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第6部 淫蕩のナルシス
#14 ヤチカ
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2階に上がると、そこは想像していたよりずっと明るい空間だった。
受付カウンターでチケットを見せ、中に入る。
由羅のことが気になり、いったん家に帰ろうかとずいぶん迷った。
でも、せっかく来たのだから、少しだけのぞいていこう。
そう考え、思い切って個展の会場である2階に足を向けたのだった。
待ち合わせの時間から1時間以上過ぎており、もう正午近くになっていた。
クリーム色の壁に、画集に載っていた絵が、広く間隔を置いて飾られている。
大きさはまちまちで、例の画集の表紙やポスターを飾る『輪切り少女』の絵が、いちばん大きかった。
どれも陰惨な内容には違いないのだが、明るい照明の下で本物を目の当たりにすると、意外に残虐さは薄らいで見えた。
その理由のひとつが、描かれている少女たちの顔だった。
どの絵の少女もかすかに微笑んでいるか、うっとりとした恍惚の表情を浮かべているのだ。
誰一人として苦しんでいる者がいない。
実写画というのか、まるで写真のような精密な絵ばかりであるだけに、少女たちの至福の笑みは際立って見えた。
そこに惹かれるのか、来客たちはひとつひとつの絵の前で足を止めて、じっくりと鑑賞に耽っている。
杏里が最初予想したような変質者やロリコンの類いはひとりもいない。
ごく普通の、いやむしろ上品で知的な雰囲気を備えた人が多い。
会場は鍵の手に何度も曲がり、奥へと続いている。
そのいちばん奥の部屋に人だかりができているのが見えて、杏里はその背後に歩み寄った。
サイン会だ。
コの字型に並べられたテーブルにあの画集が積まれ、その前に客たちが列を作っている。
中心に居る人物をひと目見て、杏里は驚きのあまり息を呑んだ。
和装の女性である。
花をあしらったデザインの品のいい着物。
折れそうに細く白いうなじ。
結った髪は黒々としてつやがある。
ヤチカって・・・女の人?
心の中で、杏里はつぶやいた。
にわかには信じがたいことだった。
あの残虐画の作者が、この奇麗な女性だなんて・・・。
杏里は最後列に並ぶことにした。
作者を見つけたら、話しかける口実に使おうと思って、画集は持参してきている。
それをバッグから出して、小脇に抱えた。
10分ほどで、杏里の番になった。
お昼だからか、後ろには誰も居ない。
すぐ前の女子大生風の娘が頬を上気させて立ち去ると、部屋の中は杏里と女性のふたりだけだった。
「お待たせしました。ごめんなさいね・・・」
いいながら、女性が顔を上げた。
まつげの長い、大きな眼が杏里を見つめ、更に大きく見開かれる。
美しい顔立ちの女性だった。
きれい・・・。
杏里は陶然となった。
こんな美女、見たことがない、とすら思った。
通った鼻筋。
小さめの口。
細く尖り気味の顎。
肌はきめの細かい乳白色をしている。
「あなた・・・」
杏里の顔にじっと視線を据えながら、女性がつぶやいた。
「ヤチカさんですか」
意を決して、杏里は訊いた。
杏里の顔を見つめたまま、女性がうなずいた。
「お訊きしたいことが、あるんです」
すると、女性の顔に花が開くように笑みが広がった。
「わかるわ」
右手の甲を口許に当て、くすっと笑った。
「うそみたい。こんなに早くあなたに会えるなんて、わたしはなんてツイてるのかしら」
すっと腰を上げた。
「どうぞ、こちらに」
背後にあるドアのほうを手で示して、いった。
「そう、わたしはヤチカ。あなたが来てくれるのを待ってたわ。こちらでお茶でも飲みながら、ゆっくりお話ししましょうか」
「いいんですか・・・?」
意外な成り行きに、杏里は戸惑った。
