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#54 黒衣の天使無双
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バタバタと翼をばたつかせて、鳥のようなものが飛んでくる。
天井近くを舞うそれは、よく見るとページを広げたファイルだった。
その空飛ぶファイルの群れに、乙都が注射器で聖水を吹きつける。
もののけたちに対して聖水は意外に効果があるらしく、あたると白い煙を上げて落ちてきた。
その間にも狂気のパレードは止まらない。
ぐにゃぐにゃ身体をねじりながら、右手の角から自動販売機が歩いてくる。
その後ろにキャビネットやステンレスのロッカー、キャスター付きの椅子などが続いている。
左手からは鰐みたいに短い脚を動かしながら、手術用ベッドが迫ってきた。
ベッドの上にはなぜか招き猫と片目の入った達磨が乗っている。
「うざいわっ!」
蓮月が、点滴スタンドを長刀みたいに振り回す。
バレーボールみたいなバストが揺れ、胸当てからこぼれそうになる。
鋼鉄の台座に直撃され、ぐしゃっと音を立てて自動販売機が吹っ飛んだ。
返す刀という感じで蓮月がスタンドを振り上げ、今度は垂直に叩き下ろした。
反動をつけるために右足を大きく上げたので、ミニスカートがやばいくらいにめくれあがり、太腿がつけ根まで丸見えになる。
次の瞬間悲鳴を上げたのは、僕らに飛びかかろうと身構えていた鰐みたいな手術用ベッドである。
蓮月の重い一撃が、その背中を真っ二つに断ち割ったのだ。
反動で飛び上がった招き猫と達磨が床に転がり、すっくと立ちあがるなり逃げ出した。
「オト、あれ! あいつがこのパレードのリーダーに違いないよ!」
蓮月が叫んだ時には、すでに乙都が駆け出していた。
事務机や自動販売機の残骸の間をちょこまか逃げる達磨に追いつき、ミニワンピから伸びた足で蹴り上げる。
むちむちの太腿の間から一瞬下着が見えた気がしたけど、そんなことに気を取られている場合ではなかった。
「えい!」
中に舞い上がった達磨に向かって注射器を突き出す乙都。
長い針が目玉の入っていない白い眼を貫き、
「ぐぎゃっ!」
しわがれた悲鳴を上げて達磨が息絶えた。
「よし、もういいだろう」
あたりが鎮まったのを見て、瑞季先生が言った。
「このもののけたちは、これでも元はといえば大事な医局の備品だからな。あまり派手にぶっ壊すんじゃない」
「あの、これ、いわゆる”付喪神”ってやつですか?」
掛布団から目だけ出して、訊いてみた。
「ああ、似たようなものかな。ただし、これはあやかしというより、感染症に近いんだが」
ベッドを押しながら、面倒くさそうに先生が答えた。
「感染症、ですか?」
「心配するな。人間には感染しない。愚者のスペルマは、調合の仕方しだいによって、一時的に無機物に命を与える。そういうことだ」
愚者のスペルマ?
なんなんだ、それは?
「ICU到着。異常なし」
先頭を歩いていた乙都が扉の前に立ち止まり、窓から中をのぞきこんだ。
「わかった。開けろ。中に入ったらすぐに、レンゲは管理室でスタンバイ。オトは手術用キッドの点検を頼む」
「あいさー」
ふたりのブラックナースが敬礼すると、瑞季先生が胸の谷間からカードを取り出して壁の検知器にかざした。
天井近くを舞うそれは、よく見るとページを広げたファイルだった。
その空飛ぶファイルの群れに、乙都が注射器で聖水を吹きつける。
もののけたちに対して聖水は意外に効果があるらしく、あたると白い煙を上げて落ちてきた。
その間にも狂気のパレードは止まらない。
ぐにゃぐにゃ身体をねじりながら、右手の角から自動販売機が歩いてくる。
その後ろにキャビネットやステンレスのロッカー、キャスター付きの椅子などが続いている。
左手からは鰐みたいに短い脚を動かしながら、手術用ベッドが迫ってきた。
ベッドの上にはなぜか招き猫と片目の入った達磨が乗っている。
「うざいわっ!」
蓮月が、点滴スタンドを長刀みたいに振り回す。
バレーボールみたいなバストが揺れ、胸当てからこぼれそうになる。
鋼鉄の台座に直撃され、ぐしゃっと音を立てて自動販売機が吹っ飛んだ。
返す刀という感じで蓮月がスタンドを振り上げ、今度は垂直に叩き下ろした。
反動をつけるために右足を大きく上げたので、ミニスカートがやばいくらいにめくれあがり、太腿がつけ根まで丸見えになる。
次の瞬間悲鳴を上げたのは、僕らに飛びかかろうと身構えていた鰐みたいな手術用ベッドである。
蓮月の重い一撃が、その背中を真っ二つに断ち割ったのだ。
反動で飛び上がった招き猫と達磨が床に転がり、すっくと立ちあがるなり逃げ出した。
「オト、あれ! あいつがこのパレードのリーダーに違いないよ!」
蓮月が叫んだ時には、すでに乙都が駆け出していた。
事務机や自動販売機の残骸の間をちょこまか逃げる達磨に追いつき、ミニワンピから伸びた足で蹴り上げる。
むちむちの太腿の間から一瞬下着が見えた気がしたけど、そんなことに気を取られている場合ではなかった。
「えい!」
中に舞い上がった達磨に向かって注射器を突き出す乙都。
長い針が目玉の入っていない白い眼を貫き、
「ぐぎゃっ!」
しわがれた悲鳴を上げて達磨が息絶えた。
「よし、もういいだろう」
あたりが鎮まったのを見て、瑞季先生が言った。
「このもののけたちは、これでも元はといえば大事な医局の備品だからな。あまり派手にぶっ壊すんじゃない」
「あの、これ、いわゆる”付喪神”ってやつですか?」
掛布団から目だけ出して、訊いてみた。
「ああ、似たようなものかな。ただし、これはあやかしというより、感染症に近いんだが」
ベッドを押しながら、面倒くさそうに先生が答えた。
「感染症、ですか?」
「心配するな。人間には感染しない。愚者のスペルマは、調合の仕方しだいによって、一時的に無機物に命を与える。そういうことだ」
愚者のスペルマ?
なんなんだ、それは?
「ICU到着。異常なし」
先頭を歩いていた乙都が扉の前に立ち止まり、窓から中をのぞきこんだ。
「わかった。開けろ。中に入ったらすぐに、レンゲは管理室でスタンバイ。オトは手術用キッドの点検を頼む」
「あいさー」
ふたりのブラックナースが敬礼すると、瑞季先生が胸の谷間からカードを取り出して壁の検知器にかざした。
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