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第8部 妄執のハーデス

#31 穢れた聖母

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 杏里の唾液の効果は覿面だった。

 もどかしげにズボンのファスナーを下ろすと、少年が指でペニスをつかみ出した。

 青唐辛子のような、未発達な細いペニスである。

 青筋を立てて反り返っているものの、ウインナー程度の長さしかない。

 もちろん、先はすっぽり皮をかぶっている。

 意味不明な叫びを上げて、少年がそれを杏里の太腿の内側に押しつけてきた。

 そして、触れたとたん、漏らした。

 杏里の光沢のある肌に、白濁した液体が飛び散った。

 あまりにも未熟だった。

 杏里は、内腿を流れる卵の白身に似た生暖かい液体を、無感動に見下ろした。

 これだから、童貞は…。

 でも、手間がかからなくて、逆にいいかも。

 余裕でそんなことを考えた。

 ぐにゃぐにゃになって、前を押さえたまま、床にくずれ落ちる少年。

「次は、だあれ?」
 
 ソックスを履いた足先で座り込んだ少年を押しのけて、杏里は群集を順々に見渡した。

 おまえ、行けよ。

 やだよ。

 押し合いへし合いする少年たち。

 あっけなく果ててしまったクラスメートの醜態を目の当たりにして、すっかりひるんでしまっているようだ。

 みゆき、行きなさいよ。

 だね。みゆきがいいよ。

 女子たちのひそひそ声。

 やがて前に押し出されてきたのは、ずいぶんとまた、大人しそうな少女だった。

 どうやらクラスの連中は、クラスカーストの底辺の者から順に、生贄に差し出すことに決めたようだ。

 杏里は目の前の少女を見た。

 今時珍しい、三つ編みの髪。

 そばかすの散った顔。

 あの稲盛いずなよりも、もっと純朴そうな娘である。

「いいの?」

 かわいそうになって、一応、訊いてみた。

 しばしの逡巡の後、こくんとうなずく少女。

 多少、好奇心もあるというわけか。

「わかったわ」

 うなずくと、杏里は右手を顔の前にかざし、長い舌を突き出してペロリと舐めた。

 何度も舐めて手のひらを唾液まみれにすると、その手をおもむろに少女の襟元に差し入れた。

 木綿のスポーツブラは、このやせっぽちの少女には、少しサイズが大きすぎるようだ。

 隙間から、杏里の手が中に入り、5本の指がまだ膨らみかけたばかりの乳房をそっとつかんだ。

「く」
 
 少女が上体を折った。

 乳房は手のひらにすっぽり収まる大きさだった。

 ゆっくり揉みながら、唾液をその柔らかい表面にまんべんなくなすりつけていく。

「あ」

 さっきの少年同様、少女が震え始めた。

 上半身を反らして、杏里に胸を押しつけようとする。

 命じるまでもなく、自らブラウスのボタンをはずし始めた。

 ブラが落ち、痛々しいほど幼い隆起があらわになる。

 杏里は上体を乗り出すと、その頂で膨らみ始めている桜色の突起に顔を近づけた。

 舌を伸ばし、尖らせた先端で小さな乳頭を軽くつついてやる。

 突起が生き物みたいに跳ねた。

「ああああ…」

 少女の喘ぎが長く尾を引いた。

 よろよろと後ろに下がると、その場にぺたんと尻もちをつき、大きく股を広げてしまう。

 細い脚の間に見える木綿の下着の中央に、染みが広がりつつあるのがわかった。

「誰か、その子の相手をしてあげて」

 少女に興味を失って、投げやりに杏里は言った。

「それともオナニーの仕方、教えてあげるとか」

 クラスメートたちの間に、ざわめきが起こる。

 杏里はほとんど何もしていない。

 なのにもう、ふたりも犠牲者が出てしまったのだ。

 衆人環視の場で果てる恥辱に、誰もが恐れ戦いているのに違いなかった。

「私としたいの? したくないの?」
 
 杏里の挑発に、

「俺が相手になるぜ」

 野太い声が答えた。

「早いのね。もう大ボス?」

 人垣を割って現れたたくましい肉体を見上げて、杏里は微笑んだ。

 目の前に、中学生離れした体つきの、片幅の広いがっしりした少年が立っていた。

 すでに上半身裸になり、下もボクサーパンツ一枚だ。

 その前がはちきれんばかりに盛り上がっているのを見て、杏里は心の中で身構えた。

 さあ、ここからが本番ね。

 

 



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