6 / 79
第1章 あずみ
action 5 情報
僕の洋間には二人掛けの小さなソファがあって、あずみはそこに腰かけていた。
ソファが深いせいで、両脚が少し上がり気味になり、膝小僧の間から純白の下着が見えている。
むっちりした太腿とその禁断のゾーンの悩殺Wコンボから無理やり視線を引きはがし、僕はこほんとわざとらしい咳をした。
しばらく見ないうちに、あずみは女性として更なる進化を遂げているようだった。
ふんわりと顔を覆うやわらかそうな肩までの髪。
ぱっちりした目は垂れ眼気味な分、愛嬌があって可愛らしい。
小さめの鼻とぽってりした唇が、官能的なアクセントをその童顔に添えている。
ほっそりとした白い首は浮き出た鎖骨に続き、そのすぐ下から始まる急傾斜がセーラー服の胸元を押し上げているのだが、そのふくらみ具合といったらまさしく熟れた果実か空気の詰まった風船だった。
「あれ、ゾンビだと思うの」
僕が淹れたコーヒーに唇をつけて、あずみが言った。
「きっとどこかで、ゾンビウィルスが洩れたんだよ」
「信じられんが…」
僕はごくりと熱いコーヒーを飲み干した。
「でもこの状況は、確かに…」
窓を閉めていても聞こえてくる悲鳴。
さっきちらっと覗いたら、公園一帯は阿鼻叫喚の生き地獄と化していた。
駆けつけるパトカーや救急車。
ところが、車両から降りるなり、警官や救急隊員たちも次から次へと狂った群衆に襲われ、血みどろになって地面に倒れていくのだ。
倒れた者もしばらくすると起き上がり、今度は襲撃する側の仲間入りをする。
マジでゾンビ映画が現実と化してしまったようなのである。
テレビでは、地元局の放送はすでに映らなくなっていた。
予想以上に事態は悪いほうへと進展しているのかもしれなかった。
「絶対に外に出るな。状況が落ち着くまで、ここで籠城だ」
僕は重々しい口調で言った。
が、言ってしまってから、まずい、と後悔した。
食料も飲み物も、備蓄があまりない。
非常事態に備えるなどという感覚は、ふだんの僕にはかけらもないからだ。
しかもふたり分ともなると、数日ですっからかんになることは目に見えている。
いずれは食料調達のために、外界に出ることを余儀なくされる日が来るに違いない。
「パソコン、貸してくれる? スマホ、外のバッグの中だから」
猫舌でちびちびコーヒーを飲み終えると、少し落ち着いたのか、あずみが言った。
「いいけど、どうするんだ?」
「調べてみる。もう何か、大事な情報が上がってるかもしれないもの」
「OK]
机の上のノートパソコンを、あずみの前に置いてやる。
かがみこんだ時、深い胸の谷間がもろに見えて、ついどきっとしてしまう。
僕はその間、机の前の椅子に座って窓から外の様子を観察することにした。
ーこちらは照和警察です。住民の皆さん、外出は控えてください。街中で、凶暴化した暴徒の一団が暴れています。くれぐれも無用な外出はー
そんなアナウンスを流しながら、ミニパトがのろのろと徐行していく。
車道では、すでにあちらこちらで渋滞が起き始めている。
ドライバーのゾンビ化した車が、何台も道路に乗り捨てられているからだった。
「ツイッターはデマばっかりだから、あんまり当てにならないね」
画面を熱心に見つめながら、あずみが言う。
「あ、でもこのブログは、ちょっとまともそう」
「ブログ?」
「うん。ちょっと読んでみるね。
【原因】
昨夜の那古野大学生物科学研究所の爆発。それにより、研究中の病原菌が拡散か。
【感染から発病まで】
この謎の病原菌に感染すると、人は一度行動不能になり、また復活する。その期間は人によって個人差があり、数分で復活を遂げる者もいれば、数時間かかる者もいる。ただ共通しているのは、復活後、感染者は凶暴になり、人肉を好む体質に変わるということ。外見にも大きな差異が現れ、それは皮膚の角質化、瞳孔の消失など、概して醜い変化が多い。身体能力に関しては、発病後のほうが若干高くなる傾向があるが、これはおそらく痛覚を失ったことからくる副作用だと思われる。
【ドームとの関連】
那古野市を覆った透明なドームとのこの事象との関連には現在のところ、裏付けになるものはない。しかし、同時に生じた事象であるがゆえに、偶然とは思われない。
だって。けっこう詳しいでしょ。書いてるの、お医者さんかな」
「あるいは、政府関係者とか」
「ネームは、ケロヨンだよ。ケロヨンって、なんか可愛い」
くすっと笑うあずみ。
おまえのほうがずっと可愛いよ。
ったく、どうしてくれるんだ、このドキドキ感。
心の中で思わずそう毒づいてしまう。
気を取り直して、一番気になっていたことを、訊いてみた。
「ところであずみ、おまえ、ここへ来るまでの間に、その、噛まれてないだろうな? ゾンビに」
「大丈夫だよ。なんなら服脱いで裸になろうか? お兄ちゃんになら、特別にあずみのヌード、見せてあげてもいいけど。どう、見たい?」
しなをつくって、上目遣いに僕の顔を覗き込むあずみ。
その小悪魔っぽいまなざしと仕草に、僕は耳のつけ根まで赤くなった。
「い、いや、今は遠慮しておく」
「今は? 今は、って、どういうこと?」
「大人をからかうもんじゃない」
ムッとして言い返すと、てへっと笑ってあずみが言った。
「あ、廊下に置いた荷物取って来なきゃ。もうさっきのゾンビ、いないよね? ねえねえ、怖いから、お兄ちゃん、一緒についてきてくれる?」