運よく画家に会えても、もっと警戒されるか、冷たくあしらわれるのではないかと思っていたのだ。
「もう、サイン会疲れちゃったし、お昼休みの時間でしょう? あとはスタッフがやってくれるから。いいのよ、わたしなんていなくても」
正装した外見に似合わず、ずいぶん人懐っこい感じの女性だった。
年の頃は30代前半くらいだろうか。
顔立ちは恐いほど整っているが、そこに浮かんでいる表情はどことなく愛嬌があり、好感が持てる。
いそいそと杏里の手を取ると、扉を開けて中へ導いた。
そこは楽屋裏のようなところだった。
狭い通路の片側に、いくつも部屋の扉が並んでいる。
かぐわしい香りが鼻腔をくすぐった。
ヤチカと名乗った女性が身に漂わせている、お香の匂いらしかった。
通路の突き当りが少し開けた空間になっていて、そこがセルフサービスの喫茶コーナーだった。
「コーヒー、飲める?」
杏里がうなずくと、紙コップにホットコーヒーを満たし、丸テーブルの上に置いてくれた。
自分の分もその隣に置くと、対面ではなく、斜め横に腰かけてきた。
「うわあ、なんだか感激だなあ」
杏里を見つめて、うれしそうにヤチカがいった。
「笹原杏里さん、でしょ? まさか、本物に会えるなんて」
手を伸ばし、白魚のような指で杏里の前髪に触る。
「ね、お顔、よく見せて・・・。うん、わたしの想像以上だわ。あなた、かわいい」
「あ、あの」
杏里は緊張のあまり金縛りに遭ったように固まってしまっていた。
ヤチカの突然の馴れ馴れしさに、ついていけなくなっていた。
「あ、ごめんなさい」
杏里の緊張が伝わったのか、ヤチカがすっと身を引いた。
「あんまりかわいいものだから、つい・・・」
そこで、杏里が膝の上に置いている画集を目に留めると、
「あ、それ、買ってくれたんだ。でも、びっくりしたでしょ? 勝手に自分の顔が使われてて」
ばつの悪そうな表情で、微笑んで見せた。
「どうして、私の顔、知ってるんですか?」
思い切って、杏里はたずねた。
これがまず、どうしても知りたい疑問である。
「ほら、あの拉致監禁事件のとき。あなたの顔、一時、ニュースやインターネットでよく流れてたでしょう? それで見たんだけど、ひと目で魅入られちゃったの。この子だ。この顔を描きたかったんだって」
ああ・・・あのときの。
・・・そうだったのか。
杏里は脱力した。
聞いてみれば、たわいもない理由だった。
呉秀樹にさらわれて、廃工場に監禁されたあの事件。
先月末の、あの事件の報道がきっかけだったとは・・・。
「あなたのこと、杏里ちゃんって呼んでいいかな。杏里ちゃんの顔って、すごく魅力的なの。切なげで、さびしそうで、何か、セカイに絶望しているように見えて、それでいて熱いというか・・・」
ヤチカがうたうようにいう。
「私の絵のあの子たちに、ぴったりだなって思うと、もういても立っても居られなくなって。それで全部の絵の顔を、急遽あなたの顔に描き直しちゃったのよ」
「そんな・・・」
無茶な、といおうとして、杏里は言葉を飲み込んだ。
ヤチカがうっとりとした表情で、自分を見つめていることに気づいたからだった。
「怒った? 肖像権の侵害で訴える? それとも、モデル料よこせって、わたしをゆする?」
ヤチカがからかうようにいった。
「そんなこと、思ってません」
杏里は少しむっとして、首を横に振った。
「わたしはただ、理由を知りたかっただけなんです」
「それともうひとつ、なんでこんな気味の悪い、残酷な絵ばかり描くのか、そう訊きたいんじゃない?」
ヤチカが悪戯っぽく声をひそめた。
「こんな残虐な絵を描くやつは、さぞかし不気味なド変態に違いないって、そう思ってたんじゃないの?」
一瞬ためらってから、杏里はうなずいた。
まさにそれが、2つ目の疑問だったからである。
