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#7 あずみ、えっちな下着を購入する④
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自動ドアの開く音に振り向くと、駐車場へと続く出入口から、さっきの警備員たちが戻ってくるところだった。
どうやら佐々木のやつ、あそこから店の外に放り出されたらしい。
屈強な体つきのふたり組をやり過ごし、何食わぬ顔で外に出ると、果たして佐々木が柱の陰に蹲っていた。
「佐々木だろ? どうしたんだ、いったい?」
声をかけると、のろくさい動作で佐々木が顔を上げた。
少し見ない間にずいぶん頬がこけ、長い前髪の間からのぞく目が血走っている。
「出雲・・・」
佐々木の唇が動いた。
狂気に憑りつかれたような表情が消え、ようやく正気が戻ってきたようだ。
「奇遇だな、と言いたいところだが、おまえ、さっき・・・」
「見てたのか?」
フチなし眼鏡が光った。
「究極少女隊か。俺、あんまりそういうの、詳しくないけど、まさかおまえがドルオタだったとはな」
「誰がドルオタなもんか」
軽口めいた僕の言葉に、血相を変えて佐々木が噛みついた。
「俺はただ・・・」
何か言いかけて、黙り込む。
「さっき、おまえ確か、返せ、とか怒鳴ってたよな。あれはなんのことだ?」
気になっていたことを訊いてみた。
「美緒が帰ってこない。もう一週間になる。やつらの所にいるのは間違いないんだ」
吐き捨てるように、佐々木が答えた。
「ミオって?」
「俺の妹さ。中学3年生だ」
「あいつらってのは、さっきのアイドルグループ?」
「ああ。美緒はオーディションに合格したって喜んでたんだ。これで究極少女になれるって」
「つまり、あのグループのメンバーに?」
「そうさ。美緒はやつらの大ファンだった。ずっとあいつらの後を追っかけてた。デビュー以来ずっと、やつらは美緒の憧れの的だったんだよ」
「そんなの、ただの家出じゃないのか?」
「違う。美緒が家出なんてするものか。両親とも、兄の俺とも、うまくいってた。素直ないいやつだった」
「しかし、だからといって、コンサートに乱入するってのは、穏やかじゃないな。もっと他にやりようがあるだろう」
「芸能事務所にも行ってみたさ。でも、そんな娘は知らないの一点張りだ。警察も家出扱いするだけで、まともに取り合っちゃくれない。だから・・・」
佐々木の顔が悔しそうに歪んだ。
中学生の妹の失踪に胸を痛める佐々木の気持ちはよくわかった。
ついこの前まで、僕も同じような状況に置かれていたのだ。
でも、あのアイドルたちに八つ当たりするのはいかがなものか。
アイドルなんてのは、しょせん、大人たちの金もうけの道具に過ぎない。
自分たちの意志で、何か事を起こすなんてことがあるがずがない。
そんな思索に耽っていた時だった。
「そうだ、出雲、頼みがある」
思い出したように、突然佐々木が言って、ズボンの尻ポケットから何かを取り出した。
「もし俺に何かあったら、これを使ってくれ」
手に押しつけられたのは、二つ折りにした紙の長封筒である。
中に何か入っているようだ。
「なんだよ」
振ると、かさかさ音がした。
「俺はここ一週間、あいつらを追っていた。あいつら、ただのアイドルじゃない。これがその・・・」
佐々木がそこまで言った時である。
「んもう、お兄ちゃんったら、そんなとこで何してんの?」
自動ドアが勢いよく開いて、よく通る声が降ってきた。
「いつまで経っても来ないから、あずみ、もう、下着買っちゃったよ! 目玉が飛び出るほどセクシーなやつ!」
砂時計よろしくきゅっとくびれた腰に両手を当て、マイクロミニから伸びた健康的な脚で大地を踏みしめ、仁王立ちになったあずみが大声でそう言った。
どうやら佐々木のやつ、あそこから店の外に放り出されたらしい。
屈強な体つきのふたり組をやり過ごし、何食わぬ顔で外に出ると、果たして佐々木が柱の陰に蹲っていた。
「佐々木だろ? どうしたんだ、いったい?」
声をかけると、のろくさい動作で佐々木が顔を上げた。
少し見ない間にずいぶん頬がこけ、長い前髪の間からのぞく目が血走っている。
「出雲・・・」
佐々木の唇が動いた。
狂気に憑りつかれたような表情が消え、ようやく正気が戻ってきたようだ。
「奇遇だな、と言いたいところだが、おまえ、さっき・・・」
「見てたのか?」
フチなし眼鏡が光った。
「究極少女隊か。俺、あんまりそういうの、詳しくないけど、まさかおまえがドルオタだったとはな」
「誰がドルオタなもんか」
軽口めいた僕の言葉に、血相を変えて佐々木が噛みついた。
「俺はただ・・・」
何か言いかけて、黙り込む。
「さっき、おまえ確か、返せ、とか怒鳴ってたよな。あれはなんのことだ?」
気になっていたことを訊いてみた。
「美緒が帰ってこない。もう一週間になる。やつらの所にいるのは間違いないんだ」
吐き捨てるように、佐々木が答えた。
「ミオって?」
「俺の妹さ。中学3年生だ」
「あいつらってのは、さっきのアイドルグループ?」
「ああ。美緒はオーディションに合格したって喜んでたんだ。これで究極少女になれるって」
「つまり、あのグループのメンバーに?」
「そうさ。美緒はやつらの大ファンだった。ずっとあいつらの後を追っかけてた。デビュー以来ずっと、やつらは美緒の憧れの的だったんだよ」
「そんなの、ただの家出じゃないのか?」
「違う。美緒が家出なんてするものか。両親とも、兄の俺とも、うまくいってた。素直ないいやつだった」
「しかし、だからといって、コンサートに乱入するってのは、穏やかじゃないな。もっと他にやりようがあるだろう」
「芸能事務所にも行ってみたさ。でも、そんな娘は知らないの一点張りだ。警察も家出扱いするだけで、まともに取り合っちゃくれない。だから・・・」
佐々木の顔が悔しそうに歪んだ。
中学生の妹の失踪に胸を痛める佐々木の気持ちはよくわかった。
ついこの前まで、僕も同じような状況に置かれていたのだ。
でも、あのアイドルたちに八つ当たりするのはいかがなものか。
アイドルなんてのは、しょせん、大人たちの金もうけの道具に過ぎない。
自分たちの意志で、何か事を起こすなんてことがあるがずがない。
そんな思索に耽っていた時だった。
「そうだ、出雲、頼みがある」
思い出したように、突然佐々木が言って、ズボンの尻ポケットから何かを取り出した。
「もし俺に何かあったら、これを使ってくれ」
手に押しつけられたのは、二つ折りにした紙の長封筒である。
中に何か入っているようだ。
「なんだよ」
振ると、かさかさ音がした。
「俺はここ一週間、あいつらを追っていた。あいつら、ただのアイドルじゃない。これがその・・・」
佐々木がそこまで言った時である。
「んもう、お兄ちゃんったら、そんなとこで何してんの?」
自動ドアが勢いよく開いて、よく通る声が降ってきた。
「いつまで経っても来ないから、あずみ、もう、下着買っちゃったよ! 目玉が飛び出るほどセクシーなやつ!」
砂時計よろしくきゅっとくびれた腰に両手を当て、マイクロミニから伸びた健康的な脚で大地を踏みしめ、仁王立ちになったあずみが大声でそう言った。
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