ソファが深いせいで、両脚が少し上がり気味になり、膝小僧の間から純白の下着が見えている。
むっちりした太腿とその禁断のゾーンの悩殺Wコンボから無理やり視線を引きはがし、僕はこほんとわざとらしい咳をした。
しばらく見ないうちに、あずみは女性として更なる進化を遂げているようだった。
ふんわりと顔を覆うやわらかそうな肩までの髪。
ぱっちりした目は垂れ眼気味な分、愛嬌があって可愛らしい。
小さめの鼻とぽってりした唇が、官能的なアクセントをその童顔に添えている。
ほっそりとした白い首は浮き出た鎖骨に続き、そのすぐ下から始まる急傾斜がセーラー服の胸元を押し上げているのだが、そのふくらみ具合といったらまさしく熟れた果実か空気の詰まった風船だった。
「あれ、ゾンビだと思うの」
僕が淹れたコーヒーに唇をつけて、あずみが言った。
「きっとどこかで、ゾンビウィルスが洩れたんだよ」
「信じられんが…」
僕はごくりと熱いコーヒーを飲み干した。
「でもこの状況は、確かに…」
窓を閉めていても聞こえてくる悲鳴。
さっきちらっと覗いたら、公園一帯は阿鼻叫喚の生き地獄と化していた。
駆けつけるパトカーや救急車。
ところが、車両から降りるなり、警官や救急隊員たちも次から次へと狂った群衆に襲われ、血みどろになって地面に倒れていくのだ。
倒れた者もしばらくすると起き上がり、今度は襲撃する側の仲間入りをする。
マジでゾンビ映画が現実と化してしまったようなのである。
テレビでは、地元局の放送はすでに映らなくなっていた。
予想以上に事態は悪いほうへと進展しているのかもしれなかった。
「絶対に外に出るな。状況が落ち着くまで、ここで籠城だ」
僕は重々しい口調で言った。
が、言ってしまってから、まずい、と後悔した。
食料も飲み物も、備蓄があまりない。
非常事態に備えるなどという感覚は、ふだんの僕にはかけらもないからだ。
しかもふたり分ともなると、数日ですっからかんになることは目に見えている。
いずれは食料調達のために、外界に出ることを余儀なくされる日が来るに違いない。
「パソコン、貸してくれる? スマホ、外のバッグの中だから」
猫舌でちびちびコーヒーを飲み終えると、少し落ち着いたのか、あずみが言った。
「いいけど、どうするんだ?」
「調べてみる。もう何か、大事な情報が上がってるかもしれないもの」
「OK]
机の上のノートパソコンを、あずみの前に置いてやる。
かがみこんだ時、深い胸の谷間がもろに見えて、ついどきっとしてしまう。
僕はその間、机の前の椅子に座って窓から外の様子を観察することにした。
ーこちらは照和警察です。住民の皆さん、外出は控えてください。街中で、凶暴化した暴徒の一団が暴れています。くれぐれも無用な外出はー
そんなアナウンスを流しながら、ミニパトがのろのろと徐行していく。
車道では、すでにあちらこちらで渋滞が起き始めている。
ドライバーのゾンビ化した車が、何台も道路に乗り捨てられているからだった。
「ツイッターはデマばっかりだから、あんまり当てにならないね」
画面を熱心に見つめながら、あずみが言う。
「あ、でもこのブログは、ちょっとまともそう」
「ブログ?」
「うん。ちょっと読んでみるね。
【原因】
昨夜の那古野大学生物科学研究所の爆発。それにより、研究中の病原菌が拡散か。
【感染から発病まで】
この謎の病原菌に感染すると、人は一度行動不能になり、また復活する。その期間は人によって個人差があり、数分で復活を遂げる者もいれば、数時間かかる者もいる。ただ共通しているのは、復活後、感染者は凶暴になり、人肉を好む体質に変わるということ。外見にも大きな差異が現れ、それは皮膚の角質化、瞳孔の消失など、概して醜い変化が多い。身体能力に関しては、発病後のほうが若干高くなる傾向があるが、これはおそらく痛覚を失ったことからくる副作用だと思われる。
【ドームとの関連】
那古野市を覆った透明なドームとのこの事象との関連には現在のところ、裏付けになるものはない。しかし、同時に生じた事象であるがゆえに、偶然とは思われない。
だって。けっこう詳しいでしょ。書いてるの、お医者さんかな」
「あるいは、政府関係者とか」
「ネームは、ケロヨンだよ。ケロヨンって、なんか可愛い」
くすっと笑うあずみ。
おまえのほうがずっと可愛いよ。
ったく、どうしてくれるんだ、このドキドキ感。
心の中で思わずそう毒づいてしまう。
気を取り直して、一番気になっていたことを、訊いてみた。
「ところであずみ、おまえ、ここへ来るまでの間に、その、噛まれてないだろうな? ゾンビに」
「大丈夫だよ。なんなら服脱いで裸になろうか? お兄ちゃんになら、特別にあずみのヌード、見せてあげてもいいけど。どう、見たい?」
しなをつくって、上目遣いに僕の顔を覗き込むあずみ。
その小悪魔っぽいまなざしと仕草に、僕は耳のつけ根まで赤くなった。
「い、いや、今は遠慮しておく」
「今は? 今は、って、どういうこと?」
「大人をからかうもんじゃない」
ムッとして言い返すと、てへっと笑ってあずみが言った。
「あ、廊下に置いた荷物取って来なきゃ。もうさっきのゾンビ、いないよね? ねえねえ、怖いから、お兄ちゃん、一緒についてきてくれる?」
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています