23 / 49
#21 断固たる拒絶
しおりを挟む
氷室基子のこめかみには、青い筋が浮き上がっている。
皮膚が薄いだけにその青筋はひどく目立って見え、彼女の怒りの激しさを物語っているようだった。
マルドックのDNAを受け継ぐ戦士?
私とこのきもい男が?
それまで金田猛のことなど、死にかけた蚊か蠅くらいにしか思っていなかった基子だが、今は違った。
何の因果か、いきなり基子自身と深い関係があると指摘されてしまったのである。
「そこまでクソミソに言わなくても…」
頬を張り飛ばされたわけでもないのに、右頬を手で押さえて恨めしげに基子を見る猛。
そのいじけた顔を見たとたん、体育館での惨状がありありと瞼の裏によみがえった。
青臭く生臭い匂いに包まれー。
全裸のまま、自ら放った体液にまみれて、恍惚とした表情で惚けていた猛。
性被害に遭ったことは間違いないのに、こいつときたら、なぜか幸せそうだった。
あってはならないことだ、と基子は思う。
普通、性被害に遭遇した者は、心に深い傷を負い、それがトラウマになって長い年月悩み苦しむものである。
なのに、こいつときたら、まるで次を期待するかのように、うっとりとした表情で…。
そんなことでは、今後同様の事件が校内で起きても、加害者たちを糾弾することができないではないか。
基子自身、決して高潔な人生を送っているわけではない。
それどころか、優等生の顔の裏でパパ活にいそしむ頂女子見習いですらあるほどだ。
だが、それは基子と客のふぁみろうのビジネスライクな関係であり、何も社会に迷惑をかけているわけではない。
しかも、ふぁみろうは今のところ、基子とデートをして軽くキスするあたりまでで満足してくれている。
基子が猛の裸体に付着した体液の正体にすぐに気付かなかったのはそのせいだ。
パパ活とは名ばかりで、基子の場合、まだふぁみろうと深みにはまっているわけではないのである。
「とりあえず、どれを使うか決めない?」
にらみ合うふたりの間の地面にちょこんと座り、基子と猛の顔を心配そうに交互に眺めてカエルくんが言った。
「今回現れたトウテツの属性からして、僕自身は朱雀がいいと思うんだけど…。朱雀は飛行タイプの機械獣だから、トウテツのドリル攻撃を簡単にかわすことができるでしょ?」
校長のキャラから、子供のキャラに変わったような口ぶりだ。
「は! あんた馬鹿なの?」
基子の声が1オクターブ跳ね上がった。
「そんなことどうでもいいけど、敵の攻撃をかわしてばかりじゃ、いつまでたっても勝てないじゃない」
皮膚が薄いだけにその青筋はひどく目立って見え、彼女の怒りの激しさを物語っているようだった。
マルドックのDNAを受け継ぐ戦士?
私とこのきもい男が?
それまで金田猛のことなど、死にかけた蚊か蠅くらいにしか思っていなかった基子だが、今は違った。
何の因果か、いきなり基子自身と深い関係があると指摘されてしまったのである。
「そこまでクソミソに言わなくても…」
頬を張り飛ばされたわけでもないのに、右頬を手で押さえて恨めしげに基子を見る猛。
そのいじけた顔を見たとたん、体育館での惨状がありありと瞼の裏によみがえった。
青臭く生臭い匂いに包まれー。
全裸のまま、自ら放った体液にまみれて、恍惚とした表情で惚けていた猛。
性被害に遭ったことは間違いないのに、こいつときたら、なぜか幸せそうだった。
あってはならないことだ、と基子は思う。
普通、性被害に遭遇した者は、心に深い傷を負い、それがトラウマになって長い年月悩み苦しむものである。
なのに、こいつときたら、まるで次を期待するかのように、うっとりとした表情で…。
そんなことでは、今後同様の事件が校内で起きても、加害者たちを糾弾することができないではないか。
基子自身、決して高潔な人生を送っているわけではない。
それどころか、優等生の顔の裏でパパ活にいそしむ頂女子見習いですらあるほどだ。
だが、それは基子と客のふぁみろうのビジネスライクな関係であり、何も社会に迷惑をかけているわけではない。
しかも、ふぁみろうは今のところ、基子とデートをして軽くキスするあたりまでで満足してくれている。
基子が猛の裸体に付着した体液の正体にすぐに気付かなかったのはそのせいだ。
パパ活とは名ばかりで、基子の場合、まだふぁみろうと深みにはまっているわけではないのである。
「とりあえず、どれを使うか決めない?」
にらみ合うふたりの間の地面にちょこんと座り、基子と猛の顔を心配そうに交互に眺めてカエルくんが言った。
「今回現れたトウテツの属性からして、僕自身は朱雀がいいと思うんだけど…。朱雀は飛行タイプの機械獣だから、トウテツのドリル攻撃を簡単にかわすことができるでしょ?」
校長のキャラから、子供のキャラに変わったような口ぶりだ。
「は! あんた馬鹿なの?」
基子の声が1オクターブ跳ね上がった。
「そんなことどうでもいいけど、敵の攻撃をかわしてばかりじゃ、いつまでたっても勝てないじゃない」
10
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
負けヒロインに花束を!
遊馬友仁
キャラ文芸
クラス内で空気的存在を自負する立花宗重(たちばなむねしげ)は、行きつけの喫茶店で、クラス委員の上坂部葉月(かみさかべはづき)が、同じくクラス委員ので彼女の幼なじみでもある久々知大成(くくちたいせい)にフラれている場面を目撃する。
葉月の打ち明け話を聞いた宗重は、後日、彼女と大成、その交際相手である名和立夏(めいわりっか)とのカラオケに参加することになってしまう。
その場で、立夏の思惑を知ってしまった宗重は、葉月に彼女の想いを諦めるな、と助言して、大成との仲を取りもとうと行動しはじめるが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる