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第6部 淫蕩のナルシス
#13 悪夢の再来
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翌日は、朝から雨だった。
窓から外を見ると、大粒の雨粒が地面で跳ねていた。
これではとてもじゃないが、自転車は使えない。
バスで行くしかない。
それなら・・・。
杏里はいちばん露出度の高い服を着ていくことにした。
胸元と背中が大きく開いたタンクトップ。
超ミニのフレアスカート。
その下には、見られることを前提に、大人向けのランジェリーを身につけた。
しのつく雨の中を大通りのバス停まで走り、震えながら待っていると、5分ほどでバスが来た。
この天気である。
予想通り、バスは混んでいた。
以前、同じように混み合ったバスの中で、杏里はOLの集団に襲われたことがあった。
そのとき身に染みて感じたのは、女が相手だと、無駄に長引く、ということである。
嫌なことは早く済ませたほうがいい。
だから今回は、女性客のそばを避け、故意に男性客の近くに立った。
つり革につかまって爪先立ちしていると、ひと駅も行かないうちに男たちに囲まれた。
サラリーマン風のスーツ姿の中年男とでっぷり肥った自営業者風の親父が両サイドに立った。
背後に制服を着た男子高校生が回る。
目の前の席に坐っているのは、ぽっちゃり系の眼鏡の若者だ。
眼鏡が立ち上がると、4人の男の壁ができた。
誰もが杏里の挑発的な服装に反応していた。
来る、と思った。
予想通り、すぐに複数の手が伸びてきた。
スカートがめくられ、顕わになった尻を撫で回される。
別の手が股間にのび、パンティの隙間から中に指を入れようとする。
タンクトップが胸の上までめくりあげられた。
ブラジャーの上から、別々の手が乳房を揉んでくる。
太腿に硬いものが当たった。
熱く硬直した棒だ。
両側の太腿に、別々の肉棒がぐいぐいと押しつけられてくる。
虫唾が走るほど、気持ちが悪い。
初めのその感覚だけは、何度同じ目に遭っても、馴れることがない。
おそらく、普通の女子中学生なら、泣き出してしまうことだろう。
が、杏里はタナトスだった。
場数を踏んでいる。
耐えるだけ耐えて、反撃する術(すべ)を身につけている。
この顔ぶれ、この程度の人数なら、なんとでもなりそうだ。
杏里はつり革を放した。
自由になった両手で、左右の男たちのズボンのファスナーを、一気に引き下ろす。
飛び出した陰茎を握る。
初めはゆっくり、だんだんと激しく、肉棒をしごいていく。
亀頭が濡れ始めたところで、尿道のあたりを指の腹で愛撫してやる。
「あふ」
情けない声を漏らし、サラリーマンが先に放った。
股間を両手で押さえてよろめきながら離れていく。
「ぐふう」
続けて親父風の男が真っ赤な顔でうめき、大量の精液を足元にしたたらせる。
今度は前後の男たちを責める番だ。
後ろ手で高校生のズボンの前をつかんだ。
予想通り、充分すぎるほど硬くなっている。
ズボンの上から丁寧にさすってやる。
「で、出ちゃうよ」
高校生があえぎ始め、杏里の乳房をわしづかみにした手に力をこめてくる。
「こ、この淫売!」
前に立ったオタク風の男が息を荒げ、ズボンからペニスを引っ張り出して杏里の腹に押しつけてきた。
左手で高校生、右手でオタク青年のペニスをにぎる。
オタクのペニスの先を腹に当て、高校生のペニスの先を尻に当てる。
そのまま円を描くようにして、動かしてやった。
2つのペニスがほぼ同時に膨らんだ。
杏里はとっさに身をかわした。
「ああ」
「いくう」
けだものどもが叫んだ。
お互いに精液をかけ合いながら果てる男たち。
-きったなあい。
-何、あのひとたち。
ーひょっとして、変態?
周囲の乗客たちが異変に気づき、ざわめき始める。
そのときにはすでに杏里は現場を離れ、席の空いた最後部に場所を移していた。
スカートの裾を調え、手早くブラとタンクトップを引き下ろす。
座席に坐り、取り出したウェットティッシュで手を拭いながら、ほっと安堵の息をつく。
痴漢の類は処理が簡単で、後腐れも少ない。
どうせ襲われるのなら、先にこちらから挑発しておいて、時間短縮に努めたほうがいい。
わざと露出度の高い服を着てきたのはそのためだった。
第二波がやってこないうちに、バスが終点についた。
-ちょっと、運転手さん、警察呼んでよ!
