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#119 浮遊都市ポラリスの秘密⑲

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 それは、消防自動車の放水に酷似していた。

 とても自分のあそこから放出されたとは思えぬ太い水流が、フロアを横切って、津波のごとくドームの消えたステージに襲いかかったのだ。

「ソフィア、ごめん、身体を支えてて!」

 反動で吹き飛ばされそうになり、あわてて私は叫んだ。

「だはーっ! 何よこれ? これもエロ魔法なの?」

 仰天しながらも、ソフィアが素早く後ろに回り、ぐいと私の腰を抱きしめ、盾になってくれた。

 強烈な反作用に耐えながら、両脚を踏んばり、照準器代わりの乳房をターゲットに向けてやる。

 大量の愛液を正面からまともに喰らい、背後の壁に叩きつけられる少女たち。

 しかも愛液はただの水とは違い、粘り気がある。

 それがトリモチみたいに作用して、彼女らの行動を完全に奪ってしまったようだ。

 放水、いや、潮吹きは、1分ほど続き、やがてぷつんと途絶えた。

 私には、永遠にも思えるほど長い1分だった。

「よくやった」

 肩越しにラルクの声がして、振り向くと、タオルとスキャンティを差し出された。

「これで股を拭いてパンツを穿け。いつまでもその格好では、そのうち街の防犯組織に検挙される」

 そこへふわふわとコボちゃんが戻ってきて、ラルクの隣に立っている一平の右肩に着地した。

「おい、エロ幽霊、どうやってバリアを解除したんだ?」

 横柄な口調で、一平がたずねた。

 コボちゃんは、曲がりなりにも、今は亡きコボルト族の王である。

 もう少し、口の利き方ってものがあるだろうに。

「傘のワンタッチボタンを、念力で押したんでしょ?」

 ソフィアの肩を借りて、スキャンティに足を通しながら、横から口を挟むと、

「まあ、そうじゃ。おぬし、よくわかったのう。わしはボタンを見ると、つい押したくなるものでな」

 満足そうにクフクフ笑いながら、コボちゃんが答えた。

  思った通りである。

 スカートをめくったくらいで、人形が動揺するとは考えにくいから、可能性はそれしかない。 

 ボタンを押せば、傘は張りを失って、少しすぼんだ形になる。

 たぶん、それでバリアが解けたのだろう。

「さあ、アラクネをとっ捕まえて、白状させましょ。ポラリスにまで忍び込んで、いったい何を企んでるのか」

 チェストアーマーから出たアンダーウェアの袖を腕まくりして、浮き浮きとソフィアが言った。

「俺は、あんまり尋問とか好きじゃないんだけどな」

 血気盛んな妹と対照的に、尻込みする書斎派の兄。

「あ、ゴーモンならおいらに任せてよ。暗闇始末人時代に培ったノウハウ、見せてやるからさ」

 こちらも楽しそうに一平が口を出す。

 私はどちらかというと、心情的にはラルクに賛成だ。

 でも、これ以上アラクネに妨害されるのも癪である。


 ステージの上は、水浸し、いや、ラブジュース浸しだった。

 チーズっぽい匂いが、半端ない。

 自分の愛液の中を歩くなんて。

 これにはさすがの私も、顔を赤らめざるを得なかった。

「いたいた」

 と、これは一平。

 足を投げ出して動かない、黄泉平坂46の3人娘たち。

 なのに、あれ?
 
 アラクネの姿がない。

「くう、逃げられた。相変らず、逃げ足の速い女」

 ソフィアが苦々しげにつぶやいた。

 私は茫然と天井を仰いだ。

 あの放水の中、あの子、いったいどうやって脱出したのだろう?



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