ゾンビになった妹を救うため、終末世界で明日に向かってゴールをめざす

戸影絵麻

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第3章 イオン奪還

action 7 危機

 カン。

 澄んだ音が響き、目の前で火花が散った。

 あずみが右手で刀身を受け止めている。
 
 拳に巻いた鋼鉄のナックルで、左京の一撃をしのいだのだ。

「やるな」

 狂人が嗤った。

「だが、そこまでだ」

 もう一度、刀を大きく振りかぶる。

 あずみが動き、僕の前に立った。

 盾になるつもりなのだ。

 左京の動作は速かった。

 間髪を入れず、あずみの脳天めがけて刀を振り下ろす。

「やめろ!」

 絶叫した時である。

 あずみが信じがたい動きを見せた。

 よけるどころか、上体を大きく逸らし、その大きな胸を左京のほうに突き出したのだ。

 ガツンッ。

 鈍い金属音。

「なにい?」

 左京の青白い顔に、初めて狼狽の色が浮かんだ。

 あずみのセーラー服を切り咲いた日本刀が、途中で止まっている。

 はらりと左右に分かれた純白の布切れの下から、黄金色が覗いていた。

 胸当てだった。

 あのプラチナ製の非売品ブラジャーが、刀の切っ先を弾き返したのだ。

「今度はこっちの番」

 低く唸るようにあずみが言った。

 両手を伸ばして、いきなり左京の骨ばった首を鷲掴みにする。

 そのまま頭上高く吊り上げると、人形でも扱うように、ぽいと手すりから吹き抜けの空間に向かって投げ落とした。

 跳ね起きて、手すりから身を乗り出し、僕は下方を覗き込んだ。

 ゾンビの大群めがけて、左京が落ちていく。

 吸い込まれるようにすぐに見えなくなった。

 天から降ってきた獲物に、ゾンビたちがわっとばかりに襲いかかったのだ。

 血がしぶき、ちぎれた手足が飛んだ。

 サイコパス殺人鬼の、あっけない最期だった。

「怪我はない?」

 あずみが振り返って、僕を見た。

 セーラー服が切り裂かれ、すだれのように体の両側に垂れ下がっている。

 その間から、金色のブラを押し上げる爆乳がこぼれ出ていた。

「おまえこそ…平気なのか?」

「うん」

 あずみが両手で乳房を掬い上げ、

「ほら」

 ぷるんと弾ませてみせた。

「よかった」

 僕はほっと息をついた。

 まったく、生きた心地もないとはこのことだ。

「第一関門突破」

 あずみが言った。

「あとふたりだね。どこにいると思う?」

「あそこだ」

 僕は階下を指さした。

 さっき、左京の断末魔を見届けた時、気づいたのだ。

 2階のフードコートエリア。

 その前の通路の手すりから身を乗り出して、銃を構えている男。

 ワインレッドのスーツ姿のその男こそ、副組長の関竜司に違いない。

「あ、ほんとだ」

 僕の隣から身を乗り出し、あずみがつぶやいた。

 竜司が銃を撃ち始めた。

 驚くほど正確な射撃だった。

 脳天を打ち抜かれて、階下のゾンビたちが次々に倒れていく。

「まずいな」

 僕は呻いた。

 あの調子だと、ひとりでゾンビ軍団を殲滅しかねない勢いだ。

「任せて」

 あずみが言った。

「お兄ちゃんはここで見ててね」

「お、おい、待てよ」

 僕の制止も聞かず、ポールを小脇に抱え、切れたセーラー服をはためかせて、すごい勢いで走り出す。

 いくらなんでも、「見ててね」はないだろ?

 僕は重い拳銃を持ちあげて、手すりの上に固定した。

 今度こそ僕の番だ。

 見てろよ、あずみ。

 あいつは僕が倒すから。












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