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第5章 見えない侵略者
#12 いきいきアンアン
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3つくっつけたテーブルに、全種類のハンバーガーがお行儀よく並んでいる。
それを端からつかみ取っては、アンアンがぱくぱく食べていく。
ここは深夜のマクドナルド。
うちの近所にある、アンアン御用達の店の2階。レストルーム。
久しぶりに好物にありついたせいか、アンアンはどことなくうれしそうだ。
誤解が解けたというのも、ある。
女に戻ると、阿修羅が自分の陰謀を、アンアンの前であっさり白状してくれたからだ。
ヘタレイケメン姿を僕に見られて、さすがに肩身が狭くなったらしいのだ。
それにしても、相変わらずよく食べる。
アンアンと一緒に暮らすと、エンゲル係数がうなぎのぼりに上昇するゆえんである。
「いやあ、しかし、元気はよく1か月もアンアンと一緒に暮らせたなあ。俺なんか、2日同居しただけで、何回鼻血出したと思う?」
能天気な口調で、へらへらと一ノ瀬が言う。
「まあ、おまえは兄貴だから平気なのかもしれないけれど、もう、エロいのなんのって」
「うるさいな。おまえはずっと犬小屋で寝てたくせに」
口をもぐもぐさせながら、アンアンが抗議する。
「だってそれは、アンアンが俺の部屋、占領しちゃうから。ったく、太郎を抱いて寝たなんて、小学生のガキの頃以来だったぜ」
太郎というのは、一ノ瀬の家にいるでかい雄の柴犬である。
なるほど、さすがアンアン。
居候でも態度が大きいのは、どこへ行っても変わらないらしい。
「まあ、とにかく、兄弟げんかもおさまったみたいで、よかったよかった。あ、ちょっとトイレ」
一ノ瀬が席を立つと、アンアンが対面の阿修羅のほうに身を乗り出し、小声で言った。
「あたしが、おまえを選ばない理由、今度の一件でわかっただろ? 阿修羅、確かに女の時のおまえには、あたしも一目置いている。だけど、男になったおまえははっきり言ってクズだ。男は顔じゃないってことの生き証人みたいなものだろう? そんなヘタレと誰が結婚すると思う?」
「いやあ、それ言われちゃうとねえ」
アンアンにパンツを借りた阿修羅は、今はすっかり凛々しい元の美少女に戻っている。
「なんか、男になるのにエネルギー使っちゃって、変身後はもうダメダメになっちゃうんだよ」
確かに男阿修羅は、僕をもしのぐダメ男ぶりだったのだ。
でも、その外見とのギャップ、それにあの妙に人間臭いところが、今となると、変になつかしい。
「じゃ、あきらめてくれるんだな」
僕の腕を抱え込み、アンアンが言った。
「あたしには元気がいる。ほかの男なんて、要らないんだから」
「まあ、いいけどね」
阿修羅がテーブルに頬杖をつき、長い睫毛をぱちぱちさせてアンアンを見つめた。
「私もこっちに残って、いい男かいい女、ゆっくり探すことにする」
「残るのか?」
今度はアンアンがまばたきする番だった。
「帝釈天との戦争は? まだカタついてないんだろ?」
「そんなのもう、どうでもいいよ。だって、こっちの高校生活って、なんか楽しすぎるんだもん」
それはそうだろう。
美少女にも美少年にも変身できる阿修羅は、人間界では一生モテ期にいるようなものだからだ。
「おまえまでこっちに居座るとなると…ただじゃ済まなくなりそうだな」
アンアンの眉間に縦じわが寄った。
「アンアンこそ、候補者5人もやっつけちゃったしね」
「一寸法師をトリに送ってきたやつが誰かも、気にかかる」
「まあ、いいんじゃない? 少なくとも、アンアンと私が手を組めば、何が来たって怖いものなしなんだから」
阿修羅がそこまで言った時、ふらふらと一ノ瀬が戻ってきた。
「ねえ。今トイレでクソしながら思ったんだけどさあ、また4人でどっかいかない? 海とか山とか、できれば妖怪や怪獣の出ないとこ」
「いいね」
さわやかに笑いかける阿修羅。
「せっかく水着買ったから、海かな。もう、ダゴンもいないしね」
「どうかな」