「ううん、責めてるわけじゃないのよ。そう思うのが普通だもんね。現にこの個展だって、開くまでにずいぶん苦労したわ。人権団体のひとたちから抗議を受けたりもしたし。でもね、わたしは信じてるの。この世でもっとも美しいものは、杏里ちゃん、あなたたちの世代の女の子たちの裸だって。だけど、美しいものをただ美しく描いても、それは美をとらえたことにならない。ほら、完璧なものって、何の面白味もないじゃない。”美”が本来の姿を垣間見せてくれるのは、それが崩れ去る瞬間なの。だから、わたしは描くの。壊れかけた少女たちの裸体を。そこにあなたの顔が加わったから、わたしの絵は更に輝きを増したわ。これ以上を望むとすれば」
ヤチカが言葉を切り、杏里のほうに身を寄せてきた。
杏里は催眠術にでもかかったように、動けなくなっていた。
「今度は、あなたそのものを・・・顔だけじゃなく、あなたの全身を描くこと」
甘い吐息が首筋にかかる。
肩を抱かれた。
杏里のタンクトップは、肩のところが紐状に細くなっている。
それを、片方はずされた。
右肩とブラジャーが半ば顕わになる。
「素敵だわ、あなたの体」
ヤチカの指がブラをずらし、杏里の乳房をつまみ出す。
重量感のある片胸が、こぼれるように飛び出してきた。
それをヤチカが慈しむように掌ですくい上げる。
「杏里ちゃん、あなたが、こんなに素晴らしい身体の持ち主だったなんて・・・」
杏里のスカートは、坐るには短すぎる。
椅子に普通に腰かけるだけで、すぐにパンティの三角地帯が覗いてしまう。
乳房を弄びながら、ヤチカはそれに気づいたようだった。
瞳が潤んだような光を帯びた。
左手をスカートの中に差し入れてきた。
股間をそっと人差し指で撫でられた。
が、痴漢に遭ったときのように、嫌な気はしなかった。
むしろ、陶酔したような心地よさが、杏里の全身をじんわりと包み始めていた。
「ねえ、モデルになってくれないかな」
甘えるような声で、ヤチカがささやいた。
やさしい、絹で撫で回されるような愛撫に身をゆだねながら、杏里はやっとのことで、口を開いた。
「そ、それは・・・。もう、少し、考える時間を、いただけませんか?」
受付カウンターでチケットを見せ、中に入る。
由羅のことが気になり、いったん家に帰ろうかとずいぶん迷った。
でも、せっかく来たのだから、少しだけのぞいていこう。
そう考え、思い切って個展の会場である2階に足を向けたのだった。
待ち合わせの時間から1時間以上過ぎており、もう正午近くになっていた。
クリーム色の壁に、画集に載っていた絵が、広く間隔を置いて飾られている。
大きさはまちまちで、例の画集の表紙やポスターを飾る『輪切り少女』の絵が、いちばん大きかった。
どれも陰惨な内容には違いないのだが、明るい照明の下で本物を目の当たりにすると、意外に残虐さは薄らいで見えた。
その理由のひとつが、描かれている少女たちの顔だった。
どの絵の少女もかすかに微笑んでいるか、うっとりとした恍惚の表情を浮かべているのだ。
誰一人として苦しんでいる者がいない。
実写画というのか、まるで写真のような精密な絵ばかりであるだけに、少女たちの至福の笑みは際立って見えた。
そこに惹かれるのか、来客たちはひとつひとつの絵の前で足を止めて、じっくりと鑑賞に耽っている。
杏里が最初予想したような変質者やロリコンの類いはひとりもいない。
ごく普通の、いやむしろ上品で知的な雰囲気を備えた人が多い。
会場は鍵の手に何度も曲がり、奥へと続いている。
そのいちばん奥の部屋に人だかりができているのが見えて、杏里はその背後に歩み寄った。
サイン会だ。
コの字型に並べられたテーブルにあの画集が積まれ、その前に客たちが列を作っている。
中心に居る人物をひと目見て、杏里は驚きのあまり息を呑んだ。
和装の女性である。
花をあしらったデザインの品のいい着物。
折れそうに細く白いうなじ。
結った髪は黒々としてつやがある。
ヤチカって・・・女の人?
