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第7部 蹂躙のヤヌス

#64 監禁調教⑧

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「足りないんでしょ?」
 美里の声に、杏里はうっすらと目を開けた。
 激しい運動をした直後のように、胸が大きく波打っている。
 深い谷間を汗が流れ、張り切った乳房がオイルを塗ったようにぬらぬらと光沢を放っている。
 美里の言う通りだった。
 全然、足りない。
 オルガスムスに達したものの、子宮の芯ではまだマグマが煮えたぎっている。
 むしろ、言葉だけの疑似セックスのせいで、乾きが倍加したような気さえするほどだ。
「は、はい」
 杏里はうなずいた。
「ちゃんと、してほしい、です。できれば、先生の、お口や、手で」
 そうなのだ。
 杏里が恋い焦がれているのは、言葉や道具による責めなどではなかった。
 一度でいいから、美里に抱かれてみたい。
 今になると、尚更強くそう思う。
 裸になった美里と、肌と肌を密着させ、汗まみれになって気の済むまでお互いを貪り合いたい。
 その思いが消えないのだ。
「どうして先生は、いつも服を着たまま、なんですか?」
 あふれる思いが、つい言葉となって口をついて出た。
「どうしていつも、私をちゃんと抱いてくれないんですか? 自分だけ服を着たまま、私を虐めるだけ虐めて」
 無意識のうちに、うらみがましい口調になっていた。
 その言葉に、眼鏡の奥の美里の眼がすっと細くなった。
「何を生意気なこと、言ってるの。小便臭い小娘のくせに」
「私は小娘なんかじゃ、ありません。その気になれば、先生を喜ばせてあげることだって、できるんです」
「たいした自信ね」
 美里が見下すような調子で言った。
「でも、私はまだあなたに触れる気はないわ。あなたみたいなメス猫は、これで十分」
 テーブルの上から、さっきのマッサージ器を取り上げた。
 2本を両手に持ち、スイッチを入れる。
 ブーンと音を立てて、ウレタン製の亀頭に似た部分が振動し始めた。
「また、それなの? もう、やめて、私をじらして遊ぶのは」
 杏里が抗議の声を上げかけた時だった。
「じらす? 誰がじらすなんて言ったの?」
 美里が乳首めがけて、正確に2本のマッサージ器を突き出した。
「ああああぅっ!」
 触れられたくてたまらない個所にいきなり強烈な刺激を食らい、杏里はのけぞった。
 びんびんに勃った乳首が柔らかいウレタンに突き刺さり、そのまますごい勢いで震え始めたのだ。
 がくんと腰を前につき出すと、ちゅっと音がして、愛液が噴き出した。
「いい、いい、いいっ!」
 噴出が止まらない。
 がまんできず、自分から胸を押し当てていった。
 マッサージ器がまん丸の乳房を圧し潰し、肋骨にまで振動を伝えてくる。
 背骨が小刻みに震え、尾てい骨の辺りが熱を持ち始める。
「あふううっ」
 たまらず限界まで足を開いてしまっていた。
 そこに、毛むくじゃらの重い物がのしかかる。
 猫だった。
 あの太った猫が、吹き出した愛液に目ざとく気づいて、舐めにやってきたのだ。
 みゃあん。
 ざらざらの舌で、割れ目を思いっきり舐め上げられた。
「あんっ!」
 椅子をがたつかせて痙攣し始める杏里。
 美里は無表情に悶え狂う杏里を見つめたまま、無言でマッサージ器を乳首に押しつけてくる。
「くうう…!」
 過敏になった乳首が激しい振動で、更に硬く大きくなっていく。
 杏里の眼球がじりじりと裏返る。
 唇の端から舌が飛び出した。
 その舌でねちゃねちゃと自分の唇を舐め始める。
「あううっ」
 猫の舌がむき出しのクリトリスに当たる。
 突起に気づくと、すごい勢いで舐め出した。
 皿に入ったミルクを舐める時のような勢いだ。
 ペチャペチャという音が杏里の快楽中枢をくすぐった。
 とめどなくあふれ出す汁をおいしそうに猫が舐めているのだ。
「そ、そこは、だ、だめ…」
 身体が不自由なだけに、そのもどかしさが余計に気持ちいい。
 私は、生き人形…。
 なんでも受け入れる、ラブドール。
 人形工房で見た、セックスのためだけに作られた精巧な人形たち。
 あれと私は何も変わらない…。
 その認識が、杏里をまたしてもオルガスムスにまで追い込んだ。
「い、いくっ!」
 猫の顔面に大量のしぶきを浴びせかけながら、杏里はいつしか果てていた。

 

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