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第6章 アンアン魔界行
#30 あへあへアンアン②
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「というわけで、治療を頼みたい」
血のにじむ腹を押さえて、アンアンが言った。
「ただし、セクハラは禁止だ」
苦しいなかでも、そうつけ加えるのを忘れない。
「濡れ衣じゃよ。濡れ衣」
鉢の開いたはげ頭をゆらゆらさせて、老人ーぬらりひょんが笑った。
「何が濡れ衣だ。覚えてるぞ。小学生だったあたしを裸にして、あちこち触りまくったくせに」
「あれは仕方がなかったんじゃ。あの時、姫、あんたは悪い虫に憑りつかれておった。あれは三尸の虫といってな、人の体内に寄生して寿命を縮める疫病神みたいなものなのじゃ。わしがあんたのアヌスからあれを引っ張り出さなんだら、今頃あんたはここにはいまい。2、3日で身体の中身を喰いつくされ、骨と皮だけになっておっちんでたところだろうよ」
「なにがさんしの虫だ。あたしはただ焼肉食べ放題で馬刺しをたらふく食べただけだ。せいぜい寄生されたとしても、アニキサスが関の山だろう」
「家出小学生が焼肉バイキングで食事ということ自体、間違っとるよ。いくら魔族といえども、もっと謙虚に生きねばな。まあ、いい。過去のことは水に流して、さっそく治療に入ることにしよう。見ればかなりの重症だ。事は一刻を争うぞよ」
そうして僕らが連れていかれたのは、奥の大広間である。
そこは畳敷きで、柔道か空手の道場みたいな雰囲気の広大な空間だった。
小学生くらいの背の高さのぬらりひょんの後から、廊下の幅と高さぎりぎりのぬりかべが、のっそりと道場に入って行く。
やがて何を思ったのか、ぬりかべは道場の真ん中まで進むと、地響きを立ててそこにどっかり仰向けに寝転がってしまった。
「さあ、裸になって、この上に寝るのじゃ」
今や畳の上に敷かれたマットと化したぬりかべを指さし、ぬらりひょんがアンアンに指図した。
「裸だと? やだね。パンツとブラは取らないからな」
「それは困る。それでは治癒効果が半減してしまう。そうだ。では、こうしよう」
老人が障子を開けると、外は和風の庭園になっていた。
しぶい枯山水を、うっそうと茂る広葉樹が取り囲んでいる。
老人は庭に下りてなにやらごそごそやっていたかと思うと、やがて右手に葉っぱを握って道場に戻ってきた。
「これで乳首とおま〇こを隠すがいい。それなら文句ないだろう」
そう言って差し出したのは、3枚の紅葉の葉っぱである。
まだ紅葉していないので緑色をしているが、面積はかなり小さいと言っていい。
これでは、貝殻ビキニならぬ、葉っぱビキニである。
「マジかよ」
アンアンが真っ赤になる。
が、傷の痛みには勝てぬらしく、
「わかったよ。つけりゃあいいんだろ。つけりゃ」
そう投げやりに言って3枚の葉をふんだくると、よろめきながら廊下に出ていった。
「わかればいいんじゃ」
にんまりほくそ笑むぬらりひょん。
そして、閉まったふすまのほうを向き、大声で呼びかけた。
「おおい、ぬっぺっぽう、いるか? 久々にぬしの出番じゃぞ」
「ぬっぺっぽう? なんだ、それ?」
一ノ瀬がキツネにつままれたような顔をする。
そこにすかさずサブカルおたくアンドロイドの玉が口を挟んだ。
「知らないんですかあ? ぬっぺっぽうっていったら、あのお肉の塊みたいなきもい妖怪じゃないですかあ」
血のにじむ腹を押さえて、アンアンが言った。
「ただし、セクハラは禁止だ」
苦しいなかでも、そうつけ加えるのを忘れない。
「濡れ衣じゃよ。濡れ衣」
鉢の開いたはげ頭をゆらゆらさせて、老人ーぬらりひょんが笑った。
「何が濡れ衣だ。覚えてるぞ。小学生だったあたしを裸にして、あちこち触りまくったくせに」
「あれは仕方がなかったんじゃ。あの時、姫、あんたは悪い虫に憑りつかれておった。あれは三尸の虫といってな、人の体内に寄生して寿命を縮める疫病神みたいなものなのじゃ。わしがあんたのアヌスからあれを引っ張り出さなんだら、今頃あんたはここにはいまい。2、3日で身体の中身を喰いつくされ、骨と皮だけになっておっちんでたところだろうよ」
「なにがさんしの虫だ。あたしはただ焼肉食べ放題で馬刺しをたらふく食べただけだ。せいぜい寄生されたとしても、アニキサスが関の山だろう」
「家出小学生が焼肉バイキングで食事ということ自体、間違っとるよ。いくら魔族といえども、もっと謙虚に生きねばな。まあ、いい。過去のことは水に流して、さっそく治療に入ることにしよう。見ればかなりの重症だ。事は一刻を争うぞよ」
そうして僕らが連れていかれたのは、奥の大広間である。
そこは畳敷きで、柔道か空手の道場みたいな雰囲気の広大な空間だった。
小学生くらいの背の高さのぬらりひょんの後から、廊下の幅と高さぎりぎりのぬりかべが、のっそりと道場に入って行く。
やがて何を思ったのか、ぬりかべは道場の真ん中まで進むと、地響きを立ててそこにどっかり仰向けに寝転がってしまった。
「さあ、裸になって、この上に寝るのじゃ」
今や畳の上に敷かれたマットと化したぬりかべを指さし、ぬらりひょんがアンアンに指図した。
「裸だと? やだね。パンツとブラは取らないからな」
「それは困る。それでは治癒効果が半減してしまう。そうだ。では、こうしよう」
老人が障子を開けると、外は和風の庭園になっていた。
しぶい枯山水を、うっそうと茂る広葉樹が取り囲んでいる。
老人は庭に下りてなにやらごそごそやっていたかと思うと、やがて右手に葉っぱを握って道場に戻ってきた。
「これで乳首とおま〇こを隠すがいい。それなら文句ないだろう」
そう言って差し出したのは、3枚の紅葉の葉っぱである。
まだ紅葉していないので緑色をしているが、面積はかなり小さいと言っていい。
これでは、貝殻ビキニならぬ、葉っぱビキニである。
「マジかよ」
アンアンが真っ赤になる。
が、傷の痛みには勝てぬらしく、
「わかったよ。つけりゃあいいんだろ。つけりゃ」
そう投げやりに言って3枚の葉をふんだくると、よろめきながら廊下に出ていった。
「わかればいいんじゃ」
にんまりほくそ笑むぬらりひょん。
そして、閉まったふすまのほうを向き、大声で呼びかけた。
「おおい、ぬっぺっぽう、いるか? 久々にぬしの出番じゃぞ」
「ぬっぺっぽう? なんだ、それ?」
一ノ瀬がキツネにつままれたような顔をする。
そこにすかさずサブカルおたくアンドロイドの玉が口を挟んだ。
「知らないんですかあ? ぬっぺっぽうっていったら、あのお肉の塊みたいなきもい妖怪じゃないですかあ」
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