89 / 249
第5章 見えない侵略者
#6 イケメン阿修羅
しおりを挟む
こうして、アンアンに代わり、阿修羅と僕の共同生活が始まった。
といっても、色恋沙汰に発展したわけではない。
やっぱりあれは計画的犯行だったらしく、アンアンが出ていくと阿修羅は僕をダーリンと呼ばなくなった。
いや、それどころか、男になった。
阿修羅の第2人格が現われたのである。
アンアン家出の翌日、僕と阿修羅は1階のキッチンテーブルをはさんで向かい合っていた。
テーブルの上にはポテトチップスとコーラ。
ちょうど、夕食代わりに宅配で頼んだピザを食べ終えたところだった。
ちなみに阿修羅は、予想通り、男になると、超がつくほどのイケメンである。
ジャ〇ーズも青ざめるほどの美少年、といったらいいだろうか。
こんなのが学校に現れたら、全校の女子が発狂するのではないかと思えるほどのかっこよさだ。
ただ幸い、僕は男に興味はないので、いくら美形がひとつ屋根の下に居ても、BL的展開には陥らなかった。
むしろ、美少女阿修羅と一緒にいるより、こっちのほうが精神的に楽だという気がした。
「いやはや、まさかねえ、アンアンがあんなに過激に反応するとは、ちょっとばかり、想定外だったな」
ポテチをぽりぽりかじりながら、けだるそうな口調で阿修羅がぼやいた。
「って、おまえ、いったい全体、何するつもりだったんだよ?」
いまだ腹立ちが収まらぬ僕は、この長髪の美少年に食ってかかった。
この日、僕らは朝から晩まで、足を棒にしてアンアンを探し歩いていたのである。
「いや、だからさ、おまえと恋仲になったとみせかけてアンアンにショックを与え、失恋で沈んでいるところに男に変身した俺がやさしい言葉をかけて篭絡する、とまあ、こういう手はずだったんだがな」
ぽりぽりと頭をかきながら、阿修羅が弁解した。
「はあ? そんな一人二役がばれないで通用すると思ってたのか? おまえ、男になっても、どう見たって阿修羅のままじゃないか。そんな計画、うまくいくはずがないって」
「そうか? そんなはずないんだけどな。まあ、見てろ。どっちがアンアンを見つけるか、早いもの勝ちだ。今のアンアンは、おそらく愛に飢えている。俺のこの美貌とやさしさに触れれば、もうイチコロだろうよ」
「勝手にしろよ。俺は俺で、アンアンを探すから」
「探してどうする? アンアンはおまえに裏切られたと思い込んでるぞ。あれであいつは古風な女なんだ。しかも頑固で思い込みが強い。おまえを許す可能性は100パーセントないと見ていい」
「なんだと? だいたい、誰のせいでそうなったと思ってるんだよ!」
「俺のせい、といいたいのか? そうかな? もともとおまえがアンアンを放置してたのが悪いんじゃないか? 同じ家で1か月も一緒に暮らしながら、キスもろくにしてもらえなかったら、そりゃ、女は嫌われてると思うんじゃないかな?」
さすがイケメンだけあって、阿修羅は口の減らないやつだった。
顔でも足の長さでも討論でも負けた僕は、もう、引き下がらざるを得なかった。
が、意外だったのは、阿修羅の次のひと言である。
「まあ、アンアンのことも気になるが、それより元気、ひとつまずいことがある」
「まずいこと? これ以上、何が?」
「6番目の候補者が、こっちの世界に来ている」
深刻な表情で、仰天するようなスクープを口にする阿修羅。
「なんだって?」
僕は目を剥いた。
アンアンの6人の花婿候補のうち、阿修羅は5番目である。
そうだ。
考えてみれば、阿修羅のあとに、もうひとり残っているわけだ。
「事態がなかなか進まないので、どうやら業を煮やしたらしい」
「どうしてわかるんだ? おまえを差し置いて、その、6番目がこっちに来てるってことが?」
「実は今朝のことだ。俺の女物パンティが全部盗まれた」
真面目な顔で、阿修羅が言った。
「100枚のパンティが、一夜にして消えたのだ。だから俺は、男にならざるを得なかった」
「はあ? それが、なんで?」
僕はあっけにとられた。
「前にもアンアンのブラがなくなったことがある。大方,下着泥棒の仕業だろう」
「100枚一度というのは、プロでも無理だ。俺は眠りが浅いからな。だからこれは間違いなく、あいつからの挑戦状なんだ」
「あいつって?」
阿修羅が冷徹な目で僕を見た。
「そうだ。聞いて驚くな。アンアンの6番目の花婿候補者。その名は」
「その名は?」
「一寸法師だよ」
といっても、色恋沙汰に発展したわけではない。