その横で、最後のビッグマックをかじりながら、アンアンがぼそりとつぶやいた。
「ダゴン以外にも、海の魔物なんて、いっぱいいると思うぞ」
それを端からつかみ取っては、アンアンがぱくぱく食べていく。
ここは深夜のマクドナルド。
うちの近所にある、アンアン御用達の店の2階。レストルーム。
久しぶりに好物にありついたせいか、アンアンはどことなくうれしそうだ。
誤解が解けたというのも、ある。
女に戻ると、阿修羅が自分の陰謀を、アンアンの前であっさり白状してくれたからだ。
ヘタレイケメン姿を僕に見られて、さすがに肩身が狭くなったらしいのだ。
それにしても、相変わらずよく食べる。
アンアンと一緒に暮らすと、エンゲル係数がうなぎのぼりに上昇するゆえんである。
「いやあ、しかし、元気はよく1か月もアンアンと一緒に暮らせたなあ。俺なんか、2日同居しただけで、何回鼻血出したと思う?」
能天気な口調で、へらへらと一ノ瀬が言う。
「まあ、おまえは兄貴だから平気なのかもしれないけれど、もう、エロいのなんのって」
「うるさいな。おまえはずっと犬小屋で寝てたくせに」
口をもぐもぐさせながら、アンアンが抗議する。
「だってそれは、アンアンが俺の部屋、占領しちゃうから。ったく、太郎を抱いて寝たなんて、小学生のガキの頃以来だったぜ」
太郎というのは、一ノ瀬の家にいるでかい雄の柴犬である。
なるほど、さすがアンアン。
居候でも態度が大きいのは、どこへ行っても変わらないらしい。
「まあ、とにかく、兄弟げんかもおさまったみたいで、よかったよかった。あ、ちょっとトイレ」
一ノ瀬が席を立つと、アンアンが対面の阿修羅のほうに身を乗り出し、小声で言った。
「あたしが、おまえを選ばない理由、今度の一件でわかっただろ? 阿修羅、確かに女の時のおまえには、あたしも一目置いている。だけど、男になったおまえははっきり言ってクズだ。男は顔じゃないってことの生き証人みたいなものだろう? そんなヘタレと誰が結婚すると思う?」
「いやあ、それ言われちゃうとねえ」
アンアンにパンツを借りた阿修羅は、今はすっかり凛々しい元の美少女に戻っている。
「なんか、男になるのにエネルギー使っちゃって、変身後はもうダメダメになっちゃうんだよ」
確かに男阿修羅は、僕をもしのぐダメ男ぶりだったのだ。
でも、その外見とのギャップ、それにあの妙に人間臭いところが、今となると、変になつかしい。
「じゃ、あきらめてくれるんだな」
僕の腕を抱え込み、アンアンが言った。
「あたしには元気がいる。ほかの男なんて、要らないんだから」
「まあ、いいけどね」
阿修羅がテーブルに頬杖をつき、長い睫毛をぱちぱちさせてアンアンを見つめた。
「私もこっちに残って、いい男かいい女、ゆっくり探すことにする」
「残るのか?」
今度はアンアンがまばたきする番だった。
「帝釈天との戦争は? まだカタついてないんだろ?」
「そんなのもう、どうでもいいよ。だって、こっちの高校生活って、なんか楽しすぎるんだもん」
それはそうだろう。
美少女にも美少年にも変身できる阿修羅は、人間界では一生モテ期にいるようなものだからだ。
「おまえまでこっちに居座るとなると…ただじゃ済まなくなりそうだな」
アンアンの眉間に縦じわが寄った。
「アンアンこそ、候補者5人もやっつけちゃったしね」
「一寸法師をトリに送ってきたやつが誰かも、気にかかる」
「まあ、いいんじゃない? 少なくとも、アンアンと私が手を組めば、何が来たって怖いものなしなんだから」
阿修羅がそこまで言った時、ふらふらと一ノ瀬が戻ってきた。
「ねえ。今トイレでクソしながら思ったんだけどさあ、また4人でどっかいかない? 海とか山とか、できれば妖怪や怪獣の出ないとこ」
「いいね」
さわやかに笑いかける阿修羅。
「せっかく水着買ったから、海かな。もう、ダゴンもいないしね」
「どうかな」
その横で、最後のビッグマックをかじりながら、アンアンがぼそりとつぶやいた。
「ダゴン以外にも、海の魔物なんて、いっぱいいると思うぞ」
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