異世界病棟

戸影絵麻

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#84 儀式④

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「やめ…ろ」
 僕はもがいた。
「やめて、くれ・・・」
 性欲で身体中が煮えたぎっている。
 僕の躰はだんだんと太くなり、そして短くなっていく。
 それに反比例して、頭と尾の亀頭部分は成熟度を増していくようだ。
「おお、おお、いい感じになってきた」
 すぐ後ろで真琴が言った。
 その時になって初めて、僕は壁際のキャビネットのガラス扉に、部屋の中の様子が映っていることに気づいた。
 また、変化が起きていた。
 プランターから生えた植物の化け物みたいだった北条真琴が、人間の姿に戻っている。
 白衣を着た、女医の恰好をしている。
 ひとりだけ白衣なのは、闇のように黒い肌を際立たせるためだろうか。
 縮んでいく僕を床から抱き上げると、真琴は乙都の横たわるベッドの足元に置いた。
 僕はもう仔犬ほどの大きさにまで収縮してしまっている。
 今や、亀頭と亀頭の間を短い胴がつないでいるだけになっている。
「私もご相伴にあずかることにするわ」
 目を細めてそんなことを言うと、真琴が白衣を脱ぎ始めた。
 下から現れたのは、影絵のように真っ黒な裸身である。
 優雅な曲線を描いたシルエットは、成熟した若い女性のものだが、乳房も乳首も臍もすべて真っ黒だ。
「な、なにを・・・?」
 僕は亀頭の先端に開いた切れ込みを動かして、必死で音声を発した。
 ふたつに割れた鈴口が動き、その奥の尿道口からかろうじて声が出た。
「何をって? 性行為に決まっているでしょ? 少年、あなたは増殖した前立腺の塊なの。神の酒、ネクタルを生産するための工場みたいなものなの。それがどれだけできてるか、試してみたいの。それには、この看護師見習いひとりでは、荷が重すぎる」
 真琴が言うと、ブラックナースがふたり、加勢にやってきた。
 彼女たちにも変化は起きていて、いつのまにかみな人間の姿に戻っていた。
 ふたりのナースが、ラグビーボールみたいな形になった僕をベッドの上に押しつける。
 それに合わせて残りのナースが手を伸ばし、全裸の乙都を大の字にしてベッドに押さえ込んだ。
 頭のすぐ上に、180度開脚した乙都の下半身がある。
 その中央に盛り上がる縦長の唇が、かすかに開いて露をにじませている。
 目を背けようにも、躰を押さえつけられていてそれも不可能だ。
「乙都、ごめん…」
 思わず、そう口にした時だった。
 それまで、喘ぎ声以外、ひと言も発しなかった乙都が、ぽつりと言った。
「私は、いいの…颯太さんなら…」

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