-うわ、踏んじゃった。靴、汚れちゃったじゃない!
騒然としている車内を振り返ることもなく、杏里はバスを降りた。
おととい、由羅と来たショッピングモールの近くにその建物はあった。
バスターミナルを挟んだ反対側である。
最近できたばかりらしく、見るからにこぎれいな感じの文化小劇場だった。
1階のロビーに入って、ソファに腰かけ、由羅を待つ。
柱にあのポスターが貼ってある。
展示は2階のようだ。
初めは閑散としていたロビーが、時間が経つにつれ、次第に賑わい始めた。
が、危惧したような怪しい風体の者はいなかった。
こんな個展、どんな人種が見に来るのだろう、とドキドキしていたのだが、ごくふつうの若者たち、初老の男性、中には若い女性のグループもいた。
通り過ぎる人々が、杏里に向かって好奇の目を向けてくる。
居心地が悪くなって、一階のフロアを見て回ることにした。
1階は小学生たちの描いた絵を飾る展示コーナーになっていて、親子連れの姿が目立った。
飾られているのは、パパやママをクレヨンで描いた可愛らしい絵ばかりで、杏里は見ているうちにずいぶんと癒された気分になった。
30分以上そうしていたが、由羅は来なかった。
すでに開館の時間をかなり過ぎている。
「遅いなあ」
LINEしてみた。
だが、既読にもならない。
電話にも出なかった。
仕方なく、冬美の家にかけた。
出たのは、重人だった。
-え? 由羅、君と一緒じゃないの? 今朝起きたら、もういなかったんだけど。
「そんな・・・」
杏里は途方に暮れた。
由羅・・・。
どうしちゃったの?
私を守ってくれるんじゃなかったの?
それともまたいつもの気まぐれ?
昨日の言葉自体、みんな嘘だったの?
呆然と立ち尽くす杏里のスマホが、重人の声を伝えてくる。
-おかしいなあ。バスで出かけたとしても、もうとっくにそっちに着いてる時間だよね。考えたくないけど、これってまさか・・・。
嫌な予感がした。
黒野零。
あの子がまた、現れたのだろうか・・・?
窓から外を見ると、大粒の雨粒が地面で跳ねていた。
これではとてもじゃないが、自転車は使えない。
バスで行くしかない。
それなら・・・。
杏里はいちばん露出度の高い服を着ていくことにした。
胸元と背中が大きく開いたタンクトップ。
超ミニのフレアスカート。
その下には、見られることを前提に、大人向けのランジェリーを身につけた。
しのつく雨の中を大通りのバス停まで走り、震えながら待っていると、5分ほどでバスが来た。
この天気である。
予想通り、バスは混んでいた。
以前、同じように混み合ったバスの中で、杏里はOLの集団に襲われたことがあった。
そのとき身に染みて感じたのは、女が相手だと、無駄に長引く、ということである。
嫌なことは早く済ませたほうがいい。
だから今回は、女性客のそばを避け、故意に男性客の近くに立った。
つり革につかまって爪先立ちしていると、ひと駅も行かないうちに男たちに囲まれた。
サラリーマン風のスーツ姿の中年男とでっぷり肥った自営業者風の親父が両サイドに立った。
背後に制服を着た男子高校生が回る。
目の前の席に坐っているのは、ぽっちゃり系の眼鏡の若者だ。
眼鏡が立ち上がると、4人の男の壁ができた。
誰もが杏里の挑発的な服装に反応していた。
来る、と思った。
予想通り、すぐに複数の手が伸びてきた。
スカートがめくられ、顕わになった尻を撫で回される。
別の手が股間にのび、パンティの隙間から中に指を入れようとする。
タンクトップが胸の上までめくりあげられた。
ブラジャーの上から、別々の手が乳房を揉んでくる。
太腿に硬いものが当たった。
熱く硬直した棒だ。
両側の太腿に、別々の肉棒がぐいぐいと押しつけられてくる。
虫唾が走るほど、気持ちが悪い。
初めのその感覚だけは、何度同じ目に遭っても、馴れることがない。
おそらく、普通の女子中学生なら、泣き出してしまうことだろう。
が、杏里はタナトスだった。
場数を踏んでいる。
耐えるだけ耐えて、反撃する術(すべ)を身につけている。
この顔ぶれ、この程度の人数なら、なんとでもなりそうだ。
