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第8部 妄執のハーデス
#82 2回戦①
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服をすべて脱ぎ捨て、狭いベッドの上で由羅とふたり抱き合っていると、またたく間に時間は過ぎた。
由羅の性感帯はすべて見えている。
だから、触手を使ってのSMプレイに頼らなくても、そこを攻めれば由羅を絶頂に導くことはた易いはずだ。
だが、杏里はあえてそれを実行に移さなかった。
今はまずお互いの体力を温存すべき時だったし、なによりもそれは、すべてが終わった後の自分への褒美に取っておこうと考えたのである。
由羅が起き上がったのは、”試合”開始の30分前のことだった。
優しいしぐさで杏里を押しのけてベッドから下りると、スレンダーな身体にただ黙々と革製の”戦闘服”を身に着け始めた。
「もう、行くの?」
シーツでたわわな胸を隠してベッドの上に横座りになり、小首をかしげて杏里は訊いた。
「ああ。早めに行って、試合会場の様子を見ておきたい。B4の体育館は、初めてだから」
「わかった」
ベッドから滑り下り、杏里は椅子にかけてあった白のレオタードを手に取った。
杏里の準備は簡単である。
身体にフィットし過ぎたこの際どいレオタードを身につけ、その上からマイクロミニを穿くだけで済むからだ。
部屋を出ると、住人が半分に減ったせいか、通路は以前にもまして寒々しく、殺風景だった。
「ほんとに、ももちゃんたちを助けに行くつもり?」
エスカレーターに向かいながら、杏里は由羅の右肘に己の腕を絡めた。
「うん」
短く由羅がう言う。
「いくらなんでも、Xの残虐性は目に余る。あのふたりを、そんな酷い目に遭わせるわけにはいかないだろ?」
「そうだけど…」
「できれば、久美子たちと共闘して、Xを倒したい。その後どうするかは、その時また考えればいい」
由羅らしい、乱暴な結論である。
三つ子とXが死ねば、当然杏里たちは最後に久美子たちを相手にすることになるのだが、そのことをどう考えているのか。
「じゃ、とにかく、一刻も早く、あの三つ子を倒さないとね」
深く突っ込むのはやめて、杏里は言った。
「由羅は前、私は何もしなくていいって言ったけど、こうなると話は別だよね。なんせ向こうは3人なんだから」
「そうだな。事実、1回戦でユウを仕留めたのは、杏里の触手だったもんな。今になってわかる。うち、思い上がり過ぎてた。やっぱりふたりで力を合わせるのが一番かもな。ったく、情けないパートナーで、ごめんよ」
「ううん、そんなことないよ。やめて。そんな弱気な由羅、気味が悪い」
杏里は由羅の腕に頬をすりつけた。
由羅はどうして、そんな優しいことばかり言うのだろう?
冷たい予感に、ぞっとする。
これじゃ、まるで、自ら進んで死亡フラグを立ててるみたいじゃない…。
地下4階も、地下3階とまったく同じつくりだった。
長い通路の突き当りが、体育館の両開きの扉である。
扉は閉まっていたが、施錠はされていなかった。
重いステンレススチールの扉を押すと、まばゆいばかりの照明が、通路にこぼれ出た。
「な、何だ? これ?」
中に一歩足を踏み入れるなり、由羅がうめいた。
同時に杏里も、それに気づいていた。
体育館の内部の壁が、ものすごい様相を呈している。
あちこちに大きな穴が開き、ところによっては、蚯蚓腫れを連想させる巨大な亀裂が走っているのだ。
「彩加の仕業だな」
壁の傷跡を眼で追いながら、茫然と由羅がつぶやいた。
「相当な怪力だ。厚い壁板が、ズタズタになっている」
1回戦で、彩加はジャンプとキックを使ってきた。
三つ子は確か、そんなことを言っていたはずだ。
壁に穴を開けるほどの威力だったとも。
しかし、まさか、これほどとは…。
「あいつら、この馬鹿力に勝ったのか」
