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第7部 蹂躙のヤヌス

#44 祭りの準備

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 翌日、杏里が縁側に寝転がってファッション雑誌を眺めていると、重人が息せき切って駆け込んできた。
 学校が終わって、すぐに駆けつけてきたらしい。
 まるで調教された犬のようだ。
 尻尾があったら、今頃千切れんばかりに振っているところに違いない。
 杏里は相変わらず小さな紐パンティにシースルーのキャミソール一枚という格好だ。
 もちろんブラなどしていないから、豊満な乳房の形が丸見えである。
「わかったのね?」
 訊くと、忠犬と化した重人がうんうんとうなずいた。
「お部屋で話そう。先に行ってて。何か飲み物持ってきてあげる」
 ふたり分のカルピスをグラスに満たし、お盆に乗せて部屋に運んだ。
 重人はベッドの脇に突っ立ったままだ。
 居心地悪そうに、周囲を眺めている。
 杏里の部屋の装飾は、同年代の女子のものとはかなり違う。
 壁に大きなコルク製のボードがかけられ、そこに写真がいっぱい貼ってある。
 みんな自撮りした杏里自身の写真である。
 セーラー服姿、コスプレもの、下着姿からオールヌードまで、実にさまざまなラインナップといえた。
 ちなみにパソコンもそうだった。
 デスクトップのフォルダには、壁に貼れなかった自分のはしたない画像が、山のように保存してあるのだ。
 中には動画もあって、杏里はよくそれを眺めながら自慰にふけるのだった。
 写真を見ている重人は半ば放心状態で、その股間はすでにテントを張っている。
 どうやら、童貞には杏里の部屋は刺激が強すぎるらしい。
「意外に簡単だった。君の言う通り、教頭で試してみた。そしたら、すぐに教えてくれたよ。美里は、郊外の団地に住んでいる。かなり年季の入った公営住宅だ。だから中も狭いだろうし、入口はひとつしかないから、この前の堤英吾の豪邸に忍び込んだ時のようにはいかないよ」
 写真の群れから視線を引きはがすと、真顔に戻って重人が言った。
「忍び込む必要なんてないわ。正面突破に決まってるじゃない」
 テーブルにグラスを並べながら、杏里は答えた。
「正面突破…? それは、危険すぎないかい?」
 重人の顔に、怯えの色が浮かんだ。
 が、杏里はそっけない。
「わかったのはそれだけ?」
 わざと投げやりな口調でたずねた。
「う、うん、そうだけど…。正体がばれると厄介だから、まだ美里本人には、本格的に探りを入れてないんだ」
「いずなちゃんは? 彼女には話したの?」
「い、いや、まだ…。きょう、この後、話しに行こうかと思ってる」
「じゃ、カルピス飲んだら、行きなさい」
「え…?」
 重人が固まった。
 すがるような目で、見つめてくる。
「なあに? だって、もう、ご用は済んだんでしょ?」
「そ、そんな…。僕はゆうべ、一睡もできなかったよ。ずっと君のことばかり、考えて…」
「つまり」
 杏里はもぞもぞしている重人をにらみつけた。
「またしてほしいってこと?」
 重人が茹蛸のように赤くなる。
「ごほうびがほしいのね?」
 ズボンの前の”テント”が、その何よりのあかしだった。
「う、うん…」
「しょうがない子ね」
 杏里はため息をついた。
「なら、脱ぎなさい」
「え?」
 重人の目が点になる。
「服を脱いで、全裸になるの」
「で、でも、せめて、シャワーを…」
「必要ない。早く」
「わ、わかったよ」
 恥ずかしげにカッターシャツを脱ぎ、貧弱な裸身をさらす重人。
 ズボンとパンツも脱ぐと、きのう見たばかりの仮性包茎の陰茎がぶるんとそそり立った。
 腹につかんばかりに反り返っているのは、さすがに若い証拠である。
「そこに座って。じっとしてるのよ」
 杏里は机の引き出しから紐を取り出すと、重人の両手を後ろ手に縛り、それを更に両足首に縛りつけた。
「こ、これは、何?」
 達磨のような格好にされ、重人がうめいた。
 勃起した性器だけを前につき出した、見るからにみだらな体勢である。
「いいから」
 杏里は、そのペニスの根元を輪ゴムできつく縛った。
 更に洗濯ばさみをふたつ持ってきて、重人の乳首に取りつける。
 洗濯ばさみには紐が結わえつけてあり、いつでも引けるようになっている。
「ああ…」
 痛みと疼きに早くも喘ぎ出す少年。
 床に尻を落ちつけると、杏里は故意に片膝を立て、重人から下着がよく見えるよう、身体の角度を調整した。
 杏里のパンティは超がつくほど薄く、しかもぴったり肌に貼りついている。
 正面から見ると、恥丘の隆起とその間の筋がくっきりと見えるほどである。
 案の定、重人の視線が杏里のVゾーンに釘づけになった。
「何見てるの? いやらしいやつ」
 プラスチックの30センチ定規を右手に握ると、杏里はその先端で重人のペニスをぴしゃりと叩いた。
 俗にいう、スパンキングである。
 ただ、普通は行為の最中、尻っぺたをビンタすることが多い。
 が。
 マゾッ気のある重人には、これもまた十分に有効だ。
「くうう」
 切なく喘ぐ重人。
「ほんと、いやらしい目。重人がそんなにエッチだなんて思わなかった」
 パシッ。
 反対側からもう一度叩いてやる。
「恥ずかしくないの?」
 パシッ。
「女の子のパンティ見て、ここをこんなに硬くするなんて」
 パシッ。
 揺れるたびに、包皮が自然にめくれてきた。
 それだけ勃起が激しくなってきた証拠だった。
 包皮から半分ほどのぞいたピンク色の亀頭は、すでに濡れ始めているようだ。
 そこを狙って強く定規で叩いてやると、
「やん」
 重人が少女のような声を上げ、身体をぴくぴく震わせた。
「どうして興奮してるか、言ってごらんなさい。ほら、大きな声で。私に聞こえるようにね」
 そういう杏里の声も、熱を帯び始めている。
 由羅、私、できるかも。
 ふと、そんなことを思った。
 私、Sになってあなたとやれるかも。
 だって、これって、意外にぞくぞくするんだもん。
「す、好きだから」
 重人がむせび泣くように、言った。
「僕は、杏里のことが、好きだから…」
 杏里はにんまり笑った。
 相手が誰であれ、好きと言われて悪い気はしない。
「いいわ。じゃ、またいじめてあげる。あなたの大事なここが、ズル剥けになるまでね」

 
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