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#1 メッセージ
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僕の通う市立曙高校はなだらかな坂の上にあって、その坂が長いから着いた頃には息が切れてしまう。
それは僕が帰宅部でろくに体を鍛えていないからだろう。
そう思わずにはいられないほど他の生徒たちは賑やかしい。
梅雨が近いにもかかわらずよく晴れた日で、半そでにもかかわらず腋の下が汗ばむほどだった。
厄介ごとに巻き込まれぬよう、雑踏に紛れて正門を通り抜け、校舎の玄関に駆け込んだ。
”異変”を察知したのは靴箱のフタを開けた時である。
上履きの片方にノートの切れ端のような紙が挟まっていたのだ。
周囲に気取られぬよう靴箱の間の狭い空間にしゃがみこみ、紙片を広げた僕は、次の瞬間思わずわが目を疑った。
そこには流れるようなペン書きで、こう書かれていたのである。
ーお話ししたいことがあります。午後5時 体育館で待っています。氷室基子ー
氷室、基子…?
とたんに、脳裏に授業中いつも見ている白いうなじがフラッシュバックした。
それがすらりとした立ち姿に変わり、凛々しいほど理知的な横顔の映像に変化する。
氷室基子はクラスメイトだ。
才色兼備の大人びた美少女で、学級委員である。
4月のクラス替えで彼女と同じクラスになり、あまつさえ斜め後ろの席をゲットした僕は、密かにこの才媛に憧れていた。
その氷室基子が、僕に手紙を…?
疑うべき要素は山盛りである。
昭和じゃあるまいし、手紙とはどういうことだろう?
むろん彼女とはLINE交換もしてないから、それも当然と言えばそうだけど…。
誰かの悪戯だろうか。
その可能性は高そうだ。
僕をイジることを日課としている高尾たちの仕業の可能性は十分ある。
でも、もし、万が一、これが本物だとしたら…。
知らぬ間に股間が熱くなっていた。
脳裏に浮かぶ基子の映像が変化する。
ブレザーの制服が白い体操着になり、それも今や廃止されて久しい際どいブルマ姿になって…。
スレンダーな肢体に不似合いなほど突き出た胸。
つんと上がった形のいいヒップライン。
カモシカのそれのように長い脚は今朝見た妹の太腿と重なり、僕の股間を更に窮屈にしていく…。
そんな状態で教室に入ったのが、間違いだった。
夢遊病者のような足取りで席に向かう途中、だしぬけに足を引っ掛けられ、僕は前のめりに転倒した。
「悪い悪い、俺、足が長いもんでさ」
見上げると、にやけた顔で高尾が笑っていた。
「こ、こっちこそ、ごめん」
もそもそ起き上がる僕を、すでに席についていた基子が振り向いて見た。
それは、何の感情も籠らない、床を這う虫を見るような目つきだった。
それは僕が帰宅部でろくに体を鍛えていないからだろう。
そう思わずにはいられないほど他の生徒たちは賑やかしい。
梅雨が近いにもかかわらずよく晴れた日で、半そでにもかかわらず腋の下が汗ばむほどだった。
厄介ごとに巻き込まれぬよう、雑踏に紛れて正門を通り抜け、校舎の玄関に駆け込んだ。
”異変”を察知したのは靴箱のフタを開けた時である。
上履きの片方にノートの切れ端のような紙が挟まっていたのだ。
周囲に気取られぬよう靴箱の間の狭い空間にしゃがみこみ、紙片を広げた僕は、次の瞬間思わずわが目を疑った。
そこには流れるようなペン書きで、こう書かれていたのである。
ーお話ししたいことがあります。午後5時 体育館で待っています。氷室基子ー
氷室、基子…?
とたんに、脳裏に授業中いつも見ている白いうなじがフラッシュバックした。
それがすらりとした立ち姿に変わり、凛々しいほど理知的な横顔の映像に変化する。
氷室基子はクラスメイトだ。
才色兼備の大人びた美少女で、学級委員である。
4月のクラス替えで彼女と同じクラスになり、あまつさえ斜め後ろの席をゲットした僕は、密かにこの才媛に憧れていた。
その氷室基子が、僕に手紙を…?
疑うべき要素は山盛りである。
昭和じゃあるまいし、手紙とはどういうことだろう?
むろん彼女とはLINE交換もしてないから、それも当然と言えばそうだけど…。
誰かの悪戯だろうか。
その可能性は高そうだ。
僕をイジることを日課としている高尾たちの仕業の可能性は十分ある。
でも、もし、万が一、これが本物だとしたら…。
知らぬ間に股間が熱くなっていた。
脳裏に浮かぶ基子の映像が変化する。
ブレザーの制服が白い体操着になり、それも今や廃止されて久しい際どいブルマ姿になって…。
スレンダーな肢体に不似合いなほど突き出た胸。
つんと上がった形のいいヒップライン。
カモシカのそれのように長い脚は今朝見た妹の太腿と重なり、僕の股間を更に窮屈にしていく…。
そんな状態で教室に入ったのが、間違いだった。
夢遊病者のような足取りで席に向かう途中、だしぬけに足を引っ掛けられ、僕は前のめりに転倒した。
「悪い悪い、俺、足が長いもんでさ」
見上げると、にやけた顔で高尾が笑っていた。
「こ、こっちこそ、ごめん」
もそもそ起き上がる僕を、すでに席についていた基子が振り向いて見た。
それは、何の感情も籠らない、床を這う虫を見るような目つきだった。
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