由羅の眼がすうっと細くなる。
「杏里…油断するな。チャラチャラして見えるけど…やつら、予想以上に手ごわいかも」
由羅の性感帯はすべて見えている。
だから、触手を使ってのSMプレイに頼らなくても、そこを攻めれば由羅を絶頂に導くことはた易いはずだ。
だが、杏里はあえてそれを実行に移さなかった。
今はまずお互いの体力を温存すべき時だったし、なによりもそれは、すべてが終わった後の自分への褒美に取っておこうと考えたのである。
由羅が起き上がったのは、”試合”開始の30分前のことだった。
優しいしぐさで杏里を押しのけてベッドから下りると、スレンダーな身体にただ黙々と革製の”戦闘服”を身に着け始めた。
「もう、行くの?」
シーツでたわわな胸を隠してベッドの上に横座りになり、小首をかしげて杏里は訊いた。
「ああ。早めに行って、試合会場の様子を見ておきたい。B4の体育館は、初めてだから」
「わかった」
ベッドから滑り下り、杏里は椅子にかけてあった白のレオタードを手に取った。
杏里の準備は簡単である。
身体にフィットし過ぎたこの際どいレオタードを身につけ、その上からマイクロミニを穿くだけで済むからだ。
部屋を出ると、住人が半分に減ったせいか、通路は以前にもまして寒々しく、殺風景だった。
「ほんとに、ももちゃんたちを助けに行くつもり?」
エスカレーターに向かいながら、杏里は由羅の右肘に己の腕を絡めた。
「うん」
短く由羅がう言う。
「いくらなんでも、Xの残虐性は目に余る。あのふたりを、そんな酷い目に遭わせるわけにはいかないだろ?」
「そうだけど…」
「できれば、久美子たちと共闘して、Xを倒したい。その後どうするかは、その時また考えればいい」
由羅らしい、乱暴な結論である。
三つ子とXが死ねば、当然杏里たちは最後に久美子たちを相手にすることになるのだが、そのことをどう考えているのか。
「じゃ、とにかく、一刻も早く、あの三つ子を倒さないとね」
深く突っ込むのはやめて、杏里は言った。
「由羅は前、私は何もしなくていいって言ったけど、こうなると話は別だよね。なんせ向こうは3人なんだから」
「そうだな。事実、1回戦でユウを仕留めたのは、杏里の触手だったもんな。今になってわかる。うち、思い上がり過ぎてた。やっぱりふたりで力を合わせるのが一番かもな。ったく、情けないパートナーで、ごめんよ」
「ううん、そんなことないよ。やめて。そんな弱気な由羅、気味が悪い」
杏里は由羅の腕に頬をすりつけた。
由羅はどうして、そんな優しいことばかり言うのだろう?
冷たい予感に、ぞっとする。
これじゃ、まるで、自ら進んで死亡フラグを立ててるみたいじゃない…。
地下4階も、地下3階とまったく同じつくりだった。
長い通路の突き当りが、体育館の両開きの扉である。
扉は閉まっていたが、施錠はされていなかった。
重いステンレススチールの扉を押すと、まばゆいばかりの照明が、通路にこぼれ出た。
「な、何だ? これ?」
中に一歩足を踏み入れるなり、由羅がうめいた。
同時に杏里も、それに気づいていた。
体育館の内部の壁が、ものすごい様相を呈している。
あちこちに大きな穴が開き、ところによっては、蚯蚓腫れを連想させる巨大な亀裂が走っているのだ。
「彩加の仕業だな」
壁の傷跡を眼で追いながら、茫然と由羅がつぶやいた。
「相当な怪力だ。厚い壁板が、ズタズタになっている」
1回戦で、彩加はジャンプとキックを使ってきた。
三つ子は確か、そんなことを言っていたはずだ。
壁に穴を開けるほどの威力だったとも。
しかし、まさか、これほどとは…。
「あいつら、この馬鹿力に勝ったのか」
由羅の眼がすうっと細くなる。
「杏里…油断するな。チャラチャラして見えるけど…やつら、予想以上に手ごわいかも」
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