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第6部 淫蕩のナルシス

#55 トリプル・プレイ

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「来て」
 ヤチカが手招きした。
 腹にくっつかんばかりに反り返ったもの。
 それを左右に揺らしながら、正一が近づいてくる。
 着やせするたちなのか、裸になった正一は意外にたくましかった。
 割れた腹筋。
 細身の体は、バランスよく筋肉で覆われているようだ。
「杏里ちゃんは、ベッドの上で四つん這いになって」
 いわれるまま、手足をつき、正一のほうに高く尻を上げてみせる。
「正一、後ろから突いてあげて」
「いいのか?」
 正一が初めて声を出した。
「かまわない。杏里ちゃんを狂わせて、私をもっともっと興奮させてほしい」
「わかった」
 正一が杏里の腰をつかんだ。
 膨張した亀頭が割れ目をこじ開ける。
 濡れた肉襞がうごめき、ぬるりとそれをくわえこむ。
「うっ」
 正一がうめいた。
 腰をつかんだ手に力を込め、杏里を己の股間にぐいと引き寄せた。
 ずぶずぶと音を立て、太く長いものが体の中に入ってきた。
「あんっ」
 杏里は背を波打たせた。
 熱い。
 それに、見た目よりも更にずっと大きく太いようだ。
「行くぞ」
 正一がピストン運動を開始した。
 杏里の尻が小気味のいい音を響かせて、正一の腰に当たった。
「す、すごい…」
 あまりの気持ちよさに、杏里はおねだりするように、自分から腰を振った。
「私もしてあげる」
 ヤチカが腕を伸ばし、垂れ下がった杏里の乳を揉む。
「い、いく!」
 舌を吸われ、乳房を揉みしだかれながら、膣の奥の奥まで貫かれると、呆気なく杏里は果てた。
「まだまだよ」
 杏里から身を放すと、ヤトカが言った。
「ふたりとも、今度はベッドから降りて、杏里ちゃんは壁に両手を突いて」
 ヤチカに支えられ、ベッドから床に降りると、杏里は言われた通り、壁に両手を突いて頭を下げる姿勢をとった。
「正一、杏里ちゃんをバックで犯しながら、体を持ち上げるの。あとは立ったまま、下から突き上げる。あなたなら、きっとできるではず」
 正一がうなずいた。
 杏里はどきどきしながらふたりの会話を聞いていた。
 69もそうだったが、立ったままのセックスというのも、ほとんど経験がない。
 どんなふうなのだろう。
 そんなに、気持ち、いいものなのだろうか。
 正一の近づく気配がした。
 尻の肉を左右に開かれ、その間に再び熱い亀頭が分け入ってきた。
 杏里は腰をねじって、それを根元までしっかりとくわえ込んだ。
 正一はまだ十分な硬さを保っている。
 すごい耐久力だった。
 まだ射精していないのだ。
 まずはバックの姿勢で、何度か激しく突かれた。
 杏里の体の下で、リズムに合わせて乳房がたわわに揺れた。
 次に、正一が背後から杏里の腰をつかみ、おもむろに体ごと持ち上げてきた。
「ああああっ」
 杏里は叫んだ。
 身体が宙に浮き、つながれたまま、全体重をかけて正一の腰の上に乗ったのだ。
 両足を正一の腰に回し、落ちないように首筋にしがみつく。
 下から杏里を突きあげながら、正一が前歯で耳をかんでくる。
 自分の体重が膣の一点にかかってくるため、その快感といったらなかった。
 杏里を貫いたまま、正一が歩き出した。
 その振動が、また心地よい。
「キスして」
 杏里は唇を突き出し、正一に求めた。
 近くで見る正一は、アイドル顔負けの美青年だ。
 杏里の中のメスが目覚め、オスとしての正一を求めているのだった。
 正一がついばむように唇を触れさせてきた。
 杏里は口を開け、舌を伸ばし、自分から男を誘った。
「俺の、天使…」
 正一があえいだ。
「中に出しても、いいんだよ」
 正一の舌を夢中で吸いながら、杏里は言った。
「私はタナトス。大丈夫。絶対妊娠はしないから」
 
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