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第7部 蹂躙のヤヌス

#7 つぼみを開く

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 湯船から腰を上げると、杏里はいずなの前に立った。
 縁に腰かけているいずなを見下ろし、その華奢な肩に右手を置いた。
 いずなはうつむいたまま、じっと自分の膝に視線を落としている。
 きゅっと足を閉じ、膝小僧を震わせている。
 杏里に比べて脂肪層の薄いいずなは、痛々しいほどにやせて見えた。
 浮き出した肩甲骨と鎖骨。
 その下に盛り上がっている乳房のなんとささやかなことだろう。
 杏里はふと、半年前の自分を思い出した。
 タナトスとして覚醒するまでに、どれほどむごい目に遭ってきたことか。
 杏里が性的快感を覚えるようになったのは、誰かに教えてもらったからではない。
 ましてや、愛してもらったからでもなかった。
 度重なる凌辱に耐えているうちに、防御手段として、いわば自分で身につけたものなのである。
 だから、防衛本能が苦痛を快感に変換するすべを習得するまでは、ひどく辛かったことを覚えている。
 せめてこの子にだけは、そんな思いをさせたくない。
 怯えた仔鹿のようないずなを見下ろしながら、ふとそんなことを思った。
 性的快感を覚えることは、決して罪悪ではない。
 そのことを教えてやりたい。
 それに、そう認識することこそが、杏里たちタナトスが生き延びる道なのだ。
 いずなの髪をなで、気持ちを落ちつかせてやる。
 次に右手を下に伸ばし、手の甲で乳首の先をかすめるようにさすってやる。
 触れるか触れないかの微妙な接触に、いずなの身体がびくりと反応した。
 返す手で、もう片方の乳首をかすめると、がくんと少し腰を浮かせて、いずなは小さな声を上げたようだった。
 感度は良好のようだ。
 それを何度も繰り返すと、次第にいずなの吐息が荒くなってきた。
 機を見計らって、本格的に乳房を責めることにする。
 今度は右手の指を5本とも使い、交互に乳房を揉んでやった。
 いずなの乳房はようやく盛り上がりを見せ始めたばかりで、つかめる部分はほとんどない。
 が、その代わり、乳首の勃起が目立った。
 親指と人差し指でその固く尖ったつぼみをはさみ、ぐりぐりとひねり続けてやる。
 右に2回ひねっては左にも2回ひねり、固さを増したのを確かめてから、乳頭のくぼみに爪を立てて刺激する。
「ああ…」
 いずなが顔を上げ、杏里を見つめた。
 ものほしげに唇を半開きにしている。
 瞳が潤み、尋常でない光をたたえていた。
「どうしたいの?」
 じらすように、訊いてやる。
 これまで杏里が責められるたびに使われた手法である。
 それを今度は自分から使ってみる。
 新鮮でぞくぞくする体験だ。
「キス…キスしても、いいですか?」
 息を切らしながら、いずなが言った。
 その間にも杏里の指はいずなの乳首を責め続けている。
 いずなはカタカタと小刻みに体を揺らし、今にも倒れそうにゆらゆらしている。
「いいよ」
 杏里はにんまりと微笑んだ。
 上体をかがめ、乳首をいじる手はそのままに、いずなの顔に自分の顔を近づけていく。
 いずなは母親から餌をもらうひな鳥のように唇を尖らせ、半ば目を閉じて杏里を待っている。
 その乾いた唇を舌で舐めて湿らせると、杏里はゆっくりとキスの体勢に入った。
 唇を触れ合わせ、なぞるように左右に動かしていく。
 中心に戻ると、自分の唇を強く押しつけ、舌先でいずなの唇を割る。
 杏里の舌は長くてよく動く。
 数え切れぬほどのフェラやクンニの経験が、こんな時にも役に立つ。
 杏里のディープキスは強烈だ。
 早漏気味の男なら、キスだけで射精させてしまうことも可能である。
 そのテクニックにものを言わせ、いずなの舌を舌で攻める。
 からみつき、吸い、先で刺激し、前歯で噛む。
 唾液を送り込むと、喉を鳴らしていずなが飲んだ。
 いい傾向だ。
 杏里は空いたほうの手を伸ばして、いずなの太腿を割った。
 股間に指を滑らせると、いずなが自分から膝を開いていくのが分かった。
 無能のつるつるの部分を、2本の指で縦になぞってみる。
 股間に開いた会陰部は、意外と大きいようだ。
 びらびらを指でしごきながら、指の関節で陰核に触れてみる。
「あ…」
 杏里に舌を吸われたまま、いずなが息を呑んだ。
 ぬるりとした感触を指先に感じ、杏里は愛撫の手を速めた。
 まだだ。
 挿入は、もう少し、潤ってから。
 乳首をいじめ、膣の入口をなでまわしながら、いずなの耳元に唇を寄せると、熱い息を耳の穴に吹きかけて、杏里は訊いた。
「どう? いずなちゃん、気持ち、いい?」
「は、はい…」
 いずながぶるぶる震えながら答えた。
 触れ合う頬は、熱病にかかったように熱い。
「と、とっても…」
「かわいいよ」
 杏里の舌が、いずなの耳の穴に挿入される。
「あ」
 のけぞるいずな。
 膣からとろりと汁があふれてきた。
 それを指ですくって、”唇”全体に引き延ばす。
 穴が開く手触りがした。
 縁の肉がひくひくしている。
 身体が入れてほしがっているのだ。
「指、入れていい?」
 杏里はたずねた。
 こくこくと、いずなが機械人形のように、うなずいた。




 
 
 

 
 

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