心の中で、杏里はつぶやいた。
にわかには信じがたいことだった。
あの残虐画の作者が、この奇麗な女性だなんて・・・。
杏里は最後列に並ぶことにした。
作者を見つけたら、話しかける口実に使おうと思って、画集は持参してきている。
それをバッグから出して、小脇に抱えた。
10分ほどで、杏里の番になった。
お昼だからか、後ろには誰も居ない。
すぐ前の女子大生風の娘が頬を上気させて立ち去ると、部屋の中は杏里と女性のふたりだけだった。
「お待たせしました。ごめんなさいね・・・」
いいながら、女性が顔を上げた。
まつげの長い、大きな眼が杏里を見つめ、更に大きく見開かれる。
美しい顔立ちの女性だった。
きれい・・・。
杏里は陶然となった。
こんな美女、見たことがない、とすら思った。
通った鼻筋。
小さめの口。
細く尖り気味の顎。
肌はきめの細かい乳白色をしている。
「あなた・・・」
杏里の顔にじっと視線を据えながら、女性がつぶやいた。
「ヤチカさんですか」
意を決して、杏里は訊いた。
杏里の顔を見つめたまま、女性がうなずいた。
「お訊きしたいことが、あるんです」
すると、女性の顔に花が開くように笑みが広がった。
「わかるわ」
右手の甲を口許に当て、くすっと笑った。
「うそみたい。こんなに早くあなたに会えるなんて、わたしはなんてツイてるのかしら」
すっと腰を上げた。
「どうぞ、こちらに」
背後にあるドアのほうを手で示して、いった。
「そう、わたしはヤチカ。あなたが来てくれるのを待ってたわ。こちらでお茶でも飲みながら、ゆっくりお話ししましょうか」
「いいんですか・・・?」
意外な成り行きに、杏里は戸惑った。
運よく画家に会えても、もっと警戒されるか、冷たくあしらわれるのではないかと思っていたのだ。
「もう、サイン会疲れちゃったし、お昼休みの時間でしょう? あとはスタッフがやってくれるから。いいのよ、わたしなんていなくても」
正装した外見に似合わず、ずいぶん人懐っこい感じの女性だった。
年の頃は30代前半くらいだろうか。
顔立ちは恐いほど整っているが、そこに浮かんでいる表情はどことなく愛嬌があり、好感が持てる。
いそいそと杏里の手を取ると、扉を開けて中へ導いた。
そこは楽屋裏のようなところだった。
狭い通路の片側に、いくつも部屋の扉が並んでいる。
かぐわしい香りが鼻腔をくすぐった。
ヤチカと名乗った女性が身に漂わせている、お香の匂いらしかった。
通路の突き当りが少し開けた空間になっていて、そこがセルフサービスの喫茶コーナーだった。
「コーヒー、飲める?」
杏里がうなずくと、紙コップにホットコーヒーを満たし、丸テーブルの上に置いてくれた。
自分の分もその隣に置くと、対面ではなく、斜め横に腰かけてきた。
「うわあ、なんだか感激だなあ」
杏里を見つめて、うれしそうにヤチカがいった。
「笹原杏里さん、でしょ? まさか、本物に会えるなんて」
手を伸ばし、白魚のような指で杏里の前髪に触る。
「ね、お顔、よく見せて・・・。うん、わたしの想像以上だわ。あなた、かわいい」
「あ、あの」
杏里は緊張のあまり金縛りに遭ったように固まってしまっていた。
ヤチカの突然の馴れ馴れしさに、ついていけなくなっていた。
「あ、ごめんなさい」
杏里の緊張が伝わったのか、ヤチカがすっと身を引いた。
「あんまりかわいいものだから、つい・・・」
そこで、杏里が膝の上に置いている画集を目に留めると、
「あ、それ、買ってくれたんだ。でも、びっくりしたでしょ? 勝手に自分の顔が使われてて」
ばつの悪そうな表情で、微笑んで見せた。
「どうして、私の顔、知ってるんですか?」
思い切って、杏里はたずねた。
これがまず、どうしても知りたい疑問である。
「ほら、あの拉致監禁事件のとき。あなたの顔、一時、ニュースやインターネットでよく流れてたでしょう? それで見たんだけど、ひと目で魅入られちゃったの。この子だ。この顔を描きたかったんだって」
