夜通しアンアン

戸影絵麻

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第5章 見えない侵略者

#7 トラップ阿修羅

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「一寸法師だって?」
 思わず吹いた。
 それが6番目?
「ふつうさ、ラスボスって、一番強いやつがなるんじゃないのか? 三途の川の渡し守、蠅の王、堕天使、クトゥルフの魔神、破壊神の次が、なんで日本昔話になるんだよ」
 だって、一寸法師なんて、どう考えてもHP少なすぎだろ?
 僕の抗議に、
「俺が知るかよ。とにかく6番目はあいつなんだ。アンダーバベルでたまに見かけたが、目立たないチンケな野郎だよ。もっとも、目立たないというより、ちっこすぎて見えないってのがほんとなんだけどな」
 などとほざいて、阿修羅がくっくと笑った。
「じゃ、ほっとけばいいんじゃないのか。そんな無害なやつならさ」
「やつが無害だという証拠はどこにもない。案外、すごい能力を持っているかもしれん。ただちっこすぎで、よく見えないだけでな」
「とにかく、おまえの推理が正しければ、その一寸法師とやらは、この家の中に居るというんだな?」
「たぶん。おそらく俺のパンティで、この家のどこかに巣作りでもしてるんだろう」
「パンティで巣? なんだよそれ」
「というわけだ。だから元気、まずは俺を手伝え。アンアン争奪戦はその後だ。先に邪魔な一寸法師を成敗しよう」
「まあ、それはいいけど…。で、どうするんだ?」
「この家中に、罠を仕掛ける。いわばトラップというやつだ。近所にホームセンターはないか?」
「あるけど、一寸法師用のトラップが、そんなところに売っているのか?」
「たぶん。まあ、探してみよう。資金は割り勘だ。えさ代も必要だしな」

 というわけで、阿修羅が買ってきたのは、昔ながらの金網式ネズミ捕り10個だった。
 中にえさをつるすフックがあり、それをネズミが引っ張ると落とし戸が閉まるというあれである。
「こんなのに引っかかるのか? 一寸法師といえども、アンアンに求婚するからには、魔界の貴公子のひとりなんだろう?」
 半信半疑でたずねると、
「なあに、魔界の住人なんて、俺以外はたいてい馬鹿さ。前の前のサマエルも、この前のダゴンもそうだっただろう? 魔人というのは、特殊能力を持っている分、自信過剰気味で己の欲望優先なんだ。力で何とでもなると思ってるから、ほとんど何も考えてないんだよ。その意味では、頭の出来は人間のほうがよっぽどましなんじゃないかな」
 しれっとした顔で、阿修羅はそんなことを言った。
「そうなのか?」
「ああ、だから、このトラップに一寸法師の大好物を仕掛けておけば、まず間違いなく引っかかるはずだ」
「なんなんだ? その、大好物って?」
「きび団子だ」
 阿修羅が胸を張って言い切った。
「日本昔話といえば、きび団子。な、そうだろう? そうじゃないか?」




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