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#123 幻界のミューズ③
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そのとたんである。
ブーッ、ブーッ、ブーッ。
頭の中に警告音が鳴り響き、気を削がれた私は、たたらを踏んで危うくこけそうになった。
-メンテナンス中ー
脳内スクリーンに現れたのは、黄色の文字。
-すみません。また言い忘れてましたー
女神の声がした。
-ただいま、美尻クィーンは休暇をとっています。何でも、珍朴菜との一戦で持病のいぼ痔が悪化したとかでー
「えー? そんな召喚獣、聞いたことないよ!」
私は呆れた。
確かに珍朴菜の渾身の”突き”で、美尻クィーンは真下から串刺しにされ、悶絶した。
でも、持病のいぼ痔って何よ?
召喚獣って、何度やられても、次に召喚される時は新品同様にピカピカになって出てくるもんじゃないの?
昔やったゲームはそうだったし、んもう、大事なとこでつまんないギャグかまさないでよね!
「どうした?」
ポーズを途中で取りやめた私に向かって、ラルクがたずねた。
「美尻ボンバーは、しばらく使えないって。美神が怪我の治療中」
「うーん、それはまずいな。ローリング69は、体型的にカニ相手じゃ無理だろうし」
「だよね。あれは巨人の男限定だもんね」
などと会話しているうちに、ガラガラと数軒先でビジネスホテルが崩れ始めた。
お化けカニの真っ赤なはさみが、手当たり次第に周囲の建物をなぎ倒しているのだ。
やばい。
やばすぎる。
早く打つ手を考えないと。
と、その時。
「あ、あれを見て」
ふいに私の腕をつかみ、ソフィアが言った。
「ほら、カニの頭のとこ。何か、透明なドームみたいなものが見えてない?」
「あ、ほんとだ」
私より早く、野生児の一平が反応する。
ジャングル暮らしが長いため、恐ろしく視力が良いに違いない。
「誰か乗ってる。あのカニ、きっと、あいつが操作してるんだ」
「なるほど、有人ロボットというわけか。ならば、おそらく操縦してるのは、アラクネで間違いない」
うなずくラルク。
つまり、あれ、ガン〇ムや〇ヴァみたいなものっていうことだね。
そう認識したとたん、ひとつアイデアが閃いた。
だったら攻略法はある。
なんだ、簡単なことじゃない。
「ね、ソフィア、お願いがあるんだけど」
私は細い腕をつかみ返して、ソフィアに向き直った。
「なあに、お願いって? また『おっぱい揉んで』とか、そういうの?」
期待に声を弾ませて、ソフィアが顔を寄せてくる。
「じゃ、なくって」
私は眉を怒らせた。
『また』ってどういうことよ?
それじゃ、私がきわめつけのビッチみたいじゃない!
「ソフィアのサポ、竜騎士だったよね」
気を取り直し、確認する。
「うん」
「スキルのドラゴン・ジャンプで、あの蟹の上まで飛べるかな?」
「お安いご用。あの程度の高さなら、助走なしでもいけるわね」
得意そうに、鼻の頭を指先でこするソフィア。
「なら、私を抱いて、あそこまでジャンプしてくれない?」
「いいけど、どうするの?」
「空中から、あのコクピットを攻撃するの。ピンポイントで、アラクネだけを狙い撃ち」
「いいね。でも、市街戦では、乳首ミサイルは御法度だよ。爆発すると、危険だから。他に何かあるの?」
「あるよ。今、思い出した」
そう、”あれ”があるではないか。
次から次へと魔法を覚えるので、すっかり忘れていた。
それに、こいつは確か、覚えたての時に、一回使ったきりのはず。
私は軽く念じて、右手に武器を出現させた。
ウィップ(しびれフグ付)である。
「え? ムチ? そんなんであの風防ガラス、割れるかな」
小首をかしげるソフィア。
「これは予備。本命は別の魔法だよ」
ウィップを腰に差すと、私は背中側から、ソフィアの首に両腕を回した。
「さ、行って。なるべくカニの真上、できるだけ高いところまで、お願い」
「アイアイサー!」
ソフィアがうなずき、私を背負ったまま、すっと身を沈めた。
そして。
身体中の力を腰の筋肉に集中し、
次の瞬間、跳んだ。
ブーッ、ブーッ、ブーッ。
頭の中に警告音が鳴り響き、気を削がれた私は、たたらを踏んで危うくこけそうになった。
-メンテナンス中ー
脳内スクリーンに現れたのは、黄色の文字。
-すみません。また言い忘れてましたー
女神の声がした。
-ただいま、美尻クィーンは休暇をとっています。何でも、珍朴菜との一戦で持病のいぼ痔が悪化したとかでー
「えー? そんな召喚獣、聞いたことないよ!」
私は呆れた。
確かに珍朴菜の渾身の”突き”で、美尻クィーンは真下から串刺しにされ、悶絶した。
でも、持病のいぼ痔って何よ?
