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翔ちゃんが振り切った金属バットが、襲いかかるゾンビの側頭部にヒットした。
その神スイングの威力に、ゾンビの頭蓋がぐしゃりとひしゃげ、気味の悪い黒い汁がどろりとあふれ出す。
だが、ゾンビはまだ動いている。
両手を伸ばし、翔ちゃんの首をつかもうと迫ってくる。
まっすぐに振り上げたバットを、翔ちゃんが気合とともに振り下ろした。
脳天が割れ、ゾンビが地面にへたりこむ。
その顔に、流伽が噴霧器でニコチン液を吹きつけた。
そこへ、2体めが現れた。
「させるか!」
由羅が飛び出し、高々と右足を蹴り上げた。
顎を砕かれ、ゾンビが歩を止める。
その顔面に、鋼鉄のナックルを装着した渾身のストレートが決まる。
腐っているので、ゾンビの皮膚や筋肉はやわくなっているのだろう。
ぐしゅっと果実のつぶれるような音がして、ゾンビの鼻っ柱が折れ、顔面の中央が陥没する。
膝をついて倒れ伏すゾンビを飛び越えて、果敢にも由羅は次の獲物へと向かっていく。
が、残った6体のゾンビは、私たちを取り囲むようにして、包囲の輪を狭めてくる。
「由羅! 早まらないで! ひとりで飛び出さない!」
翔ちゃんが叫んだ時である。
「まずいっす!」
背後から天草君の悲鳴が聞こえてきた。
線香花火の束に火をつけた天草君がガン見しているのは、古墳の穴のほうである。
「中からいっぱい出てくるっす!」
「わ」
私は息を呑んだ。
古墳の一枚岩の屋根の下に開いた黒い穴から、何本もの腕が突き出ている。
まるで、テレビ画面から出てくる貞子みたいに。
「きりがないな」
玩具同然の花火を穴に向け、吐き捨てるように、虎一郎氏がつぶやいた。
「これじゃ、警察の応援がくるまでもたないぞ」
「私に考えがある」
大声で叫び返してきたのは、翔ちゃんだ。
折からつかみかかってきた3人目のゾンビを、下斜めからのアッパースイングで吹っ飛ばすと、私に向かってこう言った。
「今よ! 絵麻! 来て!」
「え」
硬直する私。
来てって、なぜ私?
この私に、出番があるっていうの?
翔ちゃんは囲みを突破し、警察車両のドアに貼りついている。
中からゾンビが出てきたので、車のドアは開いたままだ。
ああ、車か。
なるほど、いい考えかも。
でも、どうして私?
普通免許なんて、持ってないんだけど…?
「由羅、絵麻を掩護して」
翔ちゃんの声に、
「ほいきた!」
珍しく素直に応えた由羅が、すかさず私の手を取った。
寄ってくるゾンビをパンチで牽制し、たくましい脚で蹴り飛ばしながら、私をひきずって由羅が走る。
車の所までたどり着くと、翔ちゃんはなぜか座席の下にもぐりこんでいた。
「動かすのか?」
「それは無理。キーが刺さってない」
「マジか。映画なら必ずキーがついてるもんだろ?」
「これ、映画じゃなくて、リアルだから」
「じゃ、どうすんだよ」
「あった。このレバーね」
翔ちゃんが、床の隅のレバーを引いた。
どこかで蓋の開く音。
「OK。絵麻、出番だよ」
「え、なに?」
きょとんとする私。
「こっちに」
袖を引かれた。
車体の後部に開いてるこの穴は…?
その神スイングの威力に、ゾンビの頭蓋がぐしゃりとひしゃげ、気味の悪い黒い汁がどろりとあふれ出す。
だが、ゾンビはまだ動いている。
両手を伸ばし、翔ちゃんの首をつかもうと迫ってくる。
まっすぐに振り上げたバットを、翔ちゃんが気合とともに振り下ろした。
脳天が割れ、ゾンビが地面にへたりこむ。
その顔に、流伽が噴霧器でニコチン液を吹きつけた。
そこへ、2体めが現れた。
「させるか!」
由羅が飛び出し、高々と右足を蹴り上げた。
顎を砕かれ、ゾンビが歩を止める。
その顔面に、鋼鉄のナックルを装着した渾身のストレートが決まる。
腐っているので、ゾンビの皮膚や筋肉はやわくなっているのだろう。
ぐしゅっと果実のつぶれるような音がして、ゾンビの鼻っ柱が折れ、顔面の中央が陥没する。
膝をついて倒れ伏すゾンビを飛び越えて、果敢にも由羅は次の獲物へと向かっていく。
が、残った6体のゾンビは、私たちを取り囲むようにして、包囲の輪を狭めてくる。
「由羅! 早まらないで! ひとりで飛び出さない!」
翔ちゃんが叫んだ時である。
「まずいっす!」
背後から天草君の悲鳴が聞こえてきた。
線香花火の束に火をつけた天草君がガン見しているのは、古墳の穴のほうである。
「中からいっぱい出てくるっす!」
「わ」
私は息を呑んだ。
古墳の一枚岩の屋根の下に開いた黒い穴から、何本もの腕が突き出ている。
まるで、テレビ画面から出てくる貞子みたいに。
「きりがないな」
玩具同然の花火を穴に向け、吐き捨てるように、虎一郎氏がつぶやいた。
「これじゃ、警察の応援がくるまでもたないぞ」
「私に考えがある」
大声で叫び返してきたのは、翔ちゃんだ。
折からつかみかかってきた3人目のゾンビを、下斜めからのアッパースイングで吹っ飛ばすと、私に向かってこう言った。
「今よ! 絵麻! 来て!」
「え」
硬直する私。
来てって、なぜ私?
この私に、出番があるっていうの?
翔ちゃんは囲みを突破し、警察車両のドアに貼りついている。
中からゾンビが出てきたので、車のドアは開いたままだ。
ああ、車か。
なるほど、いい考えかも。
でも、どうして私?
普通免許なんて、持ってないんだけど…?
「由羅、絵麻を掩護して」
翔ちゃんの声に、
「ほいきた!」
珍しく素直に応えた由羅が、すかさず私の手を取った。
寄ってくるゾンビをパンチで牽制し、たくましい脚で蹴り飛ばしながら、私をひきずって由羅が走る。
車の所までたどり着くと、翔ちゃんはなぜか座席の下にもぐりこんでいた。
「動かすのか?」
「それは無理。キーが刺さってない」
「マジか。映画なら必ずキーがついてるもんだろ?」
「これ、映画じゃなくて、リアルだから」
「じゃ、どうすんだよ」
「あった。このレバーね」
翔ちゃんが、床の隅のレバーを引いた。
どこかで蓋の開く音。
「OK。絵麻、出番だよ」
「え、なに?」
きょとんとする私。
「こっちに」
袖を引かれた。
車体の後部に開いてるこの穴は…?
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