やっぱりあれは計画的犯行だったらしく、アンアンが出ていくと阿修羅は僕をダーリンと呼ばなくなった。
いや、それどころか、男になった。
阿修羅の第2人格が現われたのである。
アンアン家出の翌日、僕と阿修羅は1階のキッチンテーブルをはさんで向かい合っていた。
テーブルの上にはポテトチップスとコーラ。
ちょうど、夕食代わりに宅配で頼んだピザを食べ終えたところだった。
ちなみに阿修羅は、予想通り、男になると、超がつくほどのイケメンである。
ジャ〇ーズも青ざめるほどの美少年、といったらいいだろうか。
こんなのが学校に現れたら、全校の女子が発狂するのではないかと思えるほどのかっこよさだ。
ただ幸い、僕は男に興味はないので、いくら美形がひとつ屋根の下に居ても、BL的展開には陥らなかった。
むしろ、美少女阿修羅と一緒にいるより、こっちのほうが精神的に楽だという気がした。
「いやはや、まさかねえ、アンアンがあんなに過激に反応するとは、ちょっとばかり、想定外だったな」
ポテチをぽりぽりかじりながら、けだるそうな口調で阿修羅がぼやいた。
「って、おまえ、いったい全体、何するつもりだったんだよ?」
いまだ腹立ちが収まらぬ僕は、この長髪の美少年に食ってかかった。
この日、僕らは朝から晩まで、足を棒にしてアンアンを探し歩いていたのである。
「いや、だからさ、おまえと恋仲になったとみせかけてアンアンにショックを与え、失恋で沈んでいるところに男に変身した俺がやさしい言葉をかけて篭絡する、とまあ、こういう手はずだったんだがな」
ぽりぽりと頭をかきながら、阿修羅が弁解した。
「はあ? そんな一人二役がばれないで通用すると思ってたのか? おまえ、男になっても、どう見たって阿修羅のままじゃないか。そんな計画、うまくいくはずがないって」
「そうか? そんなはずないんだけどな。まあ、見てろ。どっちがアンアンを見つけるか、早いもの勝ちだ。今のアンアンは、おそらく愛に飢えている。俺のこの美貌とやさしさに触れれば、もうイチコロだろうよ」
「勝手にしろよ。俺は俺で、アンアンを探すから」
「探してどうする? アンアンはおまえに裏切られたと思い込んでるぞ。あれであいつは古風な女なんだ。しかも頑固で思い込みが強い。おまえを許す可能性は100パーセントないと見ていい」
「なんだと? だいたい、誰のせいでそうなったと思ってるんだよ!」
「俺のせい、といいたいのか? そうかな? もともとおまえがアンアンを放置してたのが悪いんじゃないか? 同じ家で1か月も一緒に暮らしながら、キスもろくにしてもらえなかったら、そりゃ、女は嫌われてると思うんじゃないかな?」
さすがイケメンだけあって、阿修羅は口の減らないやつだった。
顔でも足の長さでも討論でも負けた僕は、もう、引き下がらざるを得なかった。
が、意外だったのは、阿修羅の次のひと言である。
「まあ、アンアンのことも気になるが、それより元気、ひとつまずいことがある」
「まずいこと? これ以上、何が?」
「6番目の候補者が、こっちの世界に来ている」
深刻な表情で、仰天するようなスクープを口にする阿修羅。
「なんだって?」
僕は目を剥いた。
アンアンの6人の花婿候補のうち、阿修羅は5番目である。
そうだ。
考えてみれば、阿修羅のあとに、もうひとり残っているわけだ。
「事態がなかなか進まないので、どうやら業を煮やしたらしい」
「どうしてわかるんだ? おまえを差し置いて、その、6番目がこっちに来てるってことが?」
「実は今朝のことだ。俺の女物パンティが全部盗まれた」
真面目な顔で、阿修羅が言った。
「100枚のパンティが、一夜にして消えたのだ。だから俺は、男にならざるを得なかった」
「はあ? それが、なんで?」
僕はあっけにとられた。
「前にもアンアンのブラがなくなったことがある。大方,下着泥棒の仕業だろう」
「100枚一度というのは、プロでも無理だ。俺は眠りが浅いからな。だからこれは間違いなく、あいつからの挑戦状なんだ」
「あいつって?」
阿修羅が冷徹な目で僕を見た。
「そうだ。聞いて驚くな。アンアンの6番目の花婿候補者。その名は」
「その名は?」
「一寸法師だよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
(第二回きずな児童書大賞で奨励賞を受賞しました)
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる