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第2章 仲間
action 10 武器
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「お、おい…それはないだろ?」
僕の思いを代弁するかのように、一平が言った。
「言っちゃ悪いけど、その兄ちゃん、さっきから何の役にも立ってないぜ。ゾンビ駆除の時だってさ、ただ何もしないでボケッと突っ立ってるだけだったし」
痛い指摘だった。
僕はうなだれ、テーブルに視線を落とした。
そうなのだ。
あの時僕は、バッグからゴルフクラブや果物ナイフを取り出すこともせず、ただあずみたちの闘いを、ぼうっと眺めていただけだったのである。
「うーん、悪いけど、あたしも一平に賛成だね。幹部との戦いは、アキラ君には荷が重すぎるんじゃないかしら。だって、どう見ても彼、あなたと違って普通の男の子だもの」
腕組みして光も首を傾げている。
「いいんです」
が、あずみは一歩も引かなかった。
すっくとソファから立ち上がる。
僕は横目であずみを見た。
きりっとした横顔。
それを包むふわっとした柔らかそうな髪。
ロケットみたいに突き出た胸。
きゅっとくびれた細い腰。
艶かしい太腿。
形よく上を向き、きゅんと張り出したヒップ。
わが妹ながら、ビーナスをほうふつとさせる水着美少女である。
「だって、あずみは、お兄ちゃんのこと…愛してるから」
そのあずみが、ポッと頬を紅潮させて、恥じらうように小声でつぶやいた。
「だーっ!」
大げさにのけぞったのは、一平だ。
「それがおかしーつうの! だっておまえら、何度も言うようだけど、兄妹なんだろ?」
「いいの。血はつながっていないんだから」
あずみがギロリと一平を睨みつけた。
「だから、あずみとお兄ちゃんは、ちゃんと愛し合える。結婚だってできる。あたしたち、近親相姦なんかじゃない」
「キンシンソウカン?」
一平の眼が点になった。
可愛らしいあずみの口から飛び出すと、その単語はとてつもなく卑猥な感じがして、インパクト抜群だったのだ。
「まあ、そこまで言うなら」
光が腕組みを解いた。
「初めはあたしがあなたと一緒に行こうと思ってたけど、ここはあずみちゃんとアキラ君に任せることにするわ」
「ありがとうございます」
瞳を潤ませて、礼儀正しく頭を下げるあずみ。
「うううーっ。あずみ、俺は認めないからな」
一平が侵入者を威嚇する番犬のような唸り声を上げた。
「いつかおまえを振り向かせてみせる! そのボンクラより、おいらのほうが男として優秀だってこと証明して、絶対におまえのハートをわしづかみにしてみせる! 俺は決めたんだ! 近い将来必ずおまえをこの手に抱いてやるって!」
「それが小学生の言うセリフか」
光が吐き捨てるように言い、いきがる弟の尻を足の裏で蹴った。
「妄想はそれくらいにして、さっさとアキラ君を地下工場に案内なさい。彼でも使える武器を探すのよ。確か改造モデルガンがたくさんあったでしょ? あの中から好きなの選んでもらいなさい。素人でも扱える、初心者向きのをね。いくらなんでも、丸腰のままで行かせるわけにはいかないから」
「ちぇ、わかったよ。相変わらず乱暴だなあ、光姉は」
半ズボンの尻をさすりながら、一平がぼやいた。
「けっ。貧乳のくせに。おいら、どうせならあずみみたいに、もっと爆乳の姉貴が欲しかったよ」
貧乳のひと言に、光の顔色が変わった。
「一平、それ、禁句だったよね」
声が不気味に尖っている。
「あ、いや、ちが、そうじゃなくって。ちょ、ちょっと口が滑ったっていうか、ほ、本音が出たっていうか…。おい、ボンクラ、行くぞ! 何ぼやぼやしてんだ! 早くおいらについてこい!」
脱兎のごとく居間から飛び出す一平。
「ま、待てよ」
あわてて廊下に出ると、階段を下りていく後ろ姿が見えた。
「こっちだ! 姉貴が来ねえうちに、早く!」
10秒後、僕らは機械類のひしめき合う油臭い空間に立っていた。
地下の秘密工場である。
周囲にあるのは黒光りするプレス機や研磨機、それから用途不明の機械の群れ。
そして壁際には銃器の並んだ棚がある。
「ま、あれこれ悩んでもしょうがねえし、これでいいんじゃね?」
光が追ってこないことを確認すると、おもむろに一平が言った。
指さしたのは、銃身が銀色に輝く、けっこうゴツそうな拳銃である。
「S&W M19の最新モデル。携帯用だけど、マグナム弾撃てるし、なによりも映画やアニメにもよく出てくるし。本来はモデルガンなんだけどな、親父が改造したから実弾もOKなんだ」
「俺にも使えるかな」
「裏に射撃場がある。そこで特訓してやるから」
「って、一平おまえ、ピストル撃てるの?」
「当たり前だろ? 今時の小学生を舐めんなよ」
そういう問題だろうか。
「こっちだ」
歩き出しかけて、何か思い出したように、ふいに一平が振り向いた。
「そういやあ、一番大事なこと、訊くの忘れてた」
マジな顔で僕を見る。
「何だ?」
僕は初めて手にする銃の手触りに夢中で、うわの空で訊き返した。
