夜通しアンアン

第1章 カロン

#20 対決

　デモニック・メタモルフォーゼ？

　なんだそりゃ？

　僕の疑問をよそに、びりびりと大気が振動した。

　と思うと、アンアンの姿が光の微粒子に包まれた。

「いいいいいいいいいっ！」

　咆哮だけ残して、光の渦の中にアンアンの姿が消えていく。

　そして、その光の粒子がらせんを描き、極太のレーザー光線となって宙を切り裂いた。

　次の瞬間、パンっと爆発が起こると、頭上に信じがたいものがそびえ立っていた。

　たくましい2本の足。

　はるか高みでひるがえるミニひだスカート。

　もろ見えのパンティ。

　そう。

　巨大化したアンアンである。

　しかも、よせと言ったのに、こともあろうにTバックだ。

　だから発達した丸いヒップが、巨大な桃のように丸出しだ。

「あ、アンアン、おまえまで…」

　僕は途方に暮れた。

　アンアンの身長は、今や30メートルは優にありそうだ。

　巨大化したまま屋上に立っているから、目の前のカロンを見下ろす格好になっている。

「このくらい、あたしにだってできるのさ。まあ、見てな」

　不敵に笑って、アンアンが言う。

「どうでもいいけどさ、おまえ、パンツ見えてるぜ。それに、なんでセーラー服や下着まで大きくなってる？」

　ふつう、体が大きくなったら着ているものもはじけ飛ぶはずである。

　本来なら、アンアンはオールヌードになっているべきではないのか。

「変身のたびに服を破って裸になってたら、身がもたないだろう。だから着てるものも一緒に大きくできるのさ」

「小癪なガキめが！　あくまでも逆らう気だな！」

　カロンが歯ぎしりした。

「あくまであたしは悪魔なんでね」

　アンアンはしょうもない洒落を口にしたかと思うと、ぐっと右腕を肩の後ろまで引き絞った。

　ふと見ると、こぶしに鋼鉄のナックルみたいな武器がはまっている。

　とげとげの突き出た、殴られたら見るからに痛そうな凶器である。

「ガアッ！」

　両腕を広げ、カロンがアンアンに襲いかかった。

「ディメンション・クラーッシュ！」

　アンアンが叫んだ。

　炎を噴き出し、その鉄拳が迫りくるカロンの顔面を捉えた。

　どーん！

　とすごい音がして、

「ぐあああああああっ！」

　カロンの巨体が、吹っ飛んだ。

　みるみる小さくなって行く。

　そして、パリンと空間をつき破り、どこへともなく消えていってしまった。

　なんという破壊力。

　こうなると、もう…。

　化け物はカロンではない。

　間違いなく、アンアンのほうだ。

　僕はへなへなとその場にへたりこんだ。

「ふふ。これで静かになった」

　アンアンが僕を見下ろし、にっと笑って言った。

「たっぷりデートが楽しめそうだぞ。な、元気」