杏里はつり革を放した。
自由になった両手で、左右の男たちのズボンのファスナーを、一気に引き下ろす。
飛び出した陰茎を握る。
初めはゆっくり、だんだんと激しく、肉棒をしごいていく。
亀頭が濡れ始めたところで、尿道のあたりを指の腹で愛撫してやる。
「あふ」
情けない声を漏らし、サラリーマンが先に放った。
股間を両手で押さえてよろめきながら離れていく。
「ぐふう」
続けて親父風の男が真っ赤な顔でうめき、大量の精液を足元にしたたらせる。
今度は前後の男たちを責める番だ。
後ろ手で高校生のズボンの前をつかんだ。
予想通り、充分すぎるほど硬くなっている。
ズボンの上から丁寧にさすってやる。
「で、出ちゃうよ」
高校生があえぎ始め、杏里の乳房をわしづかみにした手に力をこめてくる。
「こ、この淫売!」
前に立ったオタク風の男が息を荒げ、ズボンからペニスを引っ張り出して杏里の腹に押しつけてきた。
左手で高校生、右手でオタク青年のペニスをにぎる。
オタクのペニスの先を腹に当て、高校生のペニスの先を尻に当てる。
そのまま円を描くようにして、動かしてやった。
2つのペニスがほぼ同時に膨らんだ。
杏里はとっさに身をかわした。
「ああ」
「いくう」
けだものどもが叫んだ。
お互いに精液をかけ合いながら果てる男たち。
-きったなあい。
-何、あのひとたち。
ーひょっとして、変態?
周囲の乗客たちが異変に気づき、ざわめき始める。
そのときにはすでに杏里は現場を離れ、席の空いた最後部に場所を移していた。
スカートの裾を調え、手早くブラとタンクトップを引き下ろす。
座席に坐り、取り出したウェットティッシュで手を拭いながら、ほっと安堵の息をつく。
痴漢の類は処理が簡単で、後腐れも少ない。
どうせ襲われるのなら、先にこちらから挑発しておいて、時間短縮に努めたほうがいい。
わざと露出度の高い服を着てきたのはそのためだった。
第二波がやってこないうちに、バスが終点についた。
-ちょっと、運転手さん、警察呼んでよ!
-うわ、踏んじゃった。靴、汚れちゃったじゃない!
騒然としている車内を振り返ることもなく、杏里はバスを降りた。
おととい、由羅と来たショッピングモールの近くにその建物はあった。
バスターミナルを挟んだ反対側である。
最近できたばかりらしく、見るからにこぎれいな感じの文化小劇場だった。
1階のロビーに入って、ソファに腰かけ、由羅を待つ。
柱にあのポスターが貼ってある。
展示は2階のようだ。
初めは閑散としていたロビーが、時間が経つにつれ、次第に賑わい始めた。
が、危惧したような怪しい風体の者はいなかった。
こんな個展、どんな人種が見に来るのだろう、とドキドキしていたのだが、ごくふつうの若者たち、初老の男性、中には若い女性のグループもいた。
通り過ぎる人々が、杏里に向かって好奇の目を向けてくる。
居心地が悪くなって、一階のフロアを見て回ることにした。
1階は小学生たちの描いた絵を飾る展示コーナーになっていて、親子連れの姿が目立った。
飾られているのは、パパやママをクレヨンで描いた可愛らしい絵ばかりで、杏里は見ているうちにずいぶんと癒された気分になった。
30分以上そうしていたが、由羅は来なかった。
すでに開館の時間をかなり過ぎている。
「遅いなあ」
LINEしてみた。
だが、既読にもならない。
電話にも出なかった。
仕方なく、冬美の家にかけた。
出たのは、重人だった。
-え? 由羅、君と一緒じゃないの? 今朝起きたら、もういなかったんだけど。
「そんな・・・」
杏里は途方に暮れた。
由羅・・・。
どうしちゃったの?
私を守ってくれるんじゃなかったの?
それともまたいつもの気まぐれ?
昨日の言葉自体、みんな嘘だったの?
呆然と立ち尽くす杏里のスマホが、重人の声を伝えてくる。
-おかしいなあ。バスで出かけたとしても、もうとっくにそっちに着いてる時間だよね。考えたくないけど、これってまさか・・・。
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