こほんと空咳をひとつすると、一平が言った。
「アキラ、おまえさ、もう、あずみと…やっちゃったのか?」
僕の思いを代弁するかのように、一平が言った。
「言っちゃ悪いけど、その兄ちゃん、さっきから何の役にも立ってないぜ。ゾンビ駆除の時だってさ、ただ何もしないでボケッと突っ立ってるだけだったし」
痛い指摘だった。
僕はうなだれ、テーブルに視線を落とした。
そうなのだ。
あの時僕は、バッグからゴルフクラブや果物ナイフを取り出すこともせず、ただあずみたちの闘いを、ぼうっと眺めていただけだったのである。
「うーん、悪いけど、あたしも一平に賛成だね。幹部との戦いは、アキラ君には荷が重すぎるんじゃないかしら。だって、どう見ても彼、あなたと違って普通の男の子だもの」
腕組みして光も首を傾げている。
「いいんです」
が、あずみは一歩も引かなかった。
すっくとソファから立ち上がる。
僕は横目であずみを見た。
きりっとした横顔。
それを包むふわっとした柔らかそうな髪。
ロケットみたいに突き出た胸。
きゅっとくびれた細い腰。
艶かしい太腿。
形よく上を向き、きゅんと張り出したヒップ。
わが妹ながら、ビーナスをほうふつとさせる水着美少女である。
「だって、あずみは、お兄ちゃんのこと…愛してるから」
そのあずみが、ポッと頬を紅潮させて、恥じらうように小声でつぶやいた。
「だーっ!」
大げさにのけぞったのは、一平だ。
「それがおかしーつうの! だっておまえら、何度も言うようだけど、兄妹なんだろ?」
「いいの。血はつながっていないんだから」
あずみがギロリと一平を睨みつけた。
「だから、あずみとお兄ちゃんは、ちゃんと愛し合える。結婚だってできる。あたしたち、近親相姦なんかじゃない」
「キンシンソウカン?」
一平の眼が点になった。
可愛らしいあずみの口から飛び出すと、その単語はとてつもなく卑猥な感じがして、インパクト抜群だったのだ。
「まあ、そこまで言うなら」
光が腕組みを解いた。
「初めはあたしがあなたと一緒に行こうと思ってたけど、ここはあずみちゃんとアキラ君に任せることにするわ」
「ありがとうございます」
瞳を潤ませて、礼儀正しく頭を下げるあずみ。
「うううーっ。あずみ、俺は認めないからな」
一平が侵入者を威嚇する番犬のような唸り声を上げた。
「いつかおまえを振り向かせてみせる! そのボンクラより、おいらのほうが男として優秀だってこと証明して、絶対におまえのハートをわしづかみにしてみせる! 俺は決めたんだ! 近い将来必ずおまえをこの手に抱いてやるって!」
「それが小学生の言うセリフか」
光が吐き捨てるように言い、いきがる弟の尻を足の裏で蹴った。
「妄想はそれくらいにして、さっさとアキラ君を地下工場に案内なさい。彼でも使える武器を探すのよ。確か改造モデルガンがたくさんあったでしょ? あの中から好きなの選んでもらいなさい。素人でも扱える、初心者向きのをね。いくらなんでも、丸腰のままで行かせるわけにはいかないから」
「ちぇ、わかったよ。相変わらず乱暴だなあ、光姉は」
半ズボンの尻をさすりながら、一平がぼやいた。
「けっ。貧乳のくせに。おいら、どうせならあずみみたいに、もっと爆乳の姉貴が欲しかったよ」
貧乳のひと言に、光の顔色が変わった。
「一平、それ、禁句だったよね」
声が不気味に尖っている。
「あ、いや、ちが、そうじゃなくって。ちょ、ちょっと口が滑ったっていうか、ほ、本音が出たっていうか…。おい、ボンクラ、行くぞ! 何ぼやぼやしてんだ! 早くおいらについてこい!」
脱兎のごとく居間から飛び出す一平。
「ま、待てよ」
あわてて廊下に出ると、階段を下りていく後ろ姿が見えた。
「こっちだ! 姉貴が来ねえうちに、早く!」
10秒後、僕らは機械類のひしめき合う油臭い空間に立っていた。
地下の秘密工場である。
周囲にあるのは黒光りするプレス機や研磨機、それから用途不明の機械の群れ。
そして壁際には銃器の並んだ棚がある。
「ま、あれこれ悩んでもしょうがねえし、これでいいんじゃね?」
光が追ってこないことを確認すると、おもむろに一平が言った。
指さしたのは、銃身が銀色に輝く、けっこうゴツそうな拳銃である。
「S&W M19の最新モデル。携帯用だけど、マグナム弾撃てるし、なによりも映画やアニメにもよく出てくるし。本来はモデルガンなんだけどな、親父が改造したから実弾もOKなんだ」
「俺にも使えるかな」
「裏に射撃場がある。そこで特訓してやるから」
「って、一平おまえ、ピストル撃てるの?」
「当たり前だろ? 今時の小学生を舐めんなよ」
そういう問題だろうか。
「こっちだ」
歩き出しかけて、何か思い出したように、ふいに一平が振り向いた。
「そういやあ、一番大事なこと、訊くの忘れてた」
マジな顔で僕を見る。
「何だ?」
僕は初めて手にする銃の手触りに夢中で、うわの空で訊き返した。
こほんと空咳をひとつすると、一平が言った。
「アキラ、おまえさ、もう、あずみと…やっちゃったのか?」
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