召喚獣って、何度やられても、次に召喚される時は新品同様にピカピカになって出てくるもんじゃないの?
昔やったゲームはそうだったし、んもう、大事なとこでつまんないギャグかまさないでよね!
「どうした?」
ポーズを途中で取りやめた私に向かって、ラルクがたずねた。
「美尻ボンバーは、しばらく使えないって。美神が怪我の治療中」
「うーん、それはまずいな。ローリング69は、体型的にカニ相手じゃ無理だろうし」
「だよね。あれは巨人の男限定だもんね」
などと会話しているうちに、ガラガラと数軒先でビジネスホテルが崩れ始めた。
お化けカニの真っ赤なはさみが、手当たり次第に周囲の建物をなぎ倒しているのだ。
やばい。
やばすぎる。
早く打つ手を考えないと。
と、その時。
「あ、あれを見て」
ふいに私の腕をつかみ、ソフィアが言った。
「ほら、カニの頭のとこ。何か、透明なドームみたいなものが見えてない?」
「あ、ほんとだ」
私より早く、野生児の一平が反応する。
ジャングル暮らしが長いため、恐ろしく視力が良いに違いない。
「誰か乗ってる。あのカニ、きっと、あいつが操作してるんだ」
「なるほど、有人ロボットというわけか。ならば、おそらく操縦してるのは、アラクネで間違いない」
うなずくラルク。
つまり、あれ、ガン〇ムや〇ヴァみたいなものっていうことだね。
そう認識したとたん、ひとつアイデアが閃いた。
だったら攻略法はある。
なんだ、簡単なことじゃない。
「ね、ソフィア、お願いがあるんだけど」
私は細い腕をつかみ返して、ソフィアに向き直った。
「なあに、お願いって? また『おっぱい揉んで』とか、そういうの?」
期待に声を弾ませて、ソフィアが顔を寄せてくる。
「じゃ、なくって」
私は眉を怒らせた。
『また』ってどういうことよ?
それじゃ、私がきわめつけのビッチみたいじゃない!
「ソフィアのサポ、竜騎士だったよね」
気を取り直し、確認する。
「うん」
「スキルのドラゴン・ジャンプで、あの蟹の上まで飛べるかな?」
「お安いご用。あの程度の高さなら、助走なしでもいけるわね」
得意そうに、鼻の頭を指先でこするソフィア。
「なら、私を抱いて、あそこまでジャンプしてくれない?」
「いいけど、どうするの?」
「空中から、あのコクピットを攻撃するの。ピンポイントで、アラクネだけを狙い撃ち」
「いいね。でも、市街戦では、乳首ミサイルは御法度だよ。爆発すると、危険だから。他に何かあるの?」
「あるよ。今、思い出した」
そう、”あれ”があるではないか。
次から次へと魔法を覚えるので、すっかり忘れていた。
それに、こいつは確か、覚えたての時に、一回使ったきりのはず。
私は軽く念じて、右手に武器を出現させた。
ウィップ(しびれフグ付)である。
「え? ムチ? そんなんであの風防ガラス、割れるかな」
小首をかしげるソフィア。
「これは予備。本命は別の魔法だよ」
ウィップを腰に差すと、私は背中側から、ソフィアの首に両腕を回した。
「さ、行って。なるべくカニの真上、できるだけ高いところまで、お願い」
「アイアイサー!」
ソフィアがうなずき、私を背負ったまま、すっと身を沈めた。
そして。
身体中の力を腰の筋肉に集中し、
次の瞬間、跳んだ。
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