激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【官能編】

戸影絵麻

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第8部 妄執のハーデス

#98 最終決戦⑦

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 頃合いだった。
 最終戦まで、あと1時間。
 テーブル備え付けの紙ナプキンを大量に使い、顔と股間の汚れをぬぐった。
 下着とスカートを身につけ、ずり上がったブラと上着を元に戻す。
「もう一度、シャワーを浴びたら、会場に行こう」
 ふらつく杏里の肘を支えて、由羅が言った。
「身体中が、あったかい」
 杏里は両手で自分の肩を抱きしめた。
 寸止めでやめておく。
 そう言った由羅の言葉は、本当だった。
 あれほど激しく弄ばれたにもかかわらず、杏里は達してはいなかった。
 何度かいきかけたが、そのたびに由羅が緩急をつけて、愛撫を調整したらしい。
 だが、そのおかげで、子宮の奥が疼くように熱くひくついている。
「そうか。もう、2回戦、終わってるんだね」
 おしぼりで顔を拭き終えた重人が、今更のようにつぶやいた。
「次が、最後の戦いというわけなんだ」
「ああ。おかげでうちらは立派な人殺しさ」
 由羅が本気とも冗談ともつかぬ口調で言った。
「でも、これだけは言えると思う。もし殺さなかったら、うちも杏里も殺されてた。だから、生きる残るためには、仕方なかったんだ」
「わかるよ。別に僕は責めてない。君たちには、生き延びてもらわなきゃ、困るんだ」
「できれば杏里の手は汚させたくはなかった…けど、うちの力が及ばなくてね。申し訳ないことしちまったよ」
「私は平気」
 杏里は由羅の腕をつかむ指に力を込めた。
「由羅だけを悪者になんて、できないもの。それに、自分の身は、自分で守らなきゃ」
「ふたりとも、気をつけて。僕はきょうの夕方の便で、ここを発つ。一緒に帰れることを願ってる」
「杏里のサポートを、忘れるな。なんとかテレパシー能力を復活させるんだ」
「うん。部屋に戻ったら、試してみる。杏里、あんなことまでしてくれたんだ…。きっと、気持ちが通じ合う土台ができたと思う」

 エスカレーターで上階に向かう重人を見送ると、由羅と杏里は一度部屋に戻った。
 ふたり一緒にシャワーを浴び、狭い浴室で裸のまま抱き合った。
 もう、言葉は不要だった。
 熱いキスを交わし、むさぼるように、お互いの舌を吸い合った。
 乳房同士を強く押しつけ合うと、互いの股間に指を伸ばし、相手の秘部を触り合う。
「ああ、由羅…私」
 エクスタシーの波に押し流されそうになり、思わず切ない吐息を吐いた時、由羅が身を離して低い声で囁いた。
「もっとこうしていたいけど…。残念だ。時間だよ」






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