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#148 魔王軍基地潜入計画⑧
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「怪獣島のう。それはちょいと、難しいかもしれんのう」
スクナのおばばがお茶をすする手を止め、首をかしげた。
私たちは、名古屋駅の改札を抜け、無事この異世界に戻ってきたところだった。
ここは黄鶴楼の2階。
奥の座敷みたいなところである。
「だが、この季節、赤海には赤エビ漁の漁船が毎日のように出ているはずじゃないか? それに乗せてもらえば」
煙草をくゆらせながら、ラルクが言う。
この季節って、いったい今はいつなんだろう?
その言葉を聞いて、ふと私は思った。
ずっと砂漠だのジャングルだのが舞台だったので、この世界の季節がわからない。
「まあ、そうなんじゃが、ただ、怪獣島近辺は、昔からリバイアさんが出るといわれておってのう。誰も近づきたがらないんじゃ」
「リバイアさん?」
老婆の発音は、『リバイアサン』ではなく『リバイアさん』に聞こえた。
『サン』と『さん』では、なんだか意味がだいぶ違いそうだよ。
「リバイアさんというのは、文字通り海の女神じゃ。伝説では、ポセイどんの妻だと言われておる」
「ポセイどん? ポセイドンじゃなくって?」
私はまた訊き返した。
ばあさんの発音が悪いのか、それともマジでそういう名前なのか。
どっちにしろ、それじゃまるで、『西郷どん』じゃないの。
「大丈夫だ。こっちには、翔子のビッチファッカーがある。怪獣だろうと海の神だろうと、まず負けはしないさ」
自信たっぷりにラルクが胸を張る。
おいおい。
私は呆れた。
まだ試運転もしてないのに、いきなりそれですか。
だいたいまだ、3分しかもたないって、言ってるのに。
それにさ、神様と怪獣をごっちゃにしていいのかな?
「そこまで言うなら仕方がない。わしから司政官に頼んで、おぬしら専用の飛空艇を出させてもよいが」
司政官というのは、最初に会ったソゴルとかいう未来人っぽい男のことだろう。
「ありがたい。恩に着る」
ラルクが頭を下げ、ちゃぶ台の上にういろうを一本差し出した。
「お礼にこれを」
「なんと」
老婆のふたつの顔が、同時に言った。
「これは伝説の異界名物」
「そう。その名も『ういろう』という」
厳かに告げるラルク。
意外にも、けっこう喜ばれてるっぽいぞ。
「ところで、向こうでアラクネに会ったけど、あの子、逃げ出したんですか?」
席を立ちついでに、ソフィアがたずねた。
顔をしかめているのは、慣れぬ正座で足がしびれたからだろう。
「おうさ。見習いとして、3人プレイの補助につけたのじゃが、客と先輩芸伎がまぐわっておる隙に、こっそり置き屋を抜け出したらしいのじゃよ。まったく油断も隙もありゃしない」
「あいつとも、いつか決着をつけないとな」
したり顔で一平が言った。
「今度会ったら、おいらがバックから犯して悶絶させてやるよ」
「何言ってんの、この童貞ボーイが」
すかさずソフィアが一蹴する。
私はじゃれあうふたりを眺めながら、ぐびりと番茶を喉に流し込んだ。
いよいよかあ。
あー、やだよう。
ロボットになんか、乗りたくないんだってば。
スクナのおばばがお茶をすする手を止め、首をかしげた。
私たちは、名古屋駅の改札を抜け、無事この異世界に戻ってきたところだった。
ここは黄鶴楼の2階。
奥の座敷みたいなところである。
「だが、この季節、赤海には赤エビ漁の漁船が毎日のように出ているはずじゃないか? それに乗せてもらえば」
煙草をくゆらせながら、ラルクが言う。
この季節って、いったい今はいつなんだろう?
その言葉を聞いて、ふと私は思った。
ずっと砂漠だのジャングルだのが舞台だったので、この世界の季節がわからない。
「まあ、そうなんじゃが、ただ、怪獣島近辺は、昔からリバイアさんが出るといわれておってのう。誰も近づきたがらないんじゃ」
「リバイアさん?」
老婆の発音は、『リバイアサン』ではなく『リバイアさん』に聞こえた。
『サン』と『さん』では、なんだか意味がだいぶ違いそうだよ。
「リバイアさんというのは、文字通り海の女神じゃ。伝説では、ポセイどんの妻だと言われておる」
「ポセイどん? ポセイドンじゃなくって?」
私はまた訊き返した。
ばあさんの発音が悪いのか、それともマジでそういう名前なのか。
どっちにしろ、それじゃまるで、『西郷どん』じゃないの。
「大丈夫だ。こっちには、翔子のビッチファッカーがある。怪獣だろうと海の神だろうと、まず負けはしないさ」
自信たっぷりにラルクが胸を張る。
おいおい。
私は呆れた。
まだ試運転もしてないのに、いきなりそれですか。
だいたいまだ、3分しかもたないって、言ってるのに。
それにさ、神様と怪獣をごっちゃにしていいのかな?
「そこまで言うなら仕方がない。わしから司政官に頼んで、おぬしら専用の飛空艇を出させてもよいが」
司政官というのは、最初に会ったソゴルとかいう未来人っぽい男のことだろう。
「ありがたい。恩に着る」
ラルクが頭を下げ、ちゃぶ台の上にういろうを一本差し出した。
「お礼にこれを」
「なんと」
老婆のふたつの顔が、同時に言った。
「これは伝説の異界名物」
「そう。その名も『ういろう』という」
厳かに告げるラルク。
意外にも、けっこう喜ばれてるっぽいぞ。
「ところで、向こうでアラクネに会ったけど、あの子、逃げ出したんですか?」
席を立ちついでに、ソフィアがたずねた。
顔をしかめているのは、慣れぬ正座で足がしびれたからだろう。
「おうさ。見習いとして、3人プレイの補助につけたのじゃが、客と先輩芸伎がまぐわっておる隙に、こっそり置き屋を抜け出したらしいのじゃよ。まったく油断も隙もありゃしない」
「あいつとも、いつか決着をつけないとな」
したり顔で一平が言った。
「今度会ったら、おいらがバックから犯して悶絶させてやるよ」
「何言ってんの、この童貞ボーイが」
すかさずソフィアが一蹴する。
私はじゃれあうふたりを眺めながら、ぐびりと番茶を喉に流し込んだ。
いよいよかあ。
あー、やだよう。
ロボットになんか、乗りたくないんだってば。
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