ゾンビになった妹を救うため、終末世界で明日に向かってゴールをめざす

戸影絵麻

文字の大きさ
27 / 79
第2章 仲間

action 8 作戦

「へーえ、そんなことがあったんだ」

 マグカップを口に運びながら、光がつぶやいた。

 部屋の中には、馥郁ふくいくたるコーヒーの香りがただよっている。

 夕食の後、僕らは2階の従業員用食堂から、1階の居間に移っていた。

「そうなんです。正体はわかんないんですけど、今はそのケロヨンって人の言葉にすがるしかなくって」

 光の対面、僕の右横に座ったあずみが長い睫毛を伏せて答えた。

 あずみの前にあるのはトマトジュースのペットボトル。

 ハーフゾンビも、これならおいしく飲めるらしい。

「だめだ。ケロヨンのブログ、工事中になってる」

 充電を終えたスマホの画面から顔を上げて、僕は言った。

 ケロヨンのHP、『裏那古野オーバードライブ』は、ずっと「ただいま工事中です。しばらくお待ちください」のテロップが繰り返し流れていて、中を閲覧できないようになっているのだ。

「ひょっとしたら、ケロヨンは、どこかから俺たちの行動を監視しているのかもしれないな。俺たちが、イオンに入るのを見届けたら、連絡を再開するってことなのかも」

 コーヒーに口をつけた。

 久々に飲むホットコーヒーは、涙が出るほどうまかった。

「そうだね。『対価を受取るのにふさわしい力を見せてほしい』にたいなこと、書いてきてたもんね」

 あずみがストローでトマトジュースを飲みながら、相槌を打つ。

「ケロヨンは、ドーム前イオンが、黄道会の手に落ちてるのを知ってたってことか。それで俺たちの力を試そうと…」

 僕は考え込んだ。
 
 だとしたら、恐ろしいやつである。

 おまえは神か。

 とでも言いたくなるほどだ。

「それで、勝算はあるんですか? 相手は拳銃やらナイフやらを持ったヤクザの集団でしょう? いくらあなたたちが強くても、こっちはわずか4人だ。しかも俺はまるで役に立たないときてるし」

 自嘲気味に僕が言うと、

「しょうがねえ兄ちゃんだなあ。おいらが後でなんか武器を見つくろってやるよ。この会議が終わったら、一緒に地下工場へ来いや」
 
 一平がカルピスの入ったグラス片手に、生意気な口調で言った。

「ああ、頼む。助かるよ」

 僕は素直に頭を下げた。

 こと戦闘に関しては、小学生の一平のほうが一枚も二枚も上なのだから、何を言われても仕方なかった。

 ここは彼の提案に乗るに越したことはない。

 この先、あずみにばかり頼っていられない時がやってくる。

 僕が彼女を守らねばならない時だって、来るかもしれないのだ。

「確かに向こうは人数も多いし、武器も持っている。でも、あながち勝算がないわけじゃないの」

 ゆっくりとした口調で、光が言った。

「どうするんですか?」

 とこれはあずみ。

 あずみがテーブルの上に身を乗り出すと、セーラー服の胸元が割れて、たわわで真っ白な胸の谷間がぽろんと覗く。

 思わず口笛を吹く一平。

「ゾンビを使うのよ」

 光の答えは簡単だった。

「イオンに行ったなら、1階駐車場にゾンビたちが閉じ込められてたの、見たでしょ? あれを解き放って、イオンの中に乱入させる。当然、ヤクザ対ゾンビ軍団の壮絶な戦いが始まるでしょうね。あたしたちは、それを高みの見物。どっちが勝つにしろ、最後に乗り込んでいって、残党だけ片づければそれでおしまい」

「それ、いいかも」

 僕はうなずいた。

 ちらっと見ただけでも、平面駐車場のシャッターの向こうには、ゾンビが何十人といた気がする。

 あいつらなら、銃弾にもひるまないし、まさに歩兵としては最高だ。

「そうだね、行ける気がしてきました。ゾンビを味方につけるなんて、光さん、天才的!」」

 あずみもうなずいた。

「でもね。そうは簡単にいかないのよ」

 光が肩をすくめた。

「黄道会には幹部が3人いる。組長、副組長、用心棒の3人がね。俺たちは、ゾンビたちとは別行動を取って、まずこの3人を排除する必要がある。そうすれば、あとの下っ端は烏合の衆だから、あっという間に総崩れして、ゾンビの餌食というわけだ」

 一平が注釈を加えた。

「だけどさ、この3人ってのが、かなりの強敵らしいんだよ」

「強敵?」

「そう。だから、相手が人間だからと言って、なめてかかるわけにはいかないのさ」




 
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています