ってのけたのだ。
「喜べ。県立若葉台高校だ。しかも、元気と同じ1年1組にしてもらう予定だぞ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
85
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる