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第8部 妄執のハーデス
#17 狐目の少女③
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「簡単に言うとね。彼女は人間じゃなかったってこと」
これ以上、見え透いた嘘をついても璃子には通じない。
直感的にそう悟った杏里は、ここはとりあえず、できるだけ真実に近い作り話で押し通すことにした。
「美里が人間じゃないって? はあ? 何わけわかんねえこと言ってんだよ? おまえ」
璃子の声が尖った。
三白眼が、剃刀のようにすっと細くなる。
「最後まで聞いて。いい? 先生は、”面談”と称してあなたたち生徒を個別に呼び、定期的に性的な悪戯を仕掛けていた。何のためかわかる? あなたもそれからこのおデブちゃんも、何度も被害に遭ったわけなんでしょう?」
「だから、それは、あたいらのストレスを取り除くためなんだろう? 美里はいつもそう言ってたさ」
「そうかしら? だってあなたもクラスのみんなも、全然ストレス、消えてないじゃない。むしろ性的欲求が高まって、爆発しかけているように見えるけど」
「そうだよお、そこまでわかってるなら、杏里ちゃんが美里の代わりになればいいよお」
杏里の首筋に舌を這わせながら、ふみが言う。
背後からがっしりと杏里の裸体を抱きしめたまま、太った蛞蝓のような舌であちこちを舐めているのだ。
「そ、それは…美里がいなくなって、ストレスを吸収してくれる相手が、いなくなったから…」
珍しく、璃子が口ごもった。
杏里に指摘され、自分でも、その矛盾に気づいたのかもしれなかった。
それに意を強くして、杏里は勢い込んだ。
「ただそれだけなら、ストレスがかえって高まった説明にはならないでしょ? あなたたちは、先生に面談”されるたびに、逆に性欲を引き出されていた。なぜなら、彼女の本当の目的は、あなたたちの生のエキスを吸収することにあったから。彼女が吸い取っていたのは生徒たちのストレスじゃない。命なのよ」
「生のエキス? 命? ふん、何なんだよ、それ」
璃子が不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「男子なら精液、女子なら愛液。とにかく、性的に興奮した人間が分泌するすべてのもの。先生の身体は、病に侵されていた。その病をそれ以上進行させないための特効薬が、生のエキスだったってことなの」
「病? 美里は病気だったっていうのか?」
「そう。何の病気かまでは知らないけれど、身体中が変形する業病みたいだった。先生、暑い日でもずっとスーツ着たままだったでしょ? ブラウスのボタンは首まで留めてたし。あれは、病に冒されて醜くなった皮膚を露出しないためだったの。でも、私は見てしまった。そして、先生の意図に気づいた。だから…」
「だから? だから、殺したっていうのか?」
「だって、そうしないと、私が殺されるところだったから。全身のエキスを吸われて、干からびたミイラにされるところだったから」
「そんな与太話、信じねえぞ。美里が病気で、その治療のために、あたいらのその、エキスとやらを吸ってたなんて…。けどな、これだけはわかった。やっぱり美里はおまえに殺されたんだ。ならば、ここで美里の仇を取るしかねえ。だろ? 少なくとも、美里はあたいらの大事な大事な担任だったんだからな」
璃子が竹刀を放り出した。
代わりに取り出したのは、折り畳み式のナイフである。
カチッと音をさせて刃を飛び出させると、右手に構えて杏里を睨みつけた。
「さあ、どこがいい? さっきの続きでお〇んこをズタズタにするか、それとも腹を裂いて内臓を引きずり出すか」
「話が違うじゃない!」
杏里は抗議した。
「本当のこと話したら、もう傷つけないって言ったじゃない!」
「そんな約束、した覚えねえよ。おい、ふみ。しっかりつかまえてろよ。今からこいつの腹をカチ割って、大腸だの小腸だのを引きずり出してやっから。そしたらあとはおまえにやるから、煮るなり焼くなり好きにするがいい」
「ひゃあ、本当にいいのかい?」
ふみが舌なめずりする、気味の悪い音がした。
「わあ、楽しみい。湯気の立つほっかほかの杏里ちゃんの内臓、ふみのオモチャにしちゃっていいんだね?」
これ以上、見え透いた嘘をついても璃子には通じない。
直感的にそう悟った杏里は、ここはとりあえず、できるだけ真実に近い作り話で押し通すことにした。
「美里が人間じゃないって? はあ? 何わけわかんねえこと言ってんだよ? おまえ」
璃子の声が尖った。
三白眼が、剃刀のようにすっと細くなる。
「最後まで聞いて。いい? 先生は、”面談”と称してあなたたち生徒を個別に呼び、定期的に性的な悪戯を仕掛けていた。何のためかわかる? あなたもそれからこのおデブちゃんも、何度も被害に遭ったわけなんでしょう?」
「だから、それは、あたいらのストレスを取り除くためなんだろう? 美里はいつもそう言ってたさ」
「そうかしら? だってあなたもクラスのみんなも、全然ストレス、消えてないじゃない。むしろ性的欲求が高まって、爆発しかけているように見えるけど」
「そうだよお、そこまでわかってるなら、杏里ちゃんが美里の代わりになればいいよお」
杏里の首筋に舌を這わせながら、ふみが言う。
背後からがっしりと杏里の裸体を抱きしめたまま、太った蛞蝓のような舌であちこちを舐めているのだ。
「そ、それは…美里がいなくなって、ストレスを吸収してくれる相手が、いなくなったから…」
珍しく、璃子が口ごもった。
杏里に指摘され、自分でも、その矛盾に気づいたのかもしれなかった。
それに意を強くして、杏里は勢い込んだ。
「ただそれだけなら、ストレスがかえって高まった説明にはならないでしょ? あなたたちは、先生に面談”されるたびに、逆に性欲を引き出されていた。なぜなら、彼女の本当の目的は、あなたたちの生のエキスを吸収することにあったから。彼女が吸い取っていたのは生徒たちのストレスじゃない。命なのよ」
「生のエキス? 命? ふん、何なんだよ、それ」
璃子が不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「男子なら精液、女子なら愛液。とにかく、性的に興奮した人間が分泌するすべてのもの。先生の身体は、病に侵されていた。その病をそれ以上進行させないための特効薬が、生のエキスだったってことなの」
「病? 美里は病気だったっていうのか?」
「そう。何の病気かまでは知らないけれど、身体中が変形する業病みたいだった。先生、暑い日でもずっとスーツ着たままだったでしょ? ブラウスのボタンは首まで留めてたし。あれは、病に冒されて醜くなった皮膚を露出しないためだったの。でも、私は見てしまった。そして、先生の意図に気づいた。だから…」
「だから? だから、殺したっていうのか?」
「だって、そうしないと、私が殺されるところだったから。全身のエキスを吸われて、干からびたミイラにされるところだったから」
「そんな与太話、信じねえぞ。美里が病気で、その治療のために、あたいらのその、エキスとやらを吸ってたなんて…。けどな、これだけはわかった。やっぱり美里はおまえに殺されたんだ。ならば、ここで美里の仇を取るしかねえ。だろ? 少なくとも、美里はあたいらの大事な大事な担任だったんだからな」
璃子が竹刀を放り出した。
代わりに取り出したのは、折り畳み式のナイフである。
カチッと音をさせて刃を飛び出させると、右手に構えて杏里を睨みつけた。
「さあ、どこがいい? さっきの続きでお〇んこをズタズタにするか、それとも腹を裂いて内臓を引きずり出すか」
「話が違うじゃない!」
杏里は抗議した。
「本当のこと話したら、もう傷つけないって言ったじゃない!」
「そんな約束、した覚えねえよ。おい、ふみ。しっかりつかまえてろよ。今からこいつの腹をカチ割って、大腸だの小腸だのを引きずり出してやっから。そしたらあとはおまえにやるから、煮るなり焼くなり好きにするがいい」
「ひゃあ、本当にいいのかい?」
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