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プロローグA
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家が揺れた。
パラパラと埃が落ちてくる。
「やだ、また地震?」
母が天井を見上げ、中腰になる。
「ここんとこ、ずっとだね」
妹の恵美が箸を置き、テレビの音声を大きくした。
週間天気予報をやっていたニュース画面に、
ー地震速報ー
のテロップが流れ始める。
「震度2だって。まあ、大したことなくてよかったね」
妹の食べ残しを早々と片付けながら母が言う。
「でもさ、なんでも震源が移動してるって話だよ。しかもどんどんこっちに近づいてきてるんだって」
恵美はもう立ち上がってリュックを背負っている。
中学生なのに制服のスカートを極限まで短くしているので今にも下着が見えそうだ。
「お兄ちゃん、何見てるの」
低い声でいきなりなじられ、僕はその艶めかしい太腿から慌てて視線を逸らす。
「猛も早くしないと、遅刻するわよ」
兄妹間の険悪な空気を察しながらも気づいていないふりをしているのか、母が布巾でテーブルを拭きながら言う。
「う、うん」
僕は茶碗に白米を半分以上残したまま腰を上げた。
股間にできたしこりが下着に触れて微妙な感覚を発生させる。
ダメ人間。
その言葉が脳裏で明減した。
運動もできない、勉強もできない、そのうえ極度のコミュ障。
なのに性欲は人一倍強くて、毎日毎晩…。
それが外に滲み出るからなのか、入学してすぐ始まった嫌がらせは最近ますますエスカレートしてきている。
正直、学校へ行くのが苦痛だった。
でも、そんなことは口が裂けても言えない。
長男の僕が、ようやく一戸建ての中古住宅を購入して、平和な家庭を築くことに成功したと思い込んでいる父と母を心配させるわけにはいかないのだ。
「行ってきます」
重い足取りで玄関を出た。
でも、今思えば、この時の僕はまだ幸せの中に居たのであるー。
パラパラと埃が落ちてくる。
「やだ、また地震?」
母が天井を見上げ、中腰になる。
「ここんとこ、ずっとだね」
妹の恵美が箸を置き、テレビの音声を大きくした。
週間天気予報をやっていたニュース画面に、
ー地震速報ー
のテロップが流れ始める。
「震度2だって。まあ、大したことなくてよかったね」
妹の食べ残しを早々と片付けながら母が言う。
「でもさ、なんでも震源が移動してるって話だよ。しかもどんどんこっちに近づいてきてるんだって」
恵美はもう立ち上がってリュックを背負っている。
中学生なのに制服のスカートを極限まで短くしているので今にも下着が見えそうだ。
「お兄ちゃん、何見てるの」
低い声でいきなりなじられ、僕はその艶めかしい太腿から慌てて視線を逸らす。
「猛も早くしないと、遅刻するわよ」
兄妹間の険悪な空気を察しながらも気づいていないふりをしているのか、母が布巾でテーブルを拭きながら言う。
「う、うん」
僕は茶碗に白米を半分以上残したまま腰を上げた。
股間にできたしこりが下着に触れて微妙な感覚を発生させる。
ダメ人間。
その言葉が脳裏で明減した。
運動もできない、勉強もできない、そのうえ極度のコミュ障。
なのに性欲は人一倍強くて、毎日毎晩…。
それが外に滲み出るからなのか、入学してすぐ始まった嫌がらせは最近ますますエスカレートしてきている。
正直、学校へ行くのが苦痛だった。
でも、そんなことは口が裂けても言えない。
長男の僕が、ようやく一戸建ての中古住宅を購入して、平和な家庭を築くことに成功したと思い込んでいる父と母を心配させるわけにはいかないのだ。
「行ってきます」
重い足取りで玄関を出た。
でも、今思えば、この時の僕はまだ幸せの中に居たのであるー。
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