異世界病棟

戸影絵麻

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#86 ループする劣情

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 世界はサイケデリックな桃色と真紅に染まり、溶鉱炉の底のように熱く煮えたぎっている。
 僕は筋肉にぎゅうぎゅう締めつけられている。
 一度破裂したのに、まだ許してもらえない。
 周囲は何層にも重なった肉の壁と粘液に覆われ、どこか上のほうから錯綜した喘ぎのようなものが響いてくる。
 あんなに出したにもかかわらずー。
 上半身を乙都の胎内に、下半身を真琴の胎内に呑み込まれた僕は、またしても、次第に硬く膨張し始めていた。
 ハアハアハア・・・。
 ふたりの女が悶えるように腰を振る。
 腰を振って、僕をもっと躰の奥へ飲みこもうとしている。
 どうやらふたりは全裸で抱き合い、狂おしく互いの股間をこすりつけ合っているようだ。
 喘ぎ声の合間に、粘土をこねるような卑猥な音が聞こえることからそれとわかる。
 脚を交差させて下半身を密着させ、乳房が変形するまで勃起した乳首を押しつけ合い、喘ぎの合間にディープなキスを交わす。
 そんなふたりの淫猥な姿を想像すると、僕は興奮でいたたまれなくなってくる。
 ハート形のつるりとしたピンクの器官を頭部と尾部に生やし、それをつなぐ短い胴にはしわくちゃの袋だけ。
 それが今の僕の姿だった。
 女たちは僕のハート形の器官をそれぞれ熱い子宮に触れるまで呑み込み、間の陰嚢を潰れんばかりに圧迫する。
 ざらついた襞に敏感な部位を撫で回され、裏側までこすり上げられ、あまりの快感に僕の双つの頭が膨張する。
 筒状の胴体が震え、血管の束を浮き立たせて硬くなる。
 放出直後は海生動物のユムシみたいに萎えていた全身が、今や供給される血液を充填させてカチコチだ。
 先端に縦に刻まれた切れ目のような小さな口を開けて思わず喘ぐと、青臭い白濁液の名残りが吹き出した。
 だ、だめ・・・。
 いいわ…その調子・・・とっても、いい・・・。
 喘ぎ声が高まり、世界が揺れる。
 あ、あん…。そ、そんなことしたら…私、おかしくなっちゃう…。
 いいのよ…自分を忘れて・・・もっと、乱れなさい…。
 興奮のあまり、脳の血管が切れそうになる。
 そうだ、あの時も、こうだった。
 あれは、乙都と、真琴だったのだ。
 海綿体で構成された身体を疼くような快感に浸され、乙都と真琴の睦言に高ぶりながら、突然僕は思い出す。
 深夜、僕は下半身裸で、パソコンの前に胡坐をかいていた。
 画面に映るのは、全裸で抱き合うふたりの女。
 脚を相手の腰に絡め、股間を突き出して責めるタチ役の真琴と、豊満な肢体を攻められ、喘ぐネコ役の乙都。
 まさかあの時、こすり合わされたふたりの性器をつないでいたのが、この僕だったなんて…。
 とにかくそれは、これまで見たなかで、最高にそそる光景だった。
 そして究極のエクスタシーに襲われ、僕は冠動脈を詰まらせ、倒れたのだ…。
 すぐに救急車を呼ばなかったのは、精液まみれの自分が恥ずかしかったからだった。
 オナニーで絶頂に至り心臓発作を起こしたなんて、たとえ救急隊員や医師にも知られたくなかったから…。
 呼吸困難に陥る寸前見た、PCの画面の中の光景。
 それを思い出して、僕は限界まで怒張する。
 どういうことなのか、わからない。
 時系列も、無茶苦茶だ。
 激しい快感に痙攣し始めながら、でも、と僕は確信する。
 間違いない。
 あの時見たのは、紛れもなく、今ここで展開されているあられもない光景ー。
 双頭ペニスと化した僕を使って責める真琴と、受け身ながらそれを受け容れ、激しく乱れ狂う乙都の姿だったのだ…。
 でも、と一瞬、疑念が湧いた。
 本当に、それだけか?
 じゃあ、冷蔵庫の中のあれは、いったい、何?
 
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