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第2章 仲間
action 3 駆除
「こっちよ」
光と名乗った女性が、コートの裾を翻して歩き出そうとした時、よたよたと立ち上がった一平が、その背中に声をかけた。
「あ、でも、光姉、駆除しとかなくていいのかい? 俺ら、そのために出て来たんじゃなかったの?」
光の足が止まった。
「そういえば、そうだったわね」
すたすたと戻ってきた。
「最近増えてきてるから、少し減らしておかないとね」
「また夜中にシャッターがたがたやられたんじゃ、うるさくてかなわねえだろ?」
「増えて来たって、何がです? このへん、ゴキブリやネズミでも出るんですか?」
ネズミならあずみの食料になるかも。
そう思ってたずねると、嫌な返事が返ってきた。
「ゾンビよ。この先のホテル街にね、けっこう大きなコロニーがあるの」
「ちょうどいいや。おまえらの腕前もみたいしさ。一緒に来いよ」
「って、4人でゾンビ退治するのかよ」
僕は呆れた。
「おいらと姉ちゃんをバカにすんなよ。ゾンビの餌になるしか能のない、ただの難民とは違うんだからな。まあ、見てなって」
一平が胸を張る。
「そうね。それに、あずみちゃんっていったっけ。あなたの戦いぶりにも興味があるわ」
光があずみのほうを見つめて言った。
「使えるようなら、おいらたちの作戦に混ぜてやってもいいしな」
「作戦?」
あずみが眉を吊り上げた。
「ああ。もっとも、おまえがおいらたちの敵じゃないって、証明できたらの話だけど」
一平が挑発するように言う。
「まだ疑ってるのね」
あずみがため息をついた。
「確かに私はゾンビのおばあちゃんに噛まれて、何かが変わった。でも、自分では人間のつもり。そりゃ、今はお腹が空いて、お肉が食べたくてしょうがないけれども」
「ちょっと見せて」
光が影のようにあずみに近寄った。
「へーえ。珍しいわね。ゾンビ化が途中で止まってる。というか、ゾンビでない、他のものに変わりかけてるって感じがするわね」
あずみの頬を指でなぞると、感心したようにつぶやいた。
「他のモノ…って?」
不安そうにあずみが光を見た。
「わからない。とにかく、あなた、ちゃんと会話もできるし、特に問題ないんじゃないかしら?」
「でも、戻りたいんです。普通の女の子に」
「普通の女の子ねえ。今のこの世界で、普通の女の子なんて、とても生きていけないと思うよ」
「それでも、いいんです。私には、好きな人が、いるから…」
僕はあわててふたりから目を逸らした。
空から光が薄れ始めている。
急がないと、真の闇がやってくる。
街中の明かりという明かりが消えた本物の夜は、ゆうべ体験したばかりだった。
正直、ぞっとしなかった。
目の前に掲げた自分の指さえ見えぬ闇なんて、もう二度と体験したくはない。
「急ごうぜ、光姉。夜になるとこっちが不利だ」
僕と同じことを考えたらしく、せかせかと一平が言った。
「遠いの?」
あずみが訊くと、
「ううん。歩いて5分もかからない。でも気をつけて。陽が翳ってくると、あいつら急に元気になるから」
光が言い、先頭に立って大股に歩き出す。
「おまえの姉さん、ずいぶんクールだけど、元の職業、何なんだ? 殺し屋か?」
前を歩く一平に、好奇心を抑えきれず、つい話しかけてみた。
「薬剤師だよ。ヤクザの医師じゃないぞ」
一平が、さっそくつまらないシャレを返してくる。
「どうしてヨーヨーなんか、持ってるのかな」
と、これはあずみ。
「それは見てのお楽しみ」
イヒヒヒヒと一平が笑った。
その時、光が声を張り上げた。
「いたいた。きょうはまた特別にいっぱいいるわね。ゾンビ祭りでもやってるのかしら」
なんだか、事態を楽しんでいるかのような声だった。
光と名乗った女性が、コートの裾を翻して歩き出そうとした時、よたよたと立ち上がった一平が、その背中に声をかけた。
「あ、でも、光姉、駆除しとかなくていいのかい? 俺ら、そのために出て来たんじゃなかったの?」
光の足が止まった。
「そういえば、そうだったわね」
すたすたと戻ってきた。
「最近増えてきてるから、少し減らしておかないとね」
「また夜中にシャッターがたがたやられたんじゃ、うるさくてかなわねえだろ?」
「増えて来たって、何がです? このへん、ゴキブリやネズミでも出るんですか?」
ネズミならあずみの食料になるかも。
そう思ってたずねると、嫌な返事が返ってきた。
「ゾンビよ。この先のホテル街にね、けっこう大きなコロニーがあるの」
「ちょうどいいや。おまえらの腕前もみたいしさ。一緒に来いよ」
「って、4人でゾンビ退治するのかよ」
僕は呆れた。
「おいらと姉ちゃんをバカにすんなよ。ゾンビの餌になるしか能のない、ただの難民とは違うんだからな。まあ、見てなって」
一平が胸を張る。
「そうね。それに、あずみちゃんっていったっけ。あなたの戦いぶりにも興味があるわ」
光があずみのほうを見つめて言った。
「使えるようなら、おいらたちの作戦に混ぜてやってもいいしな」
「作戦?」
あずみが眉を吊り上げた。
「ああ。もっとも、おまえがおいらたちの敵じゃないって、証明できたらの話だけど」
一平が挑発するように言う。
「まだ疑ってるのね」
あずみがため息をついた。
「確かに私はゾンビのおばあちゃんに噛まれて、何かが変わった。でも、自分では人間のつもり。そりゃ、今はお腹が空いて、お肉が食べたくてしょうがないけれども」
「ちょっと見せて」
光が影のようにあずみに近寄った。
「へーえ。珍しいわね。ゾンビ化が途中で止まってる。というか、ゾンビでない、他のものに変わりかけてるって感じがするわね」
あずみの頬を指でなぞると、感心したようにつぶやいた。
「他のモノ…って?」
不安そうにあずみが光を見た。
「わからない。とにかく、あなた、ちゃんと会話もできるし、特に問題ないんじゃないかしら?」
「でも、戻りたいんです。普通の女の子に」
「普通の女の子ねえ。今のこの世界で、普通の女の子なんて、とても生きていけないと思うよ」
「それでも、いいんです。私には、好きな人が、いるから…」
僕はあわててふたりから目を逸らした。
空から光が薄れ始めている。
急がないと、真の闇がやってくる。
街中の明かりという明かりが消えた本物の夜は、ゆうべ体験したばかりだった。
正直、ぞっとしなかった。
目の前に掲げた自分の指さえ見えぬ闇なんて、もう二度と体験したくはない。
「急ごうぜ、光姉。夜になるとこっちが不利だ」
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「遠いの?」
あずみが訊くと、
「ううん。歩いて5分もかからない。でも気をつけて。陽が翳ってくると、あいつら急に元気になるから」
光が言い、先頭に立って大股に歩き出す。
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一平が、さっそくつまらないシャレを返してくる。
「どうしてヨーヨーなんか、持ってるのかな」
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「それは見てのお楽しみ」
イヒヒヒヒと一平が笑った。
その時、光が声を張り上げた。
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