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第8部 妄執のハーデス

#74 インターバル⑥

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 肌には相性がある。

 見た目がどんなに美しい肌でも、実際に触れ合ってみると、虫唾が走る心地に襲われる。

 そんなことだって、ある。

 その点、由羅は安心だ。

 パートナーとして選ばれただけあり、杏里の肌との相性は抜群なのだ。

 そのことは、初めて出会い、いきなり唇を奪われたあの時からわかりすぎるほど、わかっていた。

 だから、狭いベッドの上で抱き合っただけで、杏里の全身は潤い始めていた。

 下になり、杏里のたわわな乳房を由羅が口に含んでいる。

 乳房全体を口いっぱいに含まれ、時折乳首を舌先で転がされると、鋭い快感が杏里の脊椎を駆け抜けていった。

 杏里の毛穴という毛穴から透明な体液が分泌され、由羅の傷ついた裸身を潤していく。

 タナトス固有のこの防護液には、身体を守る働きがある。

 多少の傷なら、数分とたたぬうちに傷口の細胞が活性化され、元通りに修復してしまうのだ。

「もういいだろ?」

 杏里の乳房から口を離して、由羅が言う。

「まだだめ」

 杏里は首を横に振った。

「まだ、目蓋の腫れが残ってるし、あちこちの筋肉が痛んでるよ」

 由羅の太腿に股間をこすりつけ、”中心”が十分に潤っているのを確認すると、杏里は身体を反転させた。

 由羅の股の間に顔をうずめ、同時にゆっくと相手の顔に己の陰部をかぶせていく。

「しょうがないな」

 苦笑する由羅。

「あん」

 濡れそぼった割れ目を舌でひと撫でされ、杏里は思わず甘い吐息を漏らした。

 目の前にある由羅の秘部は、杏里同様、無毛である。

 その縦長の”唇”が、ユウの能力をラーニングした杏里の眼には、淡いオレンジ色に光って見える。

 オレンジ色の部分は、太腿の内側にも点在しているようだ。

 秘部を直接責める前に、杏里はまずそちらを試してみることにした。

 オレンジ色の斑点を狙って舌で舐め、指で軽い愛撫を繰り返していると、SMプレイ以外ではほとんど反応したことのない由羅の肉体に、微妙な変化が起き始めた。

 肌がほんのりと赤味を帯び始め、すぐに恥丘のあわいに朝露のような光の粒が現れたのだ。

「うう…」
 
 小さく喘ぐ由羅。

 興奮してる。

 杏里は歓喜で身が震えるのを感じた。

 由羅が、私の愛撫に、感じ始めている…。

 その実感が、杏里を更に昂ぶらせた。

 己の蜜壺からあふれ出す愛液を、腰を振りながら由羅の顔に塗りつけた。

 それに呼応して、由羅の舌の動きが激しくなる。

 蜜壺の入口を刺激するだけに留まらず、硬くなり始めた杏里の肉の芽をも責め始めたのだ。

 そうしながら、伸ばした両手で杏里の乳房を鷲掴みにして、リズミカルに揉みしだく。

「ゆら…」

 杏里はひと声名前を呼ぶと、目の前の濡れたオレンジ色に夢中でむしゃぶりついた。

「あああ…」

 由羅が敏感に反応し、ブリッジのように腰を浮かそうとする。

 肉の裂け目から滲み出す生暖かい液体を、舌ですくって口の中に運んだ時だった。

 突然、杏里の脳裏に、あの”眼”が現れた。

 長い睫毛に覆われた、赤茶色の瞳孔。

 その中心で、黄金色の点が光っている。

 -おや、まだ生きてるのかい?-

 巨大なひとつ目をぎょろりと動かして正面から杏里を見据え、サイコジェニーがからかうように”言っ”た。

 -おまえ、できそこないのくせに、なかなかしぶといねー
 

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