ああ・・・あのときの。
・・・そうだったのか。
杏里は脱力した。
聞いてみれば、たわいもない理由だった。
呉秀樹にさらわれて、廃工場に監禁されたあの事件。
先月末の、あの事件の報道がきっかけだったとは・・・。
「あなたのこと、杏里ちゃんって呼んでいいかな。杏里ちゃんの顔って、すごく魅力的なの。切なげで、さびしそうで、何か、セカイに絶望しているように見えて、それでいて熱いというか・・・」
ヤチカがうたうようにいう。
「私の絵のあの子たちに、ぴったりだなって思うと、もういても立っても居られなくなって。それで全部の絵の顔を、急遽あなたの顔に描き直しちゃったのよ」
「そんな・・・」
無茶な、といおうとして、杏里は言葉を飲み込んだ。
ヤチカがうっとりとした表情で、自分を見つめていることに気づいたからだった。
「怒った? 肖像権の侵害で訴える? それとも、モデル料よこせって、わたしをゆする?」
ヤチカがからかうようにいった。
「そんなこと、思ってません」
杏里は少しむっとして、首を横に振った。
「わたしはただ、理由を知りたかっただけなんです」
「それともうひとつ、なんでこんな気味の悪い、残酷な絵ばかり描くのか、そう訊きたいんじゃない?」
ヤチカが悪戯っぽく声をひそめた。
「こんな残虐な絵を描くやつは、さぞかし不気味なド変態に違いないって、そう思ってたんじゃないの?」
一瞬ためらってから、杏里はうなずいた。
まさにそれが、2つ目の疑問だったからである。
「ううん、責めてるわけじゃないのよ。そう思うのが普通だもんね。現にこの個展だって、開くまでにずいぶん苦労したわ。人権団体のひとたちから抗議を受けたりもしたし。でもね、わたしは信じてるの。この世でもっとも美しいものは、杏里ちゃん、あなたたちの世代の女の子たちの裸だって。だけど、美しいものをただ美しく描いても、それは美をとらえたことにならない。ほら、完璧なものって、何の面白味もないじゃない。”美”が本来の姿を垣間見せてくれるのは、それが崩れ去る瞬間なの。だから、わたしは描くの。壊れかけた少女たちの裸体を。そこにあなたの顔が加わったから、わたしの絵は更に輝きを増したわ。これ以上を望むとすれば」
ヤチカが言葉を切り、杏里のほうに身を寄せてきた。
杏里は催眠術にでもかかったように、動けなくなっていた。
「今度は、あなたそのものを・・・顔だけじゃなく、あなたの全身を描くこと」
甘い吐息が首筋にかかる。
肩を抱かれた。
杏里のタンクトップは、肩のところが紐状に細くなっている。
それを、片方はずされた。
右肩とブラジャーが半ば顕わになる。
「素敵だわ、あなたの体」
ヤチカの指がブラをずらし、杏里の乳房をつまみ出す。
重量感のある片胸が、こぼれるように飛び出してきた。
それをヤチカが慈しむように掌ですくい上げる。
「杏里ちゃん、あなたが、こんなに素晴らしい身体の持ち主だったなんて・・・」
杏里のスカートは、坐るには短すぎる。
椅子に普通に腰かけるだけで、すぐにパンティの三角地帯が覗いてしまう。
乳房を弄びながら、ヤチカはそれに気づいたようだった。
瞳が潤んだような光を帯びた。
左手をスカートの中に差し入れてきた。
股間をそっと人差し指で撫でられた。
が、痴漢に遭ったときのように、嫌な気はしなかった。
むしろ、陶酔したような心地よさが、杏里の全身をじんわりと包み始めていた。
「ねえ、モデルになってくれないかな」
甘えるような声で、ヤチカがささやいた。
やさしい、絹で撫で回されるような愛撫に身をゆだねながら、杏里はやっとのことで、口を開いた。
「そ、それは・・・。もう、少し、考える時間を、いただけませんか?」
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