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第6章 アンアン魔界行
#3 ここほれ、アンアン②
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一見したところ、それは確かに柴犬に似ていた。
短い脚。
ずんぐりした茶色い身体。
だけど、おかしな点がいくつかある。
「角が生えてる」
子犬の顔を凝視して、僕は呆然とつぶやいた。
「しかも、目が、3つある」
子犬は鼻のあたりだけ黒い。
そこまではいいだろう。
むしろ、可愛いとさえいえる。
でも、額の角は何なのだ?
ついでにいうと、眉間に開いた3つめの眼は、明らかにオデキの類いじゃなさそうだ。
「角が生えてて目が3つある。こんな犬は、見たことがない」
が、それに反論を唱えたのは、ほかならぬアンアンその人だった。
「角が生えてちゃいけないのか? 目ぐらい3つあってもいいだろう? それとも何か? 元気は外見で人を差別するっていうのか? はん、見損なったよ」
ま、まてよ。そうは言ってないだろ。
だいたいこれ、人じゃないし。
「とにかく、気に入った。この子、あたしにちょうだい。な、元気、いいだろ? おまえには迷惑かけないし、ちゃんとあたしが責任もって世話するからさ」
威嚇したと思ったら、今度は身体を寄せてきて、スリスリし出す始末である。
「アンアン、おまえ、ペット、飼ったことあるのか? その、魔界での話だけど」
念のために訊いてみると、自慢げにHカップの胸を張って、アンアンが答えた。
「当たり前だろ。砂色デスサソリと暗黒デスガッパなら、小学生の時、合わせて10匹は飼ったかな」
聞くだけ野暮だったようだ。
どっちも、実物には死んでもお目にかかりたくないタイプの生き物のようである。
「大きくなったら、ユニコーンになったりして」
調子に乗った一ノ瀬が、また適当な相づちをうつ。
なにがユニコーンだ。
ユニコーンに、目が3つもあるものか。
なるとしたら、どうみても、怪獣だろ?
くうん。
小賢しくも味方を嗅ぎ分けたのか、甘えた声で謎生物の幼体がアンアンに飛びついた。
「やん! きゃわいい!」
茶色いムクムクをさっと抱き上げて、黄色い声ではしゃくアンアン。
僕はまたしても呆然となった。
こんな童女のようなアンアンを見るのは、これが初めてだったのだ。
「OK。うちで飼うことにするよ」
仕方なく、肩をすくめてみせた。
アンアンがこんなに喜ぶなら、飼ってやろうじゃないか。
そう思ったのだ。
「きゃあ! ありがとう!」
アンアンが首っ玉にかじりついてきた。
ゴム毬みたいなふたつの球体が、背中にぐいぐい押しつけられる。
「いくらだ? ブリーダー料?」
一ノ瀬に訊くと、
「そんなの要らないよ。母ちゃんが、気味悪いから早く捨てて来いってうるさくって。でも、さすがに捨てるなんてかわいそうだし、保健所に持ってったら殺処分だろ? いくらオス犬から産まれたからって、それじゃあんまりだと思ってさ。それでおまえに声かけただけだし」
「そうか。悪いな」
「あ、できればひとつ、ほしいものがある」
「なんだ?」
一ノ瀬の眼が、疑似犬コロを抱きしめて庭を飛び回るアンアンのほうを、ちらりと一瞥した。
「アンアンの写真。露出度が高ければ高いほど、ナイスだな。それを俺にLINEで送ってくれないか」
「何に使う気だ? まさかそれでカネ儲けか?」
「んなことするかよ。おナル時のオカズだよ。オカズ」
「バレたらおまえ、殺されるかもな」
「だからおまえに頼んでるんじゃないか! アンアンはあんなに喜んでるんだから、それくらい許されるだろ?」
「どうだかね。ま、努力はしてみる」
こうして、無事交渉は成立したのだが…。
そののち、この謎生物のおかげで、僕とアンアンは、とんでもない事態に巻き込まれることになる。
短い脚。
ずんぐりした茶色い身体。
だけど、おかしな点がいくつかある。
「角が生えてる」
子犬の顔を凝視して、僕は呆然とつぶやいた。
「しかも、目が、3つある」
子犬は鼻のあたりだけ黒い。
そこまではいいだろう。
むしろ、可愛いとさえいえる。
でも、額の角は何なのだ?
