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第4章 魔獣地帯
action 9 自虐
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池に沿って並ぶ檻の中では、たくさんの動物たちが死に絶えていた。
ゾンビにならなくても、飼育係がいなくなったのだから、これは当然の成り行きなのだろう。
したがって、動物園全体は死のムードに包まれ、空気の中には死臭さえ漂っているようだった。
「元気ないね」
光と一平に遅れること10メートル。
肩をすぼめて歩いていると、あずみが近寄ってきた。
「さっきのこと、まだ気にしてるの?」
手を握られた。
擦り寄ってきたあずみは、あれほどの”運動”の後にもかかわらず、フローラルな香りがした。
汗ひとつかいていないのだ。
「お兄ちゃん。顔を上げて、あずみを見て」
「う、うん…」
顏をあげると、あずみの真剣そのものの表情がすぐそこにあった。
やわらかそうな髪に縁どられた、アーモンド形のフェイス。
前よりシャープになった頬から目元にかけて走る白いライン。
近くで見るあずみは、メチャ可愛かった。
それこそ抱きしめたくなるくらい。
でも、僕にはそんな資格なんてない。
ヘタレは一生ヘタレのまま、日陰で生きていくしかないのだ。
「いい? よく聞いてね。あずみは、今のお兄ちゃんが好きなの。だから、別にカッコつける必要はないの。そのカッコ悪い所もふくめて、ぜーんぶ、全部好きなんだから。愛してるんだから」
感動的な台詞だった。
見たところ、あずみはマジそのものって感じだったし、ある意味これは直球ど真ん中ストレートの愛の告白である。
しかし、僕の心にはそれを受け入れる余裕すら、ないのだった。
無力感は時に猛毒となって精神を苛むのだ。
僕は、中学1年の水泳の授業で、クラスでビリのタイムを記録した時以来の落ち込みを味わっていた。
こんな気分の時は、たとえ100万円やるから笑ってみろ、と言われても無理なのである。
「触ったら元気が出る?」
あずみが握った僕の手を胸元に引き寄せた。
夏服を押し上げるふくらみは、生地の外からでもはっきり形が分かるほど発達し切っている。
防具であるプラチナ製のブラは小さすぎて乳首のあたりしか隠していないため、セーラー服の下では、上乳と下乳がすっかり露出しているのだ。
「いや、悪いが、そういう問題じゃないんだ」
僕はかぶりを振って、手を引っ込めた。
「頼むから、しばらくひとりにしておいてくれないか」
「お兄ちゃん…」
あずみが悲しげにつぶやいた。
瞳がうるうると揺れている。
「あずみ、おまえは最高の妹だよ。だけど、どうも俺には荷が重すぎるんだ」
正直に言った。
これがダメダメ兄妹の組み合わせなら、いかにボンクラな僕でもここまで落ち込むことはなかったに違いない。
ふとそう思ったからだった。
「うん、もう」
とたんにあずみの目がつり上がった。
「まだそんなこと言ってる!」
悔しそうに地団太を踏んだ。
「は?」
「あずみは、”最高の妹”なんかじゃない! お兄ちゃんの、最高の、こ・い・び・と、なの!」
え?
そこ?
そこに怒ったってわけ?
呆然としていると、突如として地面が揺れ始めた。
地震か?
反射的に身構えた時、はるか前方から一平の叫び声が聞こえてきた。
「タハーッ! また出やがった! 俺たち、今度こそ年貢の納め時かも!」
ゾンビにならなくても、飼育係がいなくなったのだから、これは当然の成り行きなのだろう。
したがって、動物園全体は死のムードに包まれ、空気の中には死臭さえ漂っているようだった。
「元気ないね」
光と一平に遅れること10メートル。
肩をすぼめて歩いていると、あずみが近寄ってきた。
「さっきのこと、まだ気にしてるの?」
手を握られた。
擦り寄ってきたあずみは、あれほどの”運動”の後にもかかわらず、フローラルな香りがした。
汗ひとつかいていないのだ。
「お兄ちゃん。顔を上げて、あずみを見て」
「う、うん…」
顏をあげると、あずみの真剣そのものの表情がすぐそこにあった。
やわらかそうな髪に縁どられた、アーモンド形のフェイス。
前よりシャープになった頬から目元にかけて走る白いライン。
近くで見るあずみは、メチャ可愛かった。
それこそ抱きしめたくなるくらい。
でも、僕にはそんな資格なんてない。
ヘタレは一生ヘタレのまま、日陰で生きていくしかないのだ。
「いい? よく聞いてね。あずみは、今のお兄ちゃんが好きなの。だから、別にカッコつける必要はないの。そのカッコ悪い所もふくめて、ぜーんぶ、全部好きなんだから。愛してるんだから」
感動的な台詞だった。
見たところ、あずみはマジそのものって感じだったし、ある意味これは直球ど真ん中ストレートの愛の告白である。
しかし、僕の心にはそれを受け入れる余裕すら、ないのだった。
無力感は時に猛毒となって精神を苛むのだ。
僕は、中学1年の水泳の授業で、クラスでビリのタイムを記録した時以来の落ち込みを味わっていた。
こんな気分の時は、たとえ100万円やるから笑ってみろ、と言われても無理なのである。
「触ったら元気が出る?」
あずみが握った僕の手を胸元に引き寄せた。
夏服を押し上げるふくらみは、生地の外からでもはっきり形が分かるほど発達し切っている。
防具であるプラチナ製のブラは小さすぎて乳首のあたりしか隠していないため、セーラー服の下では、上乳と下乳がすっかり露出しているのだ。
「いや、悪いが、そういう問題じゃないんだ」
僕はかぶりを振って、手を引っ込めた。
「頼むから、しばらくひとりにしておいてくれないか」
「お兄ちゃん…」
あずみが悲しげにつぶやいた。
瞳がうるうると揺れている。
「あずみ、おまえは最高の妹だよ。だけど、どうも俺には荷が重すぎるんだ」
正直に言った。
これがダメダメ兄妹の組み合わせなら、いかにボンクラな僕でもここまで落ち込むことはなかったに違いない。
ふとそう思ったからだった。
「うん、もう」
とたんにあずみの目がつり上がった。
「まだそんなこと言ってる!」
悔しそうに地団太を踏んだ。
「は?」
「あずみは、”最高の妹”なんかじゃない! お兄ちゃんの、最高の、こ・い・び・と、なの!」
え?
そこ?
そこに怒ったってわけ?
呆然としていると、突如として地面が揺れ始めた。
地震か?
反射的に身構えた時、はるか前方から一平の叫び声が聞こえてきた。
「タハーッ! また出やがった! 俺たち、今度こそ年貢の納め時かも!」
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