ついでにいうと、眉間に開いた3つめの眼は、明らかにオデキの類いじゃなさそうだ。
「角が生えてて目が3つある。こんな犬は、見たことがない」
が、それに反論を唱えたのは、ほかならぬアンアンその人だった。
「角が生えてちゃいけないのか? 目ぐらい3つあってもいいだろう? それとも何か? 元気は外見で人を差別するっていうのか? はん、見損なったよ」
ま、まてよ。そうは言ってないだろ。
だいたいこれ、人じゃないし。
「とにかく、気に入った。この子、あたしにちょうだい。な、元気、いいだろ? おまえには迷惑かけないし、ちゃんとあたしが責任もって世話するからさ」
威嚇したと思ったら、今度は身体を寄せてきて、スリスリし出す始末である。
「アンアン、おまえ、ペット、飼ったことあるのか? その、魔界での話だけど」
念のために訊いてみると、自慢げにHカップの胸を張って、アンアンが答えた。
「当たり前だろ。砂色デスサソリと暗黒デスガッパなら、小学生の時、合わせて10匹は飼ったかな」
聞くだけ野暮だったようだ。
どっちも、実物には死んでもお目にかかりたくないタイプの生き物のようである。
「大きくなったら、ユニコーンになったりして」
調子に乗った一ノ瀬が、また適当な相づちをうつ。
なにがユニコーンだ。
ユニコーンに、目が3つもあるものか。
なるとしたら、どうみても、怪獣だろ?
くうん。
小賢しくも味方を嗅ぎ分けたのか、甘えた声で謎生物の幼体がアンアンに飛びついた。
「やん! きゃわいい!」
茶色いムクムクをさっと抱き上げて、黄色い声ではしゃくアンアン。
僕はまたしても呆然となった。
こんな童女のようなアンアンを見るのは、これが初めてだったのだ。
「OK。うちで飼うことにするよ」
仕方なく、肩をすくめてみせた。
アンアンがこんなに喜ぶなら、飼ってやろうじゃないか。
そう思ったのだ。
「きゃあ! ありがとう!」
アンアンが首っ玉にかじりついてきた。
ゴム毬みたいなふたつの球体が、背中にぐいぐい押しつけられる。
「いくらだ? ブリーダー料?」
一ノ瀬に訊くと、
「そんなの要らないよ。母ちゃんが、気味悪いから早く捨てて来いってうるさくって。でも、さすがに捨てるなんてかわいそうだし、保健所に持ってったら殺処分だろ? いくらオス犬から産まれたからって、それじゃあんまりだと思ってさ。それでおまえに声かけただけだし」
「そうか。悪いな」
「あ、できればひとつ、ほしいものがある」
「なんだ?」
一ノ瀬の眼が、疑似犬コロを抱きしめて庭を飛び回るアンアンのほうを、ちらりと一瞥した。
「アンアンの写真。露出度が高ければ高いほど、ナイスだな。それを俺にLINEで送ってくれないか」
「何に使う気だ? まさかそれでカネ儲けか?」
「んなことするかよ。おナル時のオカズだよ。オカズ」
「バレたらおまえ、殺されるかもな」
「だからおまえに頼んでるんじゃないか! アンアンはあんなに喜んでるんだから、それくらい許されるだろ?」
「どうだかね。ま、努力はしてみる」
こうして、無事交渉は成立したのだが…。
そののち、この謎生物のおかげで、僕とアンアンは、とんでもない事態に巻